- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062648806
感想・レビュー・書評
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「三月は深き紅の淵を」という一つの本に関連する話が4章に分かれて描かれている。
作者の視点からみた(おそらく恩田陸さんの考えだろう)先に物語ありき。語られるべき、語らずにはいられない物語自体がまずあって、作者の存在など感じさせないようなフィクション。という理想(129ページ)。というところなども読者視点からは、興味深かった。
また、同作者の「黒と茶の幻想」や「麦の海に沈む果実」についての描画もあり、ぜひそちらも読んでみたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2015年2月
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初めての恩田陸の作品。本好きにはとても嬉しい本の中に引き込まれる小説。
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なんせタイトルがいい。
「三月は深き紅の淵を」
一冊の本をめぐる4つの話は、奇妙に交錯しながらも独立したそれぞれの世界観を作り出している。
こうした試みの本は他に読んだことがないため、本当に新鮮で何度も読み返した。
この少し歪んだ形の連なりが、更に不思議で異質な雰囲気を作り上げているのだろうと思う。
バランス感覚が本当にすごい。
恩田さんはいろんなテイストの物語を書いているので、これも一つの試みなのかな。見事に成功していると思う。世界観にどっぷりはまりました。 -
理瀬シリーズ。不思議な世界観、立ったキャラクターとで続編があることに歓喜。
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つながっていないようでいて、つながているようにも思わせながら、やっぱりつながらない短編集。
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「恩田陸の作品は、オチを期待するタイプのミステリーではない」と解説に書かれていて、とても納得した。
元々あまりミステリーを読まないためか、つい最後に全ての糸が繋がるのがミステリーと思ってしまっていて、恩田陸に限らず全てが解き明かされないと消化不良になってしまうことがあるのだけれど、それはミステリーの楽しみ方を私が十分にわかっていないせいでもあるのだろう。
この作品は四部からなっており、第一部はまさに、最後にするっと解明されるタイプ。
第二部は解明されはするものの、煙に巻かれた感が残り、第三部は謎解きよりも心理小説の面白さ、第四部は謎が謎のまま放り出される。
どの作品も、表題と同じタイトルの一冊の本が関係しており、入れ子構造になっているのにわくわくさせられた。
その作中作とのリンク具合(内容、形式共に)が一番強いのも第一部で、ゆえに一番わかりやすくすっきり出来た。
しかし第二部以降、謎解きについてと同じように、リンク具合にもばらつきが出て、それも様々な色合いがあって面白くもあるのだけれど、形式美の好きな私としては、同じくらいの結びつきであって欲しかった。
しかし、私が最も入り込んで読んだ第三部は、もう謎だの入れ子だのを抜きにして、小説の美しさが際立っていた。
枠作りの面白さも魅力となるはずの作品なので、形式に差があって枠の全てを均等に楽しみづらいことには疑問が残るが、第三部に関してはこれだけで一つの作品として刊行されていれば、もう一つ星を増やしたかったくらいだった。 -
2014.10.8
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以前何度も読んでいたのを5年くらい空けての再読。やっぱりおもしろかった!だけど、前にはまってた時より面白さが深かった気がする。特に第四章。<黒と茶~><麦の海に~>も含めて、空けた5年の間に自分の中で整理と熟成でもされたんだろうか?中と外の四部作、タイトルは違ってもサブタイトルが同じことに今回やっと気づいて、そしたら読後の満足感がぐっと上がった。<三月は~>は幻の本だけど、でもここにある。第二章に出てくる「決して傑作ではないけど残る本」というのも含めて、やっぱりこれは三月は深き紅の淵を、なんだろうなぁ…
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2014.9
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2023.8.25 再読
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作者のわからない、幻の1冊をめぐっての4つの中篇。
その本は、『三月は深き紅の淵を』。
第1章【待っている人々】
10数年もその本を探し続けている読書愛好家に招かれ推理していく男性のお話。
ダイニングメッセージ、そしてキーワードは「ざくろ」
第2章【出雲夜想曲】
昔父が一晩だけと貸してくれた本の作者を突き止め、同じく読んだことのある人を誘って、作者に会いに行く。
待っていたものは、予想をはるかに超えた事実だった。。。
第3章【虹と鳥と雲と】
異母姉妹の存在を知り、お互い仲良くなった2人だったが、父の過去を知ってしまうことで歯車が狂いだす。
二人の葛藤が切ない。
第4章【回転木馬】
彼女という恩田本人の構想と、『黄昏の百合の骨』の主人公理瀬の過去。
理瀬が知りたかったのだが、ますますな謎が深まってしまった。。。
でも、それが恩田ワールド。
恩田さんのトランクには、いったいどれだけの構想が詰まっているのだろう。 -
「三月は深き紅の淵を」という謎めいた本を巡る短編集。
他の作品と少しずつ関連していますが、予備知識がない状態で読むと、内容を把握するのが難しいです。それでも、謎めいた雰囲気を味わうことはできます。
あと、タイトルがかっこいい。 -
四部構成。
物語のタイトルにちなんだ物語。
うーん、よくわからない。
つかみどころがあるようなないような。 -
雰囲気は好き。ミステリーチック。けど、それだけだった。
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刊行順を無視して麦の海に沈む果実を先に読んどいてよかった。
じゃなかったら最後の4章はこんがらがって楽しめなかったかも。
でもこっちから読んで、あぁこういう風にまとまったか、って読み方もいいな。
どっちにしろ面白かった。
個人的には第3章の虹と雲と鳥とがよかった。
この人のこういう薄ら寒い感じとかじっとりした感じの話がすごく好み。 -
オバケが出るわけでも、殺人がおこるわけでもない。しかし、すごく怖かった。なぜか怖かった。
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たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー、との解説をみてたまらず買った。初、恩田陸作品でした。郷愁と哀愁が漂い、美しさに満ちている感じ。
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3章が1番面白かったなー。美しい姉妹の物語り。
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タイトルでもある、幻の本「三月は深き紅の淵を」を巡る4つのストーリー。恩田陸の作品はどうにも馴染めない部分がある。1~3章はこの本についての作品内容や作者の噂、そして書かれた経緯が書かれていて期待した分、第4章で掻き回された感じ。恩田陸作品が好きな方はこの4章が"らしさ"が出ていると感じると思うけど、タイトルが「回転木馬」だっただけに主体がぐるぐる変わる展開に混乱した。個人的には3章までは抜群に良かったんだけどなー。ミステリー好き、そして本が好きな方向けの一冊でした。続編「麦の海に沈む果実」を読むかは…。
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2010/08/24
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満を持して三月に読む(うそ)。これはまた難しい作品だ。ある一冊の謎の本「三月は深き紅の淵を」をめぐる四つの断章。果たしてこの本は存在するのか、存在するとしたらどういう経緯で誰が書いたのか、それがまず大きな謎だ。その謎の本に書かれているという四つの章というのが、この作者のそれぞれの作品に対応している(らしい)というところがまら複雑なつくりになっている。というあたりでもう全貌を読み解くのはギブアップ。部分部分を読むには不都合はなく、それぞれ短篇小説だと思えばそれなりに各章楽しめる。最後におかれた「回転木馬」だけはちょっと趣が違って多重構成になっているけれど、作者の私小説風の独白が取り込まれていたりしてそれはそれで興味深い。しかし評価しにくい本であることは確か。
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一章「待っている人々」
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第一章は、お金持ちの老人と若者のほのぼのとしたお話。いい感じ!第二章はぐぐっと引き込まれる。現実化、非現実化わからなくなる。いいぞ!第三章はこれまでとはガラッと話が変わり、もうまったく別物語?と思うほど。でも内容がすごく切なく引き込まれる。そして最終章! うん? あれ、まったくわからなくなってしまった。これが恩田陸さんの不思議な本だろうな。いや私だけが不思議に入り込んだのか?
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この世界観は独特
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「いつも私たちは夜の海を走っている― 私たちは闇の底を独りぼっちで、望んでいない結末に向かって走る―」
印象的な一文が多い作品だと思った。4部に渡って、『三月は深き紅の淵を』という不思議な本を巡る物語となっている。
物語はこの一冊に留まらない。同作者の『麦の海に沈む果実』は第四章の本編に当たるものであり、『黄昏の百合の骨』は補足・理瀬の後日談となっている。『黒と茶の幻想』『まひるの月をおいかけて』はそれぞれモチーフとなるものが示されている。 -
『麦の海~』が大好きで、積読してたこちらにも手をつけた。勝手に『麦の海~』と同じ感じの長編のミステリー(ファンタジー?)と思ってたので短編と知って少し拍子抜け。
個人的には、『麦の海~』ほどはハマれなかったかな?
それでも、この不思議な感覚恩田ワールド!楽しめました。
次は、『黒と茶の幻想』が早く読みたくなった。
それにしても恩田さんの作品って、2人もしくは数人が集まって会話だけで物語が進んでいくパターンが多い。それもまた好きなんだけど♪