- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062757379
作品紹介・あらすじ
源氏の道ならぬ恋慕に悩んでいた玉鬘は、意想外の求婚者・鬚黒の大将の手に落ちる。長男・夕霧は長い試練の果てに雲居の雁と結ばれ、娘の明石の姫君は東宮に入内し、生母と再会。四十の賀を控え、准太上天皇に上った源氏の半生はひときわ輝きを増す。
感想・レビュー・書評
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私事で恐縮ですが、仕事が忙しくなってきたこともあり(週6で働いてる皆さん、共に何とかやっていきましょう)、この巻から簡単な書き方に変更させていただきますので、ご了承下さいませ<(_ _)>
巻五は、源氏36~39歳までの物語で、前半は皆が平穏に暮らす中、ただ一人「玉鬘の姫君」だけがお気の毒な展開に。
「蛍(ほたる)」
「秋好む中宮」は、重々しくて近寄りがたくて面倒だからと、親しみやすい方に行った結果、
『とんでもない異様な厭らしさ』なんて、姫君に感じさせちゃ駄目だっての(笑)
そのくせ、物語については、「わたしのような誠実なくせに、女に相手にされない愚か者の話はありますか」と、上手いことオチも決まったようです。
「常夏(とこなつ)」
それでも次第に慣れてきた姫君に対して、内心抑えていた彼の本能は逆戻りとなり、『ほんとうに怪しからぬお心です』と女房に突っ込まれる中、その驚きを軽く塗り替えたのが、内大臣から「こうまで変な娘」と言わしめる程の、早口でものの言い様も知らない世間知らずな「近江の姫君」で、彼女の地名ばかりを並べた支離滅裂な変な歌
草若み常陸の浦のいかが崎
いかであひ見む田子の浦波
の衝撃も凄かったが、それに対して負けずに地名を並べ立てた、中納言の君の返歌(当然代筆)の、
常陸なる駿河の海の須磨の浦に
波立ち出でよ筥崎の松
も凄すぎて、というか笑いを堪えるのが精一杯で、まさか歌で笑いを取るとは思わなかった、紫式部の才能たるや、素晴らしくも面白かったです。
「篝火(かがりび)」
内大臣の話を彼から聞くにつれて、姫君の心変わりかと思われる程の展開が意外にも感じられる中、「柏木の頭の中将」は、まだ実の姉ということを知らないのが、なんとも・・・ね。
「野分(のわき)」
何事にも几帳面で、きちんとなさるご性格の、「夕霧の中将」が様々な姫君を御覧になるお話なんだけど、彼は彼であるストレスを抱えているのです。
「行幸(みゆき)」
久々に源氏と内大臣が再会したことと、裳着の式に対する近江の姫君の不満が印象的でしたが、貴族の人達も、割と細かいことをずっと根に持つんだなというのが、何だか面白かったです。
「藤袴(ふじばかま)」
抑えきれないものがあったのか、夕霧の中将が、何故か姫君に告白してしまい・・・その後、彼にしては珍しく父親に刃向かう姿も、また印象的。
「真木柱(まきばしら)」
ここでまさかの展開となりますが、私の中で納得いかないのは、その時代ならではのやり方もあるのだろうが、姫君の意志はいったいどこにあるんだということで、それを勝手に決める女房ってどれだけ偉いの? とも思うし、それで人生の大事なことを決められてしまうのは、いくら輝かしき姫君のそれとはいえ、ちょっと辛すぎるでしょうと思うのですがね。
また、それとは対照的に、「北の方」がいきなり香炉の灰を浴びせかけた場面も、また印象深くて、紫式部は物の怪とか書いてるけれど、私は精神性疾患の一種かもしれないとも思うし、仮にそうでなくても、日常生活に於いて、つい感情的になってしまった、ごく当たり前の光景としても分かる気がして、そりゃあ、こういう気持ちになるでしょうよと、私は思いますし、寧ろ良くやったと拍手したいくらいで。
「梅枝(うめがえ)」
誰の調合した薫物が素晴らしいか、その優劣の判定をした、源氏の弟「兵部卿の宮」の優しさに癒された帖だったが、そんな中でも、源氏の語る「筆跡について」の考察は印象に残り、彼には色々と問題点も多いが、こうした中で感じさせる、それに対する真摯な思いを持っているのも、彼のひとつの個性として素晴らしいという点には、尊敬できるものがあると思う。
「藤裏葉(ふじのうらば)」
一方は、何と執念深いことかと物思いに沈み、もう一方は、他の姫君との噂でもう忘れてるのだろうと悲しむ、そんなすれ違いの恋も、源氏が立派な直衣と極上の下着を与えて後押しする中、ついに!!
そして、母と娘の久方ぶりの再会も感動的に映る中、源氏は全てが自らの望むようになったとばかり、ついにあれを決断か!?
というわけで、第一部は終了し、やっと折り返し地点に来ました。この後は下り坂となるのかどうか、乞うご期待といったところです。 -
巻五は「蛍」「常夏」「篝火」「野分」「行幸」「藤袴」「真木柱」「梅枝」「藤裏葉」。
この巻の最後はハッピーエンドで終わった。やっと夕霧と雲居の雁ちゃんが結婚出来たのだ。雲居の雁ちゃんのお父さんの内大臣がそれはそれはプライドが高くて、昔二人がまだ少年少女だった頃、夕霧の位が低いからといって二人の中を引き裂いたくせに、夕霧が立派になってきて、宮家の婿にと声がかかりそうになると、「あの時雲居の雁と結婚させておけば良かった」と思う。夕霧も源氏の周りで心を奪われる姫君を何人も見かけても、一途に雲居の雁ちゃんを一番大事に思っている。だけど昔、内大臣に見くびられ、冷たくあしらわれた恨みは消えず、自分からオメオメと「お願いだから娘さんを僕にください。」などと絶対に言わない。「今に見ていろ。高い位に付いてやるから。」と思っている。夕霧のお父さんの源氏も同じ思い。そしてとうとう、この巻の最後の「藤裏葉」で、内大臣のほうから夕霧に「あなたはこんな年寄にいつまで冷たくされるのですか?」という手紙を送り、仲直りしたい気持ちを示して自邸に夕霧を招いてそのまま雲居の雁ちゃんと結婚させてあげる。良かった。良かった。夕霧は本当にめちゃくちゃいい子だし、二人ともピュアだし、試練を乗り越えて結ばれたことは、ほんとにハッピー。源氏物語を読み始めて一番微笑ましいシーンだ。
その後、源氏は太政大臣から准太上天皇へ昇格。内大臣は太政大臣に。夕霧は中納言に。その年、六条の院の紅葉が綺麗なとき、帝の行幸があり、朱雀院も来られ、盛大な紅葉賀のような催しがあった。太政大臣の息子が舞を舞われるのを見て、昔、源氏と頭の中将(現 太政大臣)が若いときに美しく青海波を舞った時のことを懐かしく思い出された。あの時からきらびやかだった二人で、ライバルだったが、源氏のほうがより優れていた。仲の良かったあの頃からの時の流れをしみじみ感じる感慨深いところで、第一部が終了する。全十巻中の五巻が終わったのでここで折り返し地点である。
“時の流れのしみじみ”といえば、若かりし頃“雨夜の品定め”で頭の中将(現 太政大臣)が「一度契を結んだがその後離れ、その女(夕顔)もその娘の居所も分からなくなってしまった」と嘆いていた“その娘”玉鬘を源氏が見つけて、六条の院に匿い、内大臣(かつての頭の中将、のちの太政大臣)に実はあなたの娘だよと打ち明けて、玉鬘の裳着の義の腰紐を結ぶお役目を引き受けてもらい引き合わせたときは感動的だった。
だけど、こちらの娘の気持ちには内大臣は無頓着だったらしい。しつこく玉鬘に言い寄る“髭黒の右大将”のことを本当に玉鬘は嫌っていたのに、彼は身分が高いからと父親として反対しなかった。だから、玉鬘は髭黒の右大将の強引さだけで、彼と結婚することになってしまった。本当に嫌われていることを考えれば分かるだろうに、自分の家庭を壊してまで玉鬘を我が物にしようとする髭黒には本当に腹がたつ。
紫式部さん、すごいですね。これは平安時代のトレンディドラマです。美しい人、醜い人、賢い人、馬鹿な人、運のいい人、運の悪い人…色んな個性と背景をもった人たちが繰り広げる山あり谷あり雅やかなドラマ。各巻の巻末の
系図がどんどん広がっていって付いて行くのが大変ですがワクワクします。
トレンディドラマといえば、この当時の服…女性の十二単の袖の重ね方とか、TPOに合わせた衣装の色のことだとか、手紙の紙の色とか、文字の美しさとか、お香の丁合とか流行りの“物語”のこととか、色んなファッションや文化について、語り手からの情報や源氏の考えが盛り沢山なのも読者を惹きつける要素だなと思う。今の時代の読者からみて、何が凄いかというと着物の色も紙の色も、化学染料ではなく、自然の物で手で染めていたであろうということだ。“色”をつけるということがどれだけ贅沢であったことか。そしてそれらの色は自然に溶け込むように美しかったのだろうと思う。
最後まで読み終わったら、源氏物語の美術や文化について調べてみたいと思う。
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まこみさん
すみません。言葉足らずでしたね(^_^;)
私がマイノリティを感じたのは、近江の姫君と末摘花だけで、それは『源氏のしおり』の寂...まこみさん
すみません。言葉足らずでしたね(^_^;)
私がマイノリティを感じたのは、近江の姫君と末摘花だけで、それは『源氏のしおり』の寂聴さんの解説を読んだことで、もしかしたらと感じたのですが、何より美と調和が重んじられた当時の社会に於いて、どんな意味にしろ、不協和音を立てる者は許されず非難の的とされたそうで、そんな調和を乱す二人を面白可笑しく書いているというのは分かります。
しかし、それでも紫式部は、彼女たちの一途さや、非常識なほど真面目で真剣だという点も書いてまして、それは観点を変えれば人間の美点でもあると、寂聴さんが指摘しているのを読んで、ハッとさせられるものがありました。
そして私は、たとえ非常識であっても、そのような美点も併せて書いている点に、紫式部の、人間って一筋縄ではいかない、いろんな要素を兼ね備えた存在であることも分かって書いているのかなと感じましたし、あまりに周りから笑われている姿も、最初は面白かったけど、時にやるせなく感じるというか・・・私だって、周りの人と少し考え方や行動理念が違うのかなと、気にすることもありますし、そうした視点で読むと、彼女たちだって、そんな世の中に於いても、しっかり生きているんだなと実感させられて、ですから、私が読者の場合、彼女たちには、笑って笑ってちょっと泣くみたいな心境になります。2023/09/08 -
たださん
なるほど。たださんの捉え方は温かいですね。
私は、源氏物語は学園物語のような要素もあると思っているので、近江の姫君、末摘花は「ちび...たださん
なるほど。たださんの捉え方は温かいですね。
私は、源氏物語は学園物語のような要素もあると思っているので、近江の姫君、末摘花は「ちびまる子」の中の“みぎわさん“や“野口さん“のように無くてはならない必須のキャラクターだと思っています。(物語を面白くするためにはね)
マイノリティという言い方をすると、そもそも源氏物語に登場する人達は平安時代でも氷山の一角であって、彼らのほうが世間ずれしているのに気づいていないことをシニカルに描いていたとも言えるのではないかな?上流社会の一員だった紫式部がそこまで客観的な視点を持っていなかったかもしれないですが。
平安時代に「源氏物語」を読むことが出来たほど恵まれた階級の人にとっては、「末摘花」や「近江の姫君」は「異分子」だったのかもしれないですが、現代の女性読者は「近江の姫君」「末摘花」にしか自分を重ねられない人が多いと思います。実際私もそうなので、「客観的に見たら私もこんなにおかしいんだろうな」と苦笑いです。
紫式部はそんなふうな意図ではなかったかもしれないですが、作品は社会の成長とともに捉えられ方も変わっていくものだと思います。
もう一つ気をつけなければならないのは、「源氏物語」を読んで「平安時代はこうだった」と思うのは早合点ではないかと思います。あの時代の一握りの読み書き能力のあった人のために書かれた世界は、現代でいえば社長や官僚クラスの一般庶民とは生活が全く異なる人達の世界であり、文献に残されていない一般庶民の感覚は案外現代人に近かったのでは?とも思います。2023/09/08 -
まこみさん
「ちびまる子ちゃん」、腑に落ちました(^^) 確かに!
それから、「源氏物語」だけで、平安時代の全てを判断すべきではないこと、そ...まこみさん
「ちびまる子ちゃん」、腑に落ちました(^^) 確かに!
それから、「源氏物語」だけで、平安時代の全てを判断すべきではないこと、その通りだと思いました。
また、それを読む時代によって捉え方が変わることは、そこから今の社会のあり方を知るきっかけにもなりそうだと思いましたし、仮に、重ねられる人が彼女たちだとしても、そこから何を感じて思うのかということは、きっとありますよね。そこから何かを考えていければと思いましたし、女性に限らず男性だって、源氏たちには全く自分を重ねられないから、私も一緒ですよ。苦笑いする対象がいないだけで。
まこみさんのおかげで、今後の源氏物語を読んでいく上でも、何か得るものがあったような手応えといったら、変な表現かもしれませんが、とても勉強になりました。
ありがとうございます(*'▽'*)2023/09/09
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光源氏の栄華のみで無く、ストーリーに広がりがあった。玉蔓を鬚黒の大将の手に落とした紫式部の意図はなんだったんだろう。女性読者の嫉妬の吐口?
夕霧はイケメンでナイスガイ。紫の上は、キュートでゴージャス。光源氏は人生最盛期。 -
源氏の悪戯から蛍兵部卿宮が玉鬘の横顔を見る場面は、何か書き手の凄味のようなものが感じられる。彼女に対する源氏の接し方、自らの欲を制しながらも押し入れるように愛着を馴染ませては内省を繰り返す独善的な男の愉しみや、夕霧の利己的な忍耐、髭黒の大将が北の方を追い詰めた態度然り、心理描写を季節の空気の中に深く織り込んでいるのも巧妙で、数年前は咀嚼し切れなかった機微も多い。
故に絡み合う人物の心中を察するのが面白くもあり、苦々しいエピソードとも言える。
艶やかな王朝文化に食傷気味になるけれど、全体を通して落ち着いて読める巻。 -
もうこの巻では、どうして玉鬘が鬚黒の大将といっしょになるのかということ。それにつきる。真木柱の帖のはじまりは「こんなことを帝がお耳にされたら、畏れ多い。当分は世間に知れ渡らぬよう、内密にしておくよう」という源氏の言葉にはじまる。鬚黒の大将が玉鬘のところに通い始めているという。解説にもあるように、読者は寝耳に水。私は、何か読み飛ばしたのかと、数ページもどって読んでみたりした。けれどどこにも何があったか書かれていない。想像するよりない。というか、それを受け入れるよりない。なんか、玉鬘がかわいそうでならない。せっかく、帝の姿を見て、入内するのもいいかなあと思い始めていたのに。もう一つ印象に残るのが蛍の件。蛍をたくさん捕まえておいて、夜に放つ。その明かりで、玉鬘の美しさに魅せられてしまう。そんなことが本当にあったのだろうか。それから、葵祭が出てくるのもおどろき。
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「須磨源氏」という言葉がある。
『源氏物語』を読み始めて、「須磨」の巻まで読み進んで挫折し、再び最初からとりかかるが、また須磨の巻で挫折していつまでも読み終わらないことをいう。
僕はこの「巻五」に収録されている「藤裏葉」で挫折してしまった。
あれから2年近くの月日が流れてしまったが、また続きが読みたくなってきた。
源氏さんは玉鬘(夕霧の娘さん)に恋心を打ち明けながらも、弟の兵部卿の宮との交際をそそのかす。
源氏が玉鬘の部屋に蛍を放ち、その光で兵部卿の宮が玉鬘の横顔を見てしまう場面がある。
すごく幻想的で、日本的な美しさにあふれているなあと思う。
しかし、そうこうしているうちに、玉鬘は鬚黒の大将の手に落ちてしまった。
そんな横取りありか!って感じだ。
明石の姫君(娘さんの方)の入内が決まり、その後見役として明石の君(お母さん)が推薦されたことで、漸く母娘は宮中で共に暮らすことができるようになった。
すべての心配事が解決し、源氏は出家の志を固めたようだ。
「蛍」「常夏」「篝火」「野分 」「行幸」「藤袴」「真木柱」「梅枝」「藤裏葉」の9帖を収録。
寂聴さんの日本語、美しいなあ。 -
蛍,常夏,篝火,野分,行幸,藤袴,真木柱,梅枝,藤裏葉の9帖が収録.頭中将と夕顔との間の娘,玉鬘を巡る物語がメインだが,平安の世における女性観が描かれた,読み応えのある巻(できれば第22帖玉鬘から第31帖真木柱までの玉鬘十帖を1冊にしたいところ).軽んじられる平安女性の意思にもめげず,玉鬘は不本意な結婚の末,宮中官僚として仕事を持ち,よい家庭人として生を全うする.現代にも通じる死生観が,苦労人である玉鬘を通じて描かれている点が興味深い.紫式部が彼女に“玉鬘”の名を冠した意図に深く首肯する.
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玉鬘の顛末がめちゃくちゃ悲劇だったのに対して、夕霧が7年越しの恋を実らせたり明石の君が親子の再会を果たしてたりと見応えがたくさんある部分だった。許せねえよ髭黒…
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《目次》
・「蛍」
・「常夏」
・「篝火」
・「野分」
・「行幸」
・「藤袴」
・「真木柱」
・「梅枝」
・「藤裏葉」 -
2007/05
それでは失礼し...
それでは失礼して
「ぜんぜん簡単じゃないじゃん!」
『セカンドジェネレーション』借りる人がいたなんて!むしろちょっと嬉しいですねw
『セカンドジェネレーション』借りる人がいたなんて!むしろちょっと嬉しいですねw