終わった人 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938761

感想・レビュー・書評

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  • 内館牧子さんの本は、とてもテンポのいい展開で、読みやすく好きです。
    今回のテーマは定年後の生き方についての内容で、小説ながら、とても深いなーと思いました。
    いい本でした!
    ぜひぜひ読んでみてください。

  • 厚みのある本だったけど、1日で読み終わってしまった。
    人生とは、気持ちの持ちようで景色が変わる、自分にとっての生きがいは、、などなど考えさせられる本でした。

    登場人物のキャラクターも面白く、特に道子の観察力はすごいなって思いました!

  • うちは定年がないが同年くらいの夫を持つ妻に興味を持って読み始めた。なのに主人公がまるで私だった。専業主婦になることを余儀なくされた時の疎外感、焦燥感。主人公の振る舞いや感情がいちいちあの頃の私。友達が定年を迎える今、逆に私は穏やか。漸く知天命の境地。

  •  内館牧子さんの本は初めて読みました。内館さんのお名前は「女性初の横綱審議委員会委員」という記憶が強く残っています。
     「終わった人」は、かつてやり手の大手銀行マンだった男が、意に反して子会社に出向させられ、そこで定年を迎え、退屈な日々を送るようになったところからスタートします。
     私もつい先日42年間働いた会社で定年を迎えたばかりなので、主人公の気持ちはちょっぴりわかります。翌月から再雇用となりますが役職も外され、責任もなくなり、気軽と言えば気軽ですが、このままここにいてもいいのだろうか?という気持ちのまま転職を考えている今日この頃です。
     この本は、2018年に舘ひろしさん主演で映画化もされています。奥様役には黒木瞳さん、下心を寄せる?お相手には広末涼子さんというキャストのようです。
     本の感想としては、もう少しハッピーエンド感を出しても良かったかなと感じたりしましたが、現実はそんなにうまくいかないことが多いので、このくらいがリアルな設定なんだなと思いました。

  • 印象的な物語。
    もう一旗揚げようと思う主人公の気持ちもその家族の気持ちもよくわかる。実際にあれば悲しすぎるよねこれは…

    夢よりもお金。お金よりも夢。
    どちらも肯定したいとは思う。

  • 定年を迎え毎日が日曜日の状態になかなか馴染めない主人公。会社に属さない「終わった人」だとの思い。妻の従兄からは、仕事に関して、成仏していないからだ、と言われる。ああ、そういう場合もあるなあ、と思った。

    盛岡一の進学校→東大法学部→大手銀行→社員30人の子会社に出向→子会社に転籍させられ専務取締役で63歳で定年。”ほぼ”エリートコースのサラリーマン人生だ。転籍先で終わったところが、成仏できないところなのだろうか。本部の管理職で終わればスッキリしていたのかな。俺はもっと出世できたはずなのだ、という不完全燃焼感なのかな。鶏頭牛尾の鶏頭の人生ならまた別なのかな、いろいろ考えた。

    最後は内館氏らしく、一条の道を歩み始める。そう、飯食って、息して、生きねば。

    「今度生まれたら」(2020.12)に先立つ2015年9月の出版。内館氏も数年前に還暦を迎え、友人知人が定年を迎え、クラス会も頻繁に行われるようになった。そこで、若い頃美人であろうとなかろうと、秀才であろうとなかろうと、一流企業に勤務しようとしまいと、人間の着地点って大差ないのね、とふと気づいたという。「重要なのは品格のある衰退」・・国際政治学者・坂本義和氏 国家に関して、イギリスなど。

    「今度生まれたら」は70歳の主婦、夏江の本音のつぶやきが、びんびん響いてくるが、こちらは63歳の定年男子の独白。つつましく内省している雰囲気。実は数年前に定年済みの身。ああ、明日行かなくていいんだ、という解放感。ずっと家にいていいのかな? こんな読書三昧の楽しい日々でいいのかな? いやいや38年もご奉公したんだしと開き直っている。

    釧路新聞、室蘭民報、東奥日報(夕刊)、岩手日報、茨城新聞、上毛新聞、山陰中央新報、四国新聞に連載されたものに加筆。著者初めての新聞連載。

    2015.9.16第1刷 図書館

  • 『終わった人』。題名だけで切なくなる。
    高学歴でエリート出世コースに乗って定年を迎えた主人公の「俺」。
    幸せねーと、端から視るとそう思うのですが、本人は全然そうではないのですよね。
    当たり前です。
    63歳で定年した「俺」。
    みんなそれぞれが、自分の不完全燃焼な部分があるわけで、まだ、枯れたくない、もう一花咲かせたい、迷いに迷って、抗って、プライドを捨てられない。
    故郷で同級生の様々な生き方に目の当たりにして、「俺」は自分の過去とこれからを改めて考えて行きます。
    そして、妻は?妻のこれからは? 妻側の思いをもっと知りたかった。
    終盤は一気に読み終えました。

    自分はどうか?人生の終わりに向かってどんな生活を送っていくのか? つくづく考えさせられました。

  • Audibleにて。

    「終わった人」ってタイトル、何か人生終わったみたいであんまりな言い方って思ってたけど、エリートサラリーマンなだけあって、すごい波乱万丈。

    定年退職したおじさんの話だから、どっちかって言うと父親を見る感覚だったが、会社が倒産したのを申し訳なく思ってる壮介に対する妻の態度が冷た過ぎて、何だか悲しくなった。別に家がなくなったりしたわけでもないし、不倫して騙されてって訳でもないのに許してないとか言うかなぁ。

    最後はとりあえず卒婚ってことで、岩手に戻ってからの壮介を応援したくなった。

  • 自分現在40後半、これから終わった人が見え始める年代。読み始めは現実と先を重ねて暗い気分になりそうだからやめておこうかと思ったけど、作品は作品として読み進めたら、読後は爽快。

    『十代、二十代、三十代と、年代によって「なすにふさわしいこと」があるのだ。五十代、六十代、七十代と、あるのだ。形あるものは少しずつ変化し、やがて消え去る。それに抗うことを「前向き」だと捉えるのは、単純すぎる。「終わった人」の年代は、美しく衰えていく生き方を楽しみ、讃えるべきなのだ。』

  • 2022.6.4読了
    だいぶ前に、著者の作品を読んだことがあった。どのくらい前か調べてみたら、およそ30年前である。テレビドラマにもなった著名な作品だ。人の気持ちはままならないものだと、大人ぶった感想を持ったのを覚えている。
    それから四半世紀を過ぎ、また著者の作品を手にし、読み終わってみて同じことを感じていることになんともいえない気持ちになった。

    定年を迎えて、いわゆる燃え尽き症候群の主人公は、人並みに趣味を探したり、文学にトライしたりとやり甲斐を求めて奮闘する。
    しかしそのどれもが彼にとって正解ではないので、イマイチ夢中になることができない。
    彼にとっての正解とは、仕事でしかあり得ないからである。
    しかしある時、スポーツジムで出会った青年から自分の経営する会社の顧問になってくれと持ちかけられ、彼の人生がまた動き始める…

    自分が作中、ままならないなぁと感じたのは夫婦の有りようだ。
    主人公の妻は、夫が塞いでいれば、辛気臭さに我慢がならない。しかし、彼が生き生きと顧問を務めていれば上機嫌。経営に失敗し、負債を抱えてしまえばネチネチとそれを責める。
    彼は彼で、顧問になった会社の社長が病で亡くなった後、社長となって経営を引き継ぐことになった。しかしその会社はある事情から倒産してしまう。自分のみならず、妻と老後を過ごすための資金も大半が後始末に消えてしまうのだ。
    彼は、引き受けるその時に会社がどのくらいの融資を受けていて、何かあれば自分の身に降り掛かるのだと勘定に入れていなかったのだろうか。あまりの無謀さに、妻がネチネチするのも当たり前だ。どう考えても、万に一つも妻には責を負うところはない。

    しかし妻も、今まで何も困る事無く暮らし、自分の好きな仕事をすることができたのも夫が大黒柱としてゆるぎなく家庭を支えてきたからこそと言える。
    ならば、夫の燃え尽き症候群に何らかの形で寄り添うことがあってもいいのではないか。
    なにも恩着せがましく感謝をあらわせということでなくて、相手が困った時にこそ一緒に歩むことができたらよかったのにと思わずにいられない。
    けれどそううまくは行かないのが夫婦である。
    万事オッケーに解決しないのが著者の作品の魅力なのかもしれない。

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著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内館牧子の作品

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