小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769402

感想・レビュー・書評

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  • ムーミンコミックスの翻訳者の冨原眞弓が翻訳。遥か昔、ムーミンのテレビアニメが好きだったがボンヤリした記憶しかない。スニフの性格を初めて知った。トーベ・ヤンソンを主人公にした映画『トーベ』は、日本でも公開されるだろうか。今年は一度も映画館に行っていないが、映画が気になる。

  •  眠る前の絵本代わりにと、夜まで読まずにとっておきました〜大正解!
     まだ幼いムーミン が冒険の全てを新鮮に感じていることを追体験しているようで、とびきりやさしく楽しかったです。ママの優しく礼儀正しい母親像と、パパの手がかりを聞いた途端にお礼が疎かになりそうになったり立ち止まるのを許さなくなるような完璧ではないところを垣間見るのも人間らしなあと(トロールらしく?)安心します。

     ママが急いでいる時のスナフとの会話。
    「幹がらひょろりと長くて、てっぺんにちょっぴり葉っぱがついているだけだなんて。ばかみたいな木だなあ」
    「これはヤシの木よ。むかしから、こういうかたちをしているの」
    「そんなのどうでもいいよ」

    この会話には急いでいるお母さん(お母さんは大抵何か忙しいので)と発見したこと、感じたことを立ち止まって受け止めたい子供との対比がさらりと凄くわかりやすく描かれていると思います。それに、スニフが木の名称をママに答えて欲しかったのではなかったというのが滲み出ているのにも。
     全く違う生き物のはずなのに誰かに感情移入できてしまう、一緒に世界の美しさを堪能できる、そんなところが長年ムーミン のお話が愛されている理由なのかなと思いました。続きがたのしみ!

  • トーベヤンソンは、祖父母が建てた大きな家で、彫刻家の父と画家の母の長女として、1914年に生まれる。1歳半の時にお母さんの真似をして、絵を描いていたという。それから、絵を描き物語を作るのが好きだった。本人は、お母さんを目標として、画家を目指した。
    父親は、トーベが3歳のときに勃発したフィンランド内戦に政府側の兵士として戦争に行く。幼い頃の思い出が、その父親がいないことが、お母さんと一緒にパパを探す物語のモチーフになる。
    美術学校にも行き、絵の才能が認められ、展覧会にも出品していた。しかし、フィンランドにソビエト軍が押し寄せ、ドイツ軍と手を組むことで、ユダヤ人狩りも行われた。父親は、その政府の立場を支持していた。トーベヤンソンは、その戦争好きで、ユダヤ人を排斥する父親に反対して、衝突し、絶縁状態にもなる。絵を描いても、戦争によって色彩を失われていくことで絵を書くのを断念する。トーベヤンソンは、ムーミンの物語を書き始めて、1945年の戦争中にこの物語を作り発表する。
    トーベヤンソンは、童話にはハッピイエンドが必要だと考えていて、パパ探しは、パパと会うことと大きな家を見つけることとなる。トロールとは妖精の意味で、叔父の家に少女の頃泊まった時に、お腹が空いて冷蔵庫でつまみ食いをする。そのことで、叔父から、暖炉の裏からトロールが、出てきて首筋に息を吹きかけるという話から、熟成されてムーミントロールとなる。この第1作は、まだムーミントロールはふくよかではなく痩せている。パパを探す時に、いつも母親は力強く困難を乗り越えていく。青い髪の美しい少女チューリッパ、大変な怖がりのスニフ、パパはニョロニョロと一緒に旅をする。
    そんな中で、大きな洪水で流されたパパを発見するのだ。
    私は、ムーミンの物語って、もっとほのぼのしたものだと思ったが、戦争の中で苦しんだトーベヤンソンがあったことを初めて知った。そして、彼女は、戦争に男はいくのだからといって、恋をするが結局子供を産まないという決断さえもする。そういう背景が、豊かな詩情あふれ、パパに対する思いを綴る物語を紡ぐ。

  • 家で過ごす時間が増えて、やたらと昔の失敗を思い出してしんどくなったときに、脳内にスナフキンが出てきて「すんだことだよ、ね、きみ」と語りかけてきた。
    でも、わたしはムーミンをアニメでも小説でも履修してないのだ。
    昔、ビンゴの景品でムーミン名言集みたいな本をもらったからそれか?と思ったけどもう手元にない。
    ミィのポーチ使ってたくせに、よく考えるとムーミンのことなにも知らないな、と気付いた。
    いい機会だから出典元を探すついでに履修しようと思って、ムーミンのボックス(単に本屋に行ったら売ってたのがそれだけだった)を買った。
    時間があるとシリーズ物に挑戦できる。それだけはすばらしい。

    で、ネットで調べて「幻の1作目」とされてた本作から手に取った。
    なんだこれ面白い!
    短いお話ではあるけど、怒涛の展開ですぐに最後まで読んじゃった。
    ムーミントロールはストーブの後ろに住んでるんだ、寒い国らしい夢がある設定だ…。

    なによりも序文が印象に残りました。

    「1939年、戦争の冬のことです。仕事はぱたりといきづまり、絵をかこうとしてもしかたがないと感じていました。」

    「でも、王子さまや、王女さまや、小さな子どもたちを登場させるのはやめて、かわりに風刺画をかくときにサインがわりにつかっていた、怒った顔をした生き物を主人公にして、ムーミントロールという名をつけました」

    「とにかく、これはわたしにとってはじめての、ハッピーエンドのお話なのです!」

    続きを読むのが楽しみだ。

  • ムーミンシリーズの第1作。しかし、諸事情により著者晩年に再版されるまで、戦時中に駅売店で扱う新聞のような小雑誌で発行されたのみの幻の作品だったらしい。そのためもあって、日本でも広く知られている作品群とは、大分毛色違うモノになっている。ムーミンと言えば大抵浮かぶキャラクターもほとんど出てこない。それでもそれなりの読み応えがやはりあって「これはこれでアリ」だと感じた。

  • 1番はじめに書かれたムーミン小説。
    どんどんと話が進んでいくし、子どもの話って感じで不思議な空気を孕んでいる。

  • ムーミンパパがいなくなって、ママとムーミンが探しに行くなんてビックリした。

  • 飯能市にムーミンパークができたということで、ムーミンを読んでみたいと思い購入。この話はムーミンのお話の第1作だったけれど、翻訳が出たのはムーミンシリーズが終わった後だったらしい。幻の第1作。

    読み終わってほっこりした気持ちになれた。ニョロニョロが可愛かった。

    どうでもいいけど、挿絵に裸の女性がいたけど、これは大丈夫なのかしら? お尻が丸出しだったり、乳首が描かれていたりしたけど。小学生の時にこれを読んだら、もうドキドキして夜眠れなくなるんだけど、、、

  •  ムーミン好きを公言している者として、改めてムーミンの原作を読んでおかねばとかねてより思っていたが、今年はやってやろうと!本屋に走った!

     ムーミン好きというより、キャラクターとしては、なんと言ってもリトルミィ!そしてスティンキー(原作には出て来ない・・・)が大好きで、本作では出てこないけれど、大好きなものぐらい語れるようになりたいなと思っていた次第で。

     昔、いくつかのエピソードを読んだことがあるけれど、今回はちゃんと発行順に読み進めて行くことにした。

     読んで良かった!とっても気持ちいの良い冒険譚!ムーミントロールとスニフとの出会い、スニフの気の小ささ、ムーミントロールが頑張るけれど、まだまだ子供なところ、ニョロニョロの登場!、いろんな生き物との出会いと別れ、とまあいろいろあるけれど、本作ではなんと言っても、ママの優しさ、猪突猛進的なところが魅力的ですね!

     これからのムーミン世界の展開、いろんな生き物との出会いが楽しみである!

  • 妖精たちのさざめきを描いた作品。
    物語というより、観察して記録したような客観性を感じる。
    イラストにしたってムーミンもママも可愛くないし(癖になる味はあるけど)、物語の大部分は森が舞台だからか、なんだか鬱蒼として暗い雰囲気。
    それでも、「たのしいムーミン一家」よりも好きだ。
    ふわふわ楽しい物語よりも、泥臭い方が私は面白い。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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