- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062205771
感想・レビュー・書評
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2018.11.17読了
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民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生・千夏が、”消えない記憶”を研究するために認知症グループホームを訪れた。入所者は他の施設を追い出された曲者ぞろいだが、ほとんど会話の成り立たない老女が発した「おろんくち」という言葉にひっかかりを覚えて調べてみると…
謎の解明も面白かったが、認知症の老人たちの活躍が爽快。介護の現場の問題点や、認知症とどう向き合うかということも考えさせられた。
千夏の特技”三時のキャッツ”は羨ましい。 -
民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生・千夏が訪れた認知症グループホームの老女が口にした「おろんくち」という謎の言葉
脱走を繰り返し会話が成り立たない老女の謎の言葉を解くうちに他の入所者達と絆もでき…
千夏の絵に出来る能力、いいなぁ -
むちゃくちゃ面白い/ 前半の介護の絶望感、後半のおぞましい昔話、最後の最後で繋がる現在進行形の陰惨な事件/ まともに会話も出来ない老婆の、人を助けようとする行動/ 罵り合っていた老人たちがひとつにまとまっていく過程/ すべてコントロールされていて、とても面白い/ この作者はどの作品も最後の最後に切れ味鋭いピンチを差し込んでくるんだな/
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読み始めから中盤までは、なかなか世界に入っていくことが辛い。しかし、中盤以降は冒険とミステリー。最期は「え、そういう結末なの」という驚きがやってくる。
民族学研究員で口頭伝承を専攻する千夏は、とあるきっかけから痴呆症の高齢者が集まるグループホームへ出向する。そこで入居者の一人が口にした「おろんくち」の謎を追う。やがて訳ありの高校生・大地の協力を得ながら、その謎に迫っていくのだが…。
いつしかグループホームの入居者たちも痴呆でありながら自分たちの意思で千夏の謎解きに手を貸し始め、同時にグループホームでの押しつけがましいルールにすら団結して意義を唱えだす。
中盤までを我慢すれば、後半は怒涛の流れ。「おろんくち」は意外な事実を暴きだす。そして、グループホームの入居者vsカウンセラーのバトルは痛快。そういった施設に入居している人、それを介助する人、高齢者福祉に対する問題提起も含んで描かれている。 -
大学院生の千夏は民俗学の口頭伝承を研究するために認知症グループホームで取材をする事に。
宝石ジャラジャラの意識高い系に色武者、電波攻撃妄想者にマナーの鬼の郵便屋。そしてくノ一。
個性豊かな認知症患者達の記憶の奥底に眠るむかしむかしのはなしを探るなか、不登校男子高校生 大地がからんでからの展開にはもう痺れた。予想だにしない結末に驚かされ感心させられスカッとさせてくれた。
面白かった。
成長した大地の話も読んで見たい。 -
小説現代2015年1〜9月号掲載の「おろんくち」を改題して、2017年5月講談社から刊行。民俗学研究生の千夏が、老人ホーム入居者たち、有名私立高校中退の大地と協力して、「おろんくち」の謎を解き明かす。千夏の思いつきも面白いが、認知症老人たちの経験に裏打ちされた推理も面白く、カタルシスありました。
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面白かった。
後半の話の展開の仕方が面白い。 -
主人公の千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生。その研究の一環で、認知症グループホーム「風の里」を訪れ、ひと癖ふた癖もある老人たちと出会う。
ミステリと銘打ってはいるが、中盤までは認知症介護の描写がほとんどで、社会派小説なのかと。千夏が明るくて、老人たちも意外と生き生きと描かれているので、あまり重苦しく感じずに読めるが、展開はちょっとモタつき気味。しかしながら、高校生の大地が加わるところから一気に民俗学ミステリに切り替わる。そして、終盤。まさか、そこに行き着くとは予想外。とっくに記憶のかなたに忘れ去っていた伏線がここで回収。改めて読み直せば、かなりファンタジーな繋げ方であるけれども、驚愕度の方が勝ったのでこれはこれでよろし。ホラーばりのえげつない描写はさすがです。