文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638876

感想・レビュー・書評

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  • 【ミステリーレビュー400冊目】この世に不思議なことなど何もない… でも不思議な物語 #姑獲鳥の夏

    ■はじめに
    新本格以降の国内ミステリー作家は一通りかじってきたのですが、ずっと読まずに温めていた京極先生。なので実は本作も初読みなんですよね。最新作『鵼の碑』も発売されたことですし、よいきっかけなので手に取ってみました。

    まぁ読まずとも名作というのは知っていたんですが、実際に読んでみたら目ん玉が飛び出ました。いままで世界観がスゴイ作品ですね~と気軽に言ってましたが、本書こそ、その形容がふさわしい。とんでもない読書体験がそこにありました。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    京極堂と関口、二人の語らいシーンが、もうたまらんす…
    小説で重要とされる序盤シーンで、ただただ二人がしゃべってるだけなんですよ。なのに、京極堂の含蓄ありまくり名台詞の数々で、あっという間に物語の虜です。

    京極堂から放たれるウンチクは、妖怪奇譚や民俗学などの厚みのある知識にも圧倒されますが、さらに量子力学や仮想現実など、現代テクノロジーとの関係性や考察も含めて語られていく。しかも理解がしやすいのがスゴくて、途中よくわからなくなっても、結局最後にはそれなりに腹に落ちるんですよね。
    特に、何のために生きているのか、心と脳と意識の違いなどは、ミステリーというより完全に哲学の世界。もうこれ大学の講義ですよね。

    徐々に物語の深みに入ってくると、一気に怪奇的で夢うつつな世界に包まれてしまう。映画のように、ぱっとシーンが切り替わって映像が目に浮かぶんですよ。もちろん文章を読んでいるだけなんですけど。
    そしてある場面で死の描写がされるのですが、これがリアルで怖かった… 死ぬ瞬間って、こんな感じなんでしょうね。

    本作にはいくつか大きな謎がありますが、その中でも私が一番シビレタのは藤野牧朗の行動原理。後半、周囲の衝撃的な事実と、彼の行動原理になったきっかけが明かされていくのですが、これが深すぎるんです。
    手塚治虫の火の鳥を読んだ時以来のインパクト。そして、確かに彼の取った行動は正解かもと思ってしまう。こんなカタルシスに浸ったのは久しぶりです。

    もちろん他の謎解きも切れ味が鋭いし、意外性も満点だし、納得感も高いし、しっかりミステリーです。伏線なんて、超エグイですよ。すとっーん!と、映像で脳に入ってくるんですよね。めいっぱい楽しませていただきました。

    文学性も高く、人生勉強にもなり、エンタメとしてもミステリーとしても高品質。死ぬまでには、シリーズ全部読み切りたいです!

    ■さいごに
    京極堂と関口、冒頭の会話。京極堂は世の中に面白くない本などは存在しないと語る。関口はその考えに納得がいかない。しかし事件が終わった終盤では、関口は漬物や新興宗教の経典など、興味もなかった本を読んで楽しさを知るんです。

    何でもない場面のように見えますが、この事件を体験した関口の成長を示唆していると感じました。現実に向き合い、そして我々人間の永遠のテーマともいえる「生きる」ということに対して、前向きに歩き始めている。

    何度も何度も、繰り返して読みたくなるような、生命力あふれる作品でした。

    • 土瓶さん
      autumn522akiさん、こんばんは~^^

      初京極夏彦ですか。
      おめでとうございます。
      と、同時に羨ましい。
      これから右肩上...
      autumn522akiさん、こんばんは~^^

      初京極夏彦ですか。
      おめでとうございます。
      と、同時に羨ましい。
      これから右肩上がりにおもしろくなるこのシリーズを堪能できるなんて。
      できることなら記憶をなくして、ってヤツです。
      そしておもしろさに比例して本の厚みも増していきますよ~。
      手首は鍛えておいてください(笑)

      あ、京極夏彦さんはこの百鬼夜行シリーズだけでなく、巷説百物語シリーズや、「嗤う伊右衛門」などの江戸の怪談シリーズも超おもしろいです。
      お勧めです。
      2023/10/25
    • bmakiさん
      記念すべき400冊目に京極先生!!
      素晴らしい(*^▽^*)

      このレビュー、身体中に染み渡りました!

      深みにハマってしまいまし...
      記念すべき400冊目に京極先生!!
      素晴らしい(*^▽^*)

      このレビュー、身体中に染み渡りました!

      深みにハマってしまいましたね。
      もう抜け出せなくなりますよ。

      頭の悪い私でも、この物語は再読するほどの面白さ。


      私ももう一度京極堂読み直したいです(*^^*)
      2023/10/25
    • autumn522akiさん
      >fukayanegiさん
      こんばんはです!お祝いコメント、ありがとうございます^^
      あはは、何せ大げさに言うのが得意なもので、でも面白...
      >fukayanegiさん
      こんばんはです!お祝いコメント、ありがとうございます^^
      あはは、何せ大げさに言うのが得意なもので、でも面白いですよね。

      本作はたぶん何度読んでもその都度楽しいし、何歳で読むかによっても受け取るメッセージも変わってくると思います。ということで、fukayaさんも再トライ!

      >土瓶さん
      こんばんは~、ありがとうございます!
      そうなの、初めて読むんです。ま、本棚には積読が何冊もあるんですけどね(汗

      正直予想以上でしたね、レビューにも書いたのですが「火の鳥」を初めて読んだ時のような感覚。世界に没頭しちゃうんですよね。人生の教科書のつもりで読んでいこうと思います。

      他のシリーズも気になる~情報ありがとうございます^^

      >bmakiさん
      こんばんわ♪ お祝いありがとうございます~
      確かにヤバいですね、これは。沼っちゃうの、超わかります!

      他の作品もじっくり楽しみたいと思います。
      2023/10/25
  • これは間違いなく日本ミステリ界の歴史的名作のひとつ。

    度重なる改版の中でブラッシュアップされた面ももちろんあるだろうが、デビュー作にしてこの完成度は驚異でしかない。
    いきなり始まる関口と京極堂の認知を巡るそこそこの分量の議論なんて、新人作家が仕掛けるオープニングとして大胆にも程があるし、ここぞのところで響く風鈴の音がもたらす間と余韻による空気の引き締めなど技あり。
    その風鈴の音と「この世には不思議な事など何もないのだよ」のキラーワードが終始意識を捕まえて離さない絶妙なストーリーテリング。

    京極堂の語る小難しい理屈は分かったような分からなかったような気にもなるけど、たぶんそこにこそ魅力を感じるファンもいるだろうし、生半可な理解だったとしても十分に楽しめる内容。
    色んな挿話がちゃんと事件の背景を構成していて、後で回収されたり、雰囲気を高めたり、それがどうした?みたいなところが殆どない。
    唯一、関口と涼子の過去だけが朧げにしかわからなかったけど、それがまたこの本を読み終わった後の談議ポイントとなるのか、そこまでつまびらかにするのは無粋、という境界線ということなのか、いずれにしろ読み終えてなお記憶へのしこりを残す。

    と凄いなー、と言葉を並べ立てた後にwikipediaで京極さんのページを見ると、「暇な時間に会社でなんとなく書いた作品」との来歴情報が。
    !?
    これがなんとなく書いた。。。
    どんな才能なんだよ。

    次は『魍魎の匣』。
    絡新婦ぐらいまでは読んでた気がするが、全く記憶にない。。

  • 読む隕石。
    京極夏彦はグランドマスターである。
    と帯にある。その通りの作品でした。

    病院の娘が二十ヶ月間身籠ったままで、その夫は密室から消えて失踪
    古本屋であり陰陽師の"京極堂"という男が事件と病院に隠された呪いに迫る。

    なかなかの厚み(約620P)
    事件の話を持って来た関口さんとのやりとりからはじまり「会話が多いからわりとスラスラいけるかな?」本の厚みはこういうことか!なんて納得しようとしたのが愚かでした。

    現実に対する「記憶、意識」それがどれほど曖昧か不確かなのかを解く会話なので、後々関係してくると察知しコレがなかなか面白いが少し長く感じ不安になる(占星術殺人事件を読んだので、ここらへんの長さには少し免疫がついてる。)
    想像していたのは「京極堂が事件をパッと解決する」だったのだが、なかなか腰を上げるわけでもなく、その分他の探偵達(心霊探偵?見ただけでその人、場所の過去を見ることができる榎木津や、やや荒っぽい警察官の木場)が出てきて、なかなか飽きない。
    しかも、京極堂の本気モード入ってからのシーンは張り詰めた空気感が伝わってきて痺れました。

    解決に至るまでは怒涛で
    集中して、ページをひたすらめくってました…

    で、やはり最初の関口と京極堂の会話
    これが効いてくるし、会話した後の関口さんが「現実と仮想の認識によって、自分自身の存在を疑う(ぐらつく)」それと同様に読んでいる側も大きく揺さぶられ「全て何が真実なのかわからなくなる」そんな呪いをかけられた状態で進む。

    コレはシリーズ全て読んでみたい。

    発表当時に賛否が分かれた点については、後で少し調べてみよう。

  • 鈍器本なんで、少し敬遠してたんですけど、新作が発売された記念にチャレンジしてみました。

    なにこれめっちゃ面白いやん!!! 序盤の京極堂と関口君の蘊蓄会話も面白いし。それぞれのキャラクターも濃くて良かった。
    ミステリ部分はかなり、めちゃくちゃトンデモトリックだと思うんですが(そもそもトリックなんか...?)それを無理矢理納得させられるぐらいの説得力があった。
    作者の京極夏彦はこれを30歳前後で執筆したとのことで...いやぁ凄い

  • 書店で平積みされてた鵼の碑を見て、その分厚さと表紙に惹かれて興味を持ち、シリーズの一作目を読んでみようと思いました。

    姑獲鳥の夏を手に取った時、表紙と1ページ目に写る顔の美しさと怖さがなんとも魅力的で、その瞬間から物語に引き込まれていくような感じがしました。非日常的な世界観・翳りの見える登場人物・深くて重苦しいミステリーが組み合わさって、全体的に怪しげで奥行きの深い雰囲気が物語に漂ってます。その感じに癖になりそうで、作者に心掴まされそうです。次作の魍魎の筺とても楽しみです。

  • 私、大変な勘違いをしておりました(´・_・`)

    タイトルから推測するに、ホラーだとばかり…。
    ややホラーですが、完全なミステリーでした。

    とうとう手を出してしまった百鬼夜行シリーズ٩(๑>∀<๑)۶


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。

    東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ。

    (Amazon 作品紹介より)


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    え〜、ワタクシ、これから読もう!とする本は興味さえあれば内容をあまり調べず、下手をすればタイトルや装丁だけで読んでしまう悪いクセがありまして。

    その上このシリーズは、Twitterのみんな大好き鈍器本として超有名。

    まず『姑獲鳥』から、妖怪?怪異?を連想しました。

    次に『夏』から「今が読み時」「ホラー」を勝手に連想しました。

    故に『姑獲鳥の夏』は『ゲゲゲの◯太郎』のような、妖怪大戦争的な人外と陰陽師(ここは知ってた)との壮絶なバトルファンタジーものかと勝手に推測しておりましたっ…!

    大変申し訳ありませんでしたっ(。>﹏<。)

    半分まで読んでも、
    「いやぁ〜、まだ姑獲鳥出てこないなぁ…」

    3分の2まで読んでも、
    「おぉっ、これからバトルかっ?
    でもまだ姑獲鳥出てこないなぁ。
    なかなか焦らすねぇ〜」

    などと、心の中で訳の分からないツッコミをしていた自分が恥ずかしい……(-∀-`; )

    姑獲鳥を題材にしたミステリーでした^ ^

    私の今月のホラー、ホラーミステリー小説を読む!という趣旨から、こちらはホラー要素のあるミステリー枠にハマるかなと…(^_^;)

    でも、全然怖くないです。
    めちゃめちゃ面白かった!!

    まず、個性的なキャラ達。

    京極堂は眩暈坂を登った先にある古書店。
    そこの主が、中禅寺秋彦。
    普段、京極堂と、屋号で呼ばれる。

    彼は、
    「この世には不思議なことなど何もないのだよ」
    と言い、全ての現象を証明していきます。

    話し方が一癖あるのですが、言ってる事に無駄がない。
    最後には必ず最初の話と関連付いていて、とても分かりやすいです。

    彼の言う
    「この世に面白くない本などはない」
    と言う持論が好きです^ ^

    榎木津礼二郎は「薔薇十字探偵社」の探偵。
    旧華族の家柄の出。

    彼も京極堂と並ぶ個性的な人物で、人には視えないものが視える。らしいですよ。
    これについても京極堂はちゃんと納得できる説明してくれます♡

    他にも主人公の関口や京極堂の妹、刑事の木場など頼もしく有能な方々が出てきます。

    次に何が面白いって、会話の内容が濃い。
    本筋の内容も勿論面白いのですが、私はこちらにとても魅力を感じました。
    冒頭から、主人公関口と京極堂の会話に聞き(?)入ってしまう。
    人を馬鹿にした口調を除けば、京極堂と行きつけのバーで飲みたい♡と思わせるおじさまだ。

    いや、バーは行ってくれない。居酒屋かなぁ。いや、京極堂の奥の部屋で出涸らしのお茶か…(^▽^;)

    京極堂と関口の会話の一部、

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ーーー見ていないところでは、世界の様相は果たしてどうなっているのか解らないらしい。
    (中略)
    観測した時点で性質が決定するのだ。(中略)
    ーーー観測をするまで世界は確率的にしか認識できないのだ。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    二重スリット実験やシュレイディンガーの猫などの有名な量子力学のアレですが、事件の関与も、観測した時点で未来が変わるのなら、何も知らずに解決した場合は、結果も違う…と。
    事件での干渉の事を考えた事がなかったので新鮮でした。SFではよく出てきますが。
    こうなると想像が膨らみますねぇ。
    楽しくなっちゃいます^ ^

    京極夏彦さんの作品は全部そうなのかな?
    科学的に説明してくれるから非常に分かりやすく、疑問が残らず凄くいい。

    呪いとは、洗脳や暗示など心理的なものです。
    分かっていても、ひょっとしたら…と思ってしまう。
    今月ホラーばかり読んでいるからか「呪い」のあれこれについていつもより考えた気がします(^_^;)

    この作品は全体的に、じっくり読みたい小説という印象。
    切羽詰まったような急かせかした感じは全くなく、ゆっくりじっくり味わう感じ。

    一つずつ丁寧に解決していって、ラストは綺麗に収束。

    限界を感じた時の人間てすごいですね…( ¯꒳¯ )。。。

    情報量が多いので、1冊読んだだけなのに5冊くらい読んだような満足感!!!

    シリーズ次巻は、傑作と有名の『魍魎の匣』だぁ!!
    文庫本の厚みを見ると、手をつけるのに怯んでしまう…^^;

    でも絶対読むぞ!!

  • 「何だ、理由を聞けば何てことはない。不思議でも何でもないじゃないか。」
    600頁超の物語の先にたどり着いたのは、梅雨が明けた青空でした。
    長い間、本屋さんで分厚い表装に購入を躊躇っていましたが、読んでみたらこの物語には必要なボリュームだと納得です。
    これがデビュー作品なのですか。凄いとしか言えないですね。
    持ち歩きに不便だけど、魍魎の匣も近い内に読むのだろうな。

  • 驚異の良作である。
    冒頭は京極堂の価値観について延々とかたっているが、
    飽きさせず、それでいてなお物語の中に引き込んでゆく
    京極さんには天晴れです。
    「姑獲鳥の夏」というタイトルに似合わず全然妖怪が出てこぬではないか!
    と、思うかもしれないですが、最後、上手に妖怪を登場させています。
    本の太さに驚くかも知れませんが、時間があれば是非どうぞ

  •  「面白い本に出会ったら、その著者のデビュー作を読みなさい。そこには著者の全てが詰まってるから」
     子供の頃、本を贈ってくれた伯父が、手紙に書き添えてくれた言葉です。
     本書は、作家・京極夏彦のデビュー作ですが、京極夏彦そして京極堂の魅力がぎっしり詰まった作品だと思います。

     元々、親父が『鉄鼠の檻』を読んでいたのがきっかけで京極堂シリーズと出会いました。
     確かそのとき、
     「それ、面白いの?」と聞いたところ、
     「むちゃくちゃ面白い」と親父が答え、
     「じゃ、読み終わったら貸して」と頼むと、
     「これ、シリーズもんやから、順番に読まんとあかんぞ」と言われました。
     で、調べてみたら、『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』そして『鉄鼠の檻』と、目の前で親父が面白がって読んでいる作品に到達するまでには、アホみたいに分厚い三冊のノベルスを読破しなければならないと知り、愕然としたのを覚えています。
     が、読み始めたらどハマりしました。寝食こそ忘れませんでしたが、学校の勉強は全部忘れて読みふけったのを覚えています(ヲイ

     冒頭、京極堂と関君が、徳川家康とダイダラボッチを引き合いに、延々100頁にわたり実存について議論するところで、一気に京極ワールドに引き込まれました。
     冷静に考えれば、「これ、いつ話が始まるねん?」と思うところですが、そんなことを考えさせない筆致で、知的にスリリングな会話が続くので、貪るように読んだ記憶があります。

     いよいよ事件が始まっても、鬱々とした関君の視点から物語が語られるため、いつしか自分も関君の気持ちに感化されたのか、暗いモノトーンの世界で物語世界を見ていることに気づきました。
     二十か月以上も妊娠中の女性。記憶が見える超能力探偵・榎木津。そして、久遠寺涼子と関君の過去…話はどんどんややこしくなります。
     眩暈坂を登るところから話は始まりましたが、僕も読み進めるにつれ、そんな感じがしてきました(笑)。「これ、ちゃんと風呂敷たためるの?」と少し心配になりながら、読み進めたのを覚えています。

     が、最後、全ての憑き物を落とすため、黒装束に身を包んだ京極堂が出てきたとき、ここまで読んできた僕の、心の中に澱のように溜まった憑き物も一緒に落としてくれたように感じました。
     こんな訳のわからん事件の真相が、京極堂の説明を聞くにつれ、オセロが一気にひっくり返されるように、きれいに説明されていきます。「この世には不思議なことなど何も無いのだよ、関君」というセリフは、著者から自分に向けられた言葉のように刺さりました。人生で体験したことのないレベルの「アハ!体験」だったと思います…って、何かオセロだのアハ!体験だの、比喩がセコいですね…orz

     今更私なんぞがあれこれ書いても屋上屋を架すようなものですし、なるべく予備知識なく読んで欲しいのでモヤーッとした感想しか書けませんが、とにかく未読なら読んで下さい。というか、これ読んでないって時点で人生損してます!

  • 大学の時分によんでヌエのために再読した。

    内容は半分くらいしか覚えてなかったなぁ、京極堂の蘊蓄は当時非常に眠たくなったと記憶しているが、読み返してみると意外に興味深く読めた。

    シリーズをこれから少しづつ読み返していく。

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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