- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062739894
感想・レビュー・書評
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浅田次郎ならではの、自衛隊内のことを描いた作品。
知っているようで、知らないことだらけ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1970年代ですから、随分世情も違います。自衛隊もそうでしょう。ここで描かれた旧帝国陸軍的世界が今も残っているとは思えません。
旧帝国陸軍と書きましたが、決して悪い意味で書いたのではありません。確かに暴力的です。理由の無い制裁も多くあります。しかし、どこかカラリとして陰湿さはありません。世間の常識からみれば、そこは異常な世界でしょう。しかし、別の論理で動いているというだけで、一旦中に入り込んでしまえば、それはそれなりに居心地の良い世界なのでしょう。私は耐えられそうにもありませんが(笑)。
作者自身の経験を元に書かれた作品ですが、余りくどくない笑いと人情が随所に組み込まれた佳品と思います。
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2017年8月24日読了
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今、話題の憲法改正問題渦中の自衛隊もの。経験者の浅田次郎だけに内情がよく描かれている。安倍や稲田に読ませたい。変わらないものの中で必死になる人々。足搔いている姿が辛いが、確実に彼らの中には一本背が通っていくのが感じられた。
しかし、自衛隊の実像は皆がわかっているのに、それを利して憲法改正をごりおしして、正当化しようとするのは?日本はどこに向かっているのか? -
浅田次郎が陸上自衛隊時代を思い出しつつ描いたと言われる青春群像。自衛隊に対する国民意識は今や大きく変わり、国会は改憲前夜の様相を呈しているが、しかし、この物語は1970年代「軍隊にあって軍隊にあらず」という矛盾を抱え、リベラル陣営からは悪魔のように扱われ、上官の殴る蹴るは当たり前の時代に、人生に、恋に、人間関係に悩みぬく男たち(そう、WACはまだ名ばかりで登場すらしない)が主人公だ。
どの一編も浅田次郎らしい笑いあり涙ありの短編に仕上がっているが、連作集として読むとまた個々の登場人物の魅力が増す。
お気に入りは、儚い恋愛を描いて悲しい「シンデレラ・リバティー」と自衛隊を去る日を描いた表題作「歩兵の本領」。 -
2001年の単行本なので、16年後に読んだことになる。
既に90件のレビューも有るのでメモ程度に。
・1970年代の自衛隊を舞台としている。
・"戦後"を引きずっており、鉄拳制裁当たり前。苛めは
今でも有るらしいが...。
・作者の浅田次郎氏が、自身の経験談を踏まえて書いた作品(つまり同年代に自衛隊にいたわけだ)。
・殺伐としながらも時代の流れに取り残されたような切ない
小作品から始まり、段々と殺伐さ熱さを増し、次に整然
としつつも暖かさを感じさせる。
・かみさんが持っていた本で、自分なら選ばなかった本だと
思う。その分、新鮮だった。
この作家の本も、実は初めて読んだ。 -
1970年代初頭、‘軍隊’ではない中途半端な存在として、部隊や階級などあらゆる名称を変えつつ、しかしその精神においては旧陸軍の伝統を受け継いで存続していた自衛隊。理不尽な鉄拳制裁が日常茶飯事の隊内での、厳しくもどこか心温まるエピソードの数々がノスタルジックに語られていて、面白かった。
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昭和40年代後半頃の自衛隊内部の短編集。
理不尽がまかり通る『軍隊』的なしごきや上下関係、当時の世の中の様子がそこで生活をした著者ならではのユーモアや温かさを交えて書かれていました。
星の数と飯の数と言う二つの基準の中で折り合いを付ける難しさや律された厳しい生活の中で起こる隊員たちの様々な出来事が可笑しく哀しく読めました。 -
自衛隊。
閉鎖された組織だからこその絆が素敵です。
限定された環境だからこそ受け継がれていく伝統や思いやりに感動します。
男臭くて素敵な小説です。 -
P317
高度成長期の自己体験も含めた自衛隊の生活