Aではない君と

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195584

感想・レビュー・書評

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  • 子どもがもし人を殺してしまったらー。
    絶対に許されない。許されないからこそ、こころを殺された彼が、さらにこの先一生償い背負って生きていかなければならない重さを思うと、どうしても苦しい。
    自分だったら、そんな状態でちゃんと仕事を続けられるだろうか。子どもを愛し続けることが出来るんだろうか。どのように寄り添っていくべきなのか。
    主人公の父親とずっと一緒に考えていた。
    この父親は強い。
    読み進めている間は、苦しさ厳しさ切実さと葛藤、愛にずっと心を揺さぶられていた。加害者側という、考えたこともなかった立場、そのことを通して見えてくる本質。答えは出てこないけれど、自分だったらどうなんだと突きつけられた気がする。

  • 少年犯罪と一括りにするにはあまりにも様々なケースがあるだろうけど、加害者家族がここまで真正面から問題に取り組む小説を初めて読んだ。それでも被害者遺族からしたら到底許せるものではないんだろう。事件のことを知って離れていく人も責められない。作者もそれがわかっているからこの結末なんだろうな。罪の意識を持たない息子にどう接するべきか、とことん考え続けるこの主人公は強い。でもだからこそ、寸前で食い止められなかったことが残念でならない(食い止めてたら小説にならないけど)。
    読んでよかったです。

  • 自分の子供が犯罪を犯してしまった時、親として何を求められるのか、何ができるのか、何をそれまでしておくべきだったのか。良質の社会派ミステリだと思います。

  • 自分の子供が人を殺してしまったらー

    父親が、信じられないその現実を受け入れ、息子と向き合っていく過程の中で殺人にまで至る過程の真実に迫っていく。

    終始加害者遺族の目線で進んでいくが、
    それはある意味で被害者の少年は何も語る術を持たないという圧倒的な現実でもある。

    ラストで少年が自分の犯した罪の重さにようやく気づく。それはつまり少年が被害者の少年を赦すことができたことと同じなのではないか。
    そこから初めて自分の罪の重さに気づく。
    一生かけて償っていかなければいけない重さに。
    そこから逃げることなく向き合っていく事でしか本当の意味で更正はできないのだろう。

    2015年 講談社

  • 心を殺すのと体を殺すの、どちらが悪いのか。の答えになるほどと思った。

  • 図書館で見つけた。実話かと思ったけどフィクションだった。それでも読むのは辛かった。一気に読んでしまった。
    小説なだけにあらゆる苦悩が簡潔にまとめられてるけど、実際はこんなもんじゃないんだろう。

    いきなり自分の子供が殺人犯になったら。

    子供を信じたい気持ち、真実を知りたくない気持ち。守りたい、かばいたい気持ち。薬丸岳さんの本他にも読んでみたいと思った。

  • この方の作品らしく、非常に重く苦しいテーマで、様々なことに心が揺さぶられた。

    この中に出てくる殺人、いじめ、はもちろんだが、やはり親子の問題が一番心に残る。
    翼と優斗、どちらも親がもう少し子供の心に気付いていたら、寄り添っていたら、起きなかった事件かもしれない。

    しかし私自身が今、子供のSOSを見逃していないか…改めて考えさせられる。

  • もしも、自分の子供が人を殺してしまったら。その子にどんな言葉をかけることができるだろうか。職場や近所にどんな態度を取れるだろうか。いろいろと考えさせられるが、これぞという結論は出ない。

    この作品の著者、薬丸岳は犯罪者の家族にスポットを当てた社会派ミステリー作品を多く発表してきた。本作もまた、著者の得意の分野だ。

    殺人を犯してしまった中学生の息子の対応に苦悩する父親を主人公にし、さらに殺人を反省しない「少年A」の心情がもう一つのテーマ。後半、事件の意外な真相が明らかになり、ミステリー作品としても読ませる。

    ちょっと意外に思ったのは、少年法といえども容疑者と家族だけで会合できる場を設けることが困難なこと。この小説では、父親が法律の盲点をついて、容疑者である息子と接する機会を持つのだが、犯罪者において未成年者を特別扱いし、教育を重視する少年法であれば、家族だけで話ができる場というのは必要だと考えないのかね。

  • 加害者側の目線に立って描かれる薬丸岳の小説は、正直読んでてすごくしんどい。楽しむ読書が好きな俺には正直「しんどい思いして読んでオモロいか?」と思ってしまうことしきりである。そのしんどさが【文章が難しい】とか【ボリュームたっぷり】とかなら「挑んでやろうじゃないか!」って意気も上がるし、【つまらない】のであれば、とっとと見切りをつけるのだが。

    【他人事とは思えない】っていうんだから始末に悪い。俺も親のはしくれである、幸い娘は至極まっとうに育ってくれているが、いつなんどき、どういう風になるか分からない。この小説みたいになる可能性だってあったわけである。いや、これからだって…。

    息子が友達を殺害した、そのとてつもないショックを抱え(乗り越えるなんてとんでもない)つつ、何を感じ、何を考え、どう行動するのか。その一挙手一投足に感情移入し過ぎてツラすぎる。

    世の中では各種の未成年による悪辣な犯罪事件が慢性的に発生している、いや、成人による犯罪にしろ、そいつには親がいるわけで。よく「親の顔が見てみたいわ」というが、殺人犯の親は、一体どういう顔をしたらいいんだろうか。人の命を奪った罪を償うって何をどうすれば、させればいいのか。

    そういう一つ一つがグイグイ突き刺さってほんと重い小説だった。グイグイと読ませる出来の良い小説である。しかし【楽しかった】という読後感は全くない。ただ、こういう小説も読んでおいて損はない。絶対に損はない。

  • 「もうひとりにはさせない」
    この物語の締めくくりの言葉。

    そういうことだと思う。

    ひたむきに向き合うこと。が大切なんだと改めて思った。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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