ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750967

感想・レビュー・書評

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  • 【由来】
    ・雑誌「外交」で著者自身が紹介してた。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 『その時、歴史は作成された。』
    すわ陰謀論かと思われがちなタイトルであるが、真っ当な政治とビジネスのお話。1992年のボスニア戦争について『実際に何が起きたか』ではなく、『実際にどのように報道されたのか』を主題とした政治ドキュメンタリー。
    自分はmedtoolz氏の著作『コミュニケーションと医療』から「事象とは立体的なものであり、観測者それぞれの視点からの見解がある」ということを学んだが、本書における広告代理店の役割は、依頼国から見た見解を補強・増幅し、国際世論に訴えかける事。その手法は人脈・各種メディア・印象的なキーワードを活用した正当な広告代理店の仕事であり、後ろ暗いところは(そんなには)存在しない。悪く言えば金とコネとノウハウさえあれば法を犯さずとも国際世論、果ては国までもを動かせるということであるが、現代がそういうステージであるということは疑いようもない。善悪は時代の変遷とともに問われ続けるだろう。
    何かと国際世論から置いていかれがちに見える我国であり、昨今の状況を鑑みるにだいぶ後手に回ってしまっていることは間違いない。国際政治に直面する担当者が、本書を手にとっていてくれる事を願う。

  • 105

  • ユーゴスラビア、というと私は世代的にNATOによる空爆、という記憶しかないが、それ以前の紛争を舞台にして繰り広げられるボスニア政府とアメリカの一PR企業の戦略的世論誘導というところか。
    バルカン半島の複雑な民族関係と、アメリカの政治情勢をうまく利用してボスニア政府が世論を味方に付けていくプロセスは圧巻。これを読むと如何に自分が世界の多くのことに無知で、無知が故に情報を鵜呑みにしがちで、また多くの人が同じく鵜呑みにすることで事実や自分の信義からかけ離れた意見を持ちやすくなってしまうかがわかって怖い。特に今はツイッター等、ろくにソースも読まず真偽を確かめず拡散されていくニュースも多い世の中、もしかするとこの本にあるようなとある一個人(法人)の意図に無意識的にのっかっているのではと思ってしまう。
    自分の無知も怖いし、自分が所属している先(会社でも学校でも)はこういう対策も一切していないのだろうと思うとそれも怖い。勉強が大事になるのはこういう局面なのかと。場所は遠くヨーロッパで起きた出来事だし国家世界レベルの規模の話だが、他人事でないと感じる自分がいる。

  • 【版元】
    著者:高木徹(1965-)
    発売日 2005年06月15日
    価格 定価 : 本体660円(税別)
    ISBN 978-4-06-275096-7
    判型 A6
    ページ数 416ページ
    シリーズ 講談社文庫
    初出 2002年6月小社より刊行。
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062750967


    【目次】
    目次 [003-005]
    主な登場人物 [008-009]
    旧ユーゴスラビア地図 [011]

    序章 勝利の果実 013
    第一章 国務省が与えたヒント 019
    第二章 PRプロフェッショナル 037
    第三章 失敗 051
    第四章 情報の拡大再生産 067
    第五章 シライジッチ外相改造計画 089
    第六章 民族浄化 109
    第七章 国務省の策謀 133
    第八章 大統領と大統領候補 151
    第九章 逆襲 181
    第十章 強制収容所 205
    第十一章 凶弾 237
    第十二章 邪魔者の除去 255
    第十三章 「シアター」 279
    第十四章 追放 319
    終章 決裂 369

    あとがき(二〇〇二年六月 高木徹) [386-388]
    文庫版あとがき(二〇〇五年五月 高木徹) [389-393]
    解説(池内恵) [395-405]

  • ボスニア・ヘルツェゴビナという国家のPRを任されたルーダー・フィン社が、いかにしてセルビアを悪者に仕立て上げ、ボスニアを被害者に見せていったか。その情報操作の恐ろしさ。
    特に印象的だったのは「民族浄化(ethnic cleansing)」という言葉をクロアチア語の中から発見し、キャッチコピーとして広めていった一幕。彼らは「ホロコースト」という言葉は決して使わず、それ以上の成果をあげた。
    何が悪で何が善か、人がそれを判断することの難しさ。
    ルーダー・フィン社のプロパガンダがなかったら、そもそもユーゴ紛争が世界的に注目されることすらなかったとしたら、その26年後になんとなく僕がこの本を手に取ることもなかったのだなと思ったら、ゾッとした。

  • lifeでPRについて扱っていた。普段あまり意識しないでいたが、これは結構怖い。私たちの選択肢がそういう構造によって操作されている、としても言い過ぎではないだろう。構造主義からポスト構造主義へと、人間自身よりもそのフレームが実存になりつつあるような現代で、私たちは何によって立てばよいのだろうか。結局は、そういう人間であることを「分かって」いることが始まりなのだろう。

    私たちが見つめているものが真実であるかどうかはいつも不確かだ。それは悪意ではなくとも、恣意的な何者かを見せられている。本の内容自体はスピード感があり、ボスニア戦争という90年代の焦眉になった出来事を裏から教えてくれる。戦争の悲惨さ、私たちの倫理観からくる善悪の判断はもちろん重要だが、上に書いたようにその善悪すらも見せられているものかもしれないことを知っていることが重要である。


    17.10.6

  • ずいぶん前の本なのに、日本は全然変わらないね。

  • やはり少し古い本だからか、今2017年に読んでみると、戦争にPR企業が関与してることについてはそれほどおどろく部分はなかった。

  • Yotsuya

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著者プロフィール

1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして数々の大型番組を手がける。NHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」「バーミアン 大仏はなぜ破壊されたのか」「情報聖戦~アルカイダ 謎のメディア戦略~」「パール判事は何を問いかけたのか~東京裁判・知られざる攻防~」「インドの衝撃」「沸騰都市」など。番組をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店』(講談社文庫)で講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をダブル受賞。二作目の『大仏破壊』(文春文庫)では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

「2014年 『国際メディア情報戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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