ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062632850

感想・レビュー・書評

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  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18431

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA3537205X

  • 職業泥棒が双子の中学生に弱みを握られ、擬似父親になるというお話。双子の父親と母親はそれぞれ不倫相手と駆け落ちして、お互い片親が双子の面倒みているのだろうと思っているが、結果的に児童遺棄になってしまっているという設定です。

    いちおうライトなミステリー小説ですがそもそもの設定がぶっ飛んでいるので、各話の推理やトリックに無理があっても笑って許せる気持ちにはなりました。

    どちらかというと、イヤイヤ父親役になった「お父さん」の主人公が、双子と心を通わせていくのを楽しむ小説です。

    双子の哲と直は賢くて良い子なので、主人公も主人公に泥棒の仕事をくれる柳瀬の親父も双子が可愛いくなっている様子がとても微笑ましくてほっこりしました。

    双子がそれぞれ別の誘拐犯に誘拐されてしまう話。主人公との電話の向こう側で取り乱した双子が「僕は哲だよね?それとも直だっけ?」と自分のアイデンティティを無くしてしまうのがクスッとしてしました。

  • 『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき (講談社文庫)


    1993年の作品。
    蔵書を見てみると1996年の文庫の初版だった。

    7つの物語から成る連作短編集。


    主人公の「俺」はプロの泥棒である。
    ある日、仕事(泥棒)中に屋根から落ち、気を失っていたところを隣家の双子・哲と直(13歳、中一)に助けられ、成り行きで彼らの継父(ステップファザー)になることになってしまう。
    なんと双子の両親は、同時にそれぞれの愛人と駆け落ちをして家を出て行ってしまったのだった。

    親に置き去りにされた子供たちのために「俺」は生活費を稼ぎ、必要な時に“父親”の役をする。
    そんな疑似親子生活が始まった。


    しかし、このお子さんたちがなかなかのツワモノで……

    もうね、悲壮感ゼロ。
    彼らは実に楽しげに自由気ままに、二人暮らしを謳歌しているのだ。


    一話完結のストーリーは軽い謎解きとウイットに富んだ会話がメインで、現実にはあり得ない状況を、ホンマかー、マジかー、と笑いながら楽しめる。

    でもその中にちょっぴり入っている親子の絆のエッセンスに、時折ぐっときたりしてしまう。
    それは「俺」と双子たち疑似親子の、血のつながりがないからこその温かみとほろ苦さ。


    この「俺」が、泥棒のくせに結構いい奴なのだ。
    一人称でずっと話が進んでいくせいもあるんだけど、素直で単純で心の中が丸見えで。

    双子の本当の親が帰ってきたときの自分の身の振り方に思い悩んだり。
    子供たちと別れるのが寂しくてたまらない。自分が実の親の代用品であることに辛くなってしまう。
    そんな感情を隠そうともせず、子供たちとぶつかり、自分を持て余し、反省をし。

    「親はなくても子は育つが、子供がいないと親は育たねぇ」

    という、柳瀬の親父の言葉は至言ですね。


    湖から白骨死体が見つかったり、美術館の絵画がすり替えられたり、果ては双子が一人ずつ別々の犯人に誘拐されたりと、様々な事件を経て、「俺」と双子の絆は深まっていくのだが、本物の親子以上に親子になりました、めでたしめでたし。で終わらないところは、さすが宮部みゆきと言うべきか。

    誘拐事件が無事解決して三人が帰宅すると、留守電に双子の実の父親からのメッセージが入っていた。
    「そのうち一度帰りたい」と。
    三人はその場に立ち尽くす。

    このシーンってすごいな。
    おとぎ話のままで終わらないのね。

    「やがておずおずと、哲が言った。
    『お父さんは』
    同じようにおずおずと、直が続けた。
    『父さんの声を』
    『初めて』
    『聞いたんだね』
    俺はうなずいた。『うん、そうだ』」

    うーん。ここいいなぁ。


    「俺」は彼らの実の親の写真も見たことがなかった。
    双子が見せなかったのだ。
    この子たちはこの子たちで、表向きは飄々としていながらも、ステップファザーを引き受けてくれた「俺」の気持ちをきちんと受け止めていたんだろう。

    その最終章のタイトルは「ミルキー・ウエイ」。

    天の川が流れる夜空の下、三人で庭でバーベキューをする。

    「天の川の流れつくところがどこかなんて誰にもわからない。
    明日のことを思い煩うことなかれ。
    それで充分俺たちは幸せなのだから。」

    そんな言葉で物語は締めくくられる。


    運命の巡り合わせ。
    出会いの妙。

    コメディーとして読むもよし。
    でも、しんと心を澄ませてみると、意外や人の心の機微をじっくり味わえる。
    楽しかったな。

    素敵な物語でした。

  • 宮部みゆきの初期の作品。

    ライトでウィットに富んでいながら、様々な心理をえぐるようなストーリー。

    杉村三郎シリーズに通底するというのは個人的な印象か。

    巻末の「メイキング・オブ宮部みゆき」も読み応えあり。

  • 仕事中に屋根から落ち、大ケガした泥棒の俺を
    助けてくれたのは、その家に住む中学生の双子の
    兄弟。ところがふたりに弱みを握られた俺は、
    家出中の両親に代わって父親となるハメに。
    家庭生活を始めた俺らを7つの事件が襲い…。

  • 明るくサクッと読めました。

    双子とお父さんの今後も読みたい!

  • 何度読んだことか
    少年が主人公のものはどれもおもしろい。
    宮部みゆきくささが薄い

  • 双子の中学生と、父親代わりの男との話。初めは嫌々付き合っていた男が、二人に対して次第に心開いていく様子は心温まります。
    男は、双子の親より断然「父親」だなあと思いました。

  • 中休み的に読める楽しい物語でした。
    1話1話面白かったよ。

  • 面白かった〜双子と徐々に深まっていく関係性が尊み◎
    宮部みゆきほんと作風の引き出しがすごいなぁ

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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