小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.72
  • (13)
  • (28)
  • (22)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 407
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767699

作品紹介・あらすじ

「数日前から『琉球処分』という本を読んでいるが、沖縄の歴史を私なりに理解を深めていこうとも思っている」――内閣総理大臣 菅直人

清国と薩摩藩に両属していた琉球――日本が明治の世となったため、薩摩藩の圧制から逃れられる希望を抱いていた。ところが、明治政府の大久保利通卿が断行した台湾出兵など数々の施策は、琉球を完全に清から切り離し日本に組み入れるための布石であった。琉球と日本との不可思議な交渉が始まったのである。

<琉球処分とはいったい何か? 明治初期まで沖縄には、琉球王国という独自の国家があった。日本政府は軍事的圧力で琉球王国を解体した。これを琉球処分という。>
<歴史書を読めば、琉球処分の経緯に関する知識を身につけることができる。しかし、知識だけでは、沖縄の人々の心情を理解することができない。そのためには優れた小説を読むことが有益だ。>――佐藤優 解説より

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2022年5月15日沖縄本土復帰50周年の節目ということもあり、本書を読み始める。明治時代の黎明期 明治5年から物語が始まる。
    琉球は、当時清国と薩摩藩に両属していた。日本が明治となったことがきっかけに、清国から切り離し、日本に組み入れることを前提に政治的な駆け引きが行われた。
    日本政府と琉球との交渉がつぶさに展開され、興味を掻き立てられる。名前を覚えるのが大変だが、それぞれの理論展開が登場人物の立場から語られる本書のスタイルに魅了された。続きは下巻へ

  • 近代国家建設を進める明治政府に翻弄される琉球。琉球にとって日本とはどのような存在だったのか?興味深い

  • 明治維新後の琉球王国を日本に統合するまでの、琉球と明治政府の交渉。息詰まるというよりも、前提となる国に関する考え方を合わせることが難しかった様子が興味深い。当時から琉球の人々から見ると、日本は異質で、大きく考えの異なる政策を持ち込んできて混乱を起こす元凶だったのだと思う。当時の琉球から見た国際情勢は遅れたもの(清国の属州で、清国が守ってくれる)であったが、現代ではどうだろうか。米国は本当に守ってくれるのか。

  • 読むのにやたら長い時間がかかってしまった…。厚いのが2冊なうえに、話がなかなか進展しなくて、正直投げ出したくなる感じだったけど、それこそがねらいなのかともうがってしまうほど。琉球処分にあたってのヤマト役人の苛立ちの追体験をさせたいのかな、と。しかし、今の辺野古の問題は「平成の琉球処分」というあとがきにどきっとする。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759363

  • 廃藩置県で琉球王国が廃された時点からストーリーがはじまる歴史小説。清との外交禁止、琉球における鎮台の設置、尚泰の上京という3つの難題を、琉球側がいかに解決するかというところまで物語が進んだ。
    本書がどこまで史実に沿っているのかは不明だが、いかんせん、琉球の役人が保身にはしりすぎている印象を受けた。表面的なことばかり気を取られて、周りの変化に全く対応できていないのがもどかしい。
    しかし、琉球役人の教養の高さにも驚いた。副島が無風流である下りは笑ってしまった。今の政治家とそう変わらない。
    本書を読みながら、沖縄がよく日本に同化できたなと、その教育の素晴らしさに驚嘆せずにいれない。同時に、現在の沖縄の人々が、内地よりも愛国心が強い人が多いことにも、本書を踏まえると驚いてしまう。
    また中国が、沖縄を自国領土と主張する所以も、分からなくないように思う。沖縄で分断が進んでいるのも、もとを正せば、琉球役人の蒙昧な態度に端を発しているのではないかと感じざるを得ない(薩摩侵略だけが要因でないように思う)。

  • この人誰だっけと少しなる

  • 面白い。あまり期待していなかったという事もあるが。一応小説なので本当にこうだったか検証のしようがないが、こういう空気だったのだろうなと想像出来る。しかし琉球のお偉方の人たちにはイライラする。それは日本側の視点で読んでしまうからなんだろう。軍隊を持たず、清と日本の両方に両属してきたとする人たちには皇民になれというのは難しい。日本も外国の干渉を避けるためにも事を荒げず進めたい。駆け引きが面白い。沖縄を理解する上ではとても大事な物語だと思う。ついつい当たり前に日本でしょ、って思ってしまうから。今の沖縄の人たちはどう思うんだろうか。

  • 蒙昧。この一言に尽きる。
    さて後半はどうなる事やら。。。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759363

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大城立裕(おおしろ・たつひろ)
1925年沖縄県中頭郡中城村生まれ。沖縄県立二中を卒業後、上海の東亜同文書院大学予科に入学。敗戦で大学閉鎖のため、学部中退。’47年琉球列島米穀生産土地開拓庁に就職。’48年野嵩(現普天間)高校教師に転職し文学と演劇の指導にあたる。’49年『老翁記』で小説デビュー。’59年『小説琉球処分』連載開始。’67年『カクテル・パーティー』で芥川賞受賞。『恩讐の日本』、『まぼろしの祖国』、『恋を売る家』など著作多数。また沖縄史料編集所所長、沖縄県立博物館長などを歴任。

「2015年 『対馬丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大城立裕の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×