終わった人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.79
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938761

感想・レビュー・書評

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  • 人生のソフトランディングの仕方。他人に人生のカードを握られない大切さ。過去に囚われたりしがみついたりする惨めさ。今、この年齢で読んでおいて良かった。どうやって生きたいか、何を大切にしたいかを考えるキッカケになる。仕事でのやりがいや面白さにのめり込むことももちろん理解できるけど、盲目的にそれだけになってしまうと燃え尽きて終わってしまうだけになってしまいそう。とりあえずうちの役員は全員読んで欲しい。65超えている人は早く老害だと自覚して欲しい。主人公も言っていたように本人にしてみたら60代って肉体的にも精神的にも「まだまだやれる」んだと思う。でも彼らが居座り続けることによって時代の流れからどれだけ日々遅れているか。そりゃ本人たちには分からないよね。

  • 3.5
    東大卒の銀行員で役員を目前に出向、63歳で定年した田代壮介。定年後の生き甲斐を求め四苦八苦。愚痴、想い出話、リア充の強がり。ジム、文化サロン、散歩、大学院、ハローワーク色々試す。老いらくの恋。ジム仲間の会社に役員で就職と充実の日々。社長就任。会社倒産による借金返済と老後資金の枯渇。離婚の危機とIターン。結末は卒婚と別居。最初は、終わった人の日常と悩みで誰にでも訪れる展開で面白かったが、役員就任から卒婚は怒濤過ぎていまいち。小さい起業や研究から始める等の方が親近感と納得感がある。定年後を踏まえた今の在り方を考えさせられる一冊。

    東大卒の銀行員で役員を目前に出向となりそのまま63歳で定年した田代壮介。定年後の生き甲斐を求めて四苦八苦。専業主婦から美容室で働くようになった妻に愚痴、想い出話ばかりの日々。プライドが邪魔して、周りにはリア充の強がり。ジム、文化サロン、散歩、大学院入学検討、何でもよいからハローワークなど色々試す。会社の理不尽さを目の当たりにして出世を早々に捨てボクシングのレフェリーに今も生きる学友や昔の同僚との関係の中で虚無感など実際にありそうな展開。久里との老いらくの恋。そんな中、ジム仲間の鈴木の会社に役員として就職と充実の日々。鈴木の死による社長への就任。会社倒産による借金返済と老後資金の枯渇。離婚の危機と故郷盛岡へのIターン。利害もある結婚と覚悟に対する専業主婦の娘の偉そうな発言が鼻にかかる観はあるがそれなりに的を射ている。結末は卒婚と別居。最初は、終わった人の日常と悩み、これまでの人生を振り返り、それなりに誰にでも訪れる展開で大変面白かったが、役員就任あたりからあり得ない展開に。充実の日々と倒産、離婚危機、Iターン、卒婚と怒濤の展開でいまいちな感じ。小さい起業や研究から始めるとかもう少し一般的な話に落とし込んだ方が親近感と納得感があった。一方で、定年後を踏まえた今の在り方を考えさせられる一冊。

    壮介は、49歳で出向後に奮闘するも51歳で転籍に命ぜられ「俺は終わった」を実感。退職も考えるも給料や再就職先も踏まえ受入。激しく熱く面白く仕事をしてきた者ほどこの脱力感と虚無感は深い。社会に影響を及ぼすことなく家族を守っただけという小物感に襲われたものの、「散る桜残る桜も散る桜」(良寛の辞世の句)。サラリーマンだけでなく、壮介の義理従弟のトシのようにイラストレーターのような才能や技能で働く者でも世代交代はあり終わった人になる。世代交代と無縁でいられる人は天才であり努力でどうにかなるものでもない。
     専業主婦だった妻千草は43歳で美容学校に通い始めサロンで働いており定年した壮介との価値観のギャップ。妻へのプライド。「時間なら幾らでもある⇒時間ならとれる」「温泉旅行でも一泊なら付き合う」。
     定年後、妻にもあまり相手にされず、友達もいない。妻も自分の生き方やコミュニティを固めてきたわけで、定年後の妻との人生を想像しても全く違うことを考えているもの。
     一流商社に勤めた学生時代の友人二宮はボクシングのレフェリーとして今も活躍。31歳で出向した上司とかつての部下に理不尽な会社を想い、人は死ぬまで、誇りを持って生きられる道を見つけるべきだと感じたらしい。63歳にして、夢を語る人と生前葬を語る人の違い。
    予想外に強気に出られると人はひるむ。
    各種委員会は、個人ではなく、メガバンク役職者に依頼している。
    故郷は遠くにあって、想うからよいのであって、帰ったらそれはそれで辛いもの。
    想い出と戦っても勝てない。

  • うーん。主人公ほどのエリートではないにしても、あと10年もすると、同じような思いをするのかと考え考え読みました。「思い出にはどうやっても勝てない。」いい意味で、意識したい台詞です。嫁さんにも勧めます。どんな感想か、ドキドキします。

  • 分厚い文庫本だなーと思ったけど
    勢いに乗ったらあっという間。

    暇で、やりがいもないけど平穏な日々と
    リスクはあるけど刺激的な日々
    どっちがいいんだろうね。

    あ、どっちを選んでも
    行き着くところは同じって話か。
    結局、迷わず進めってことかな。

  • 内館牧子さんの作品を初めて読みました。大手銀行で役員手前まで出世した主人公、子会社の専務を定年退職したところから始まる物語。最初はプライドが邪魔をして、中々リタイア後の生活が上手く行かない。ただ、徐々に自分の立場や周囲の人の気持ちを理解しつつ、第二の人生を送り始める。ひょんなことからベンチャー企業の経営に関わり、生活が一変。やっぱり仕事をしないと充実しないサラリーマンの性を上手く、描いている。故郷に帰ってやり直そうかと思う主人公に、一人娘から浴びせられる言葉は痛烈。故郷に戻ったからって、周りからチヤホヤされるのは最初だけ。故郷に戻れば何とかなるなんて幻想。サラリーマンリタイア後の教訓に溢れていて、色々と考えさせられて面白く読めた。

  • おもしろかった。題材が妙にリアルで、それでいて日常に潜む大きな物語を扱っているギャップのバランスの取り方が巧い。まず、主人公の移ろいゆく感情の起伏が定年後にそぐわず激動。喪失感、屈辱感、肯定感、諦念、回帰願望、そして一抹の希望。その全てが、本当にリアルだった。そして、何より驚いたのが、妻の豹変ぶり。この本の前に、「豹変」というタイトルの本読んだけど、この妻の方がよほど豹変していた。物分かりのいい、筋の通った人柄だと思っていたけど…。一番道理を弁えていたのが、娘の道子だった。そして、離婚に至るシーンがまた生々しい。こうやってギクシャクして、歪みあって、憎み合うまでに達するんだなと、納得してしまう。ドキドキした。そして、最後に少しだけ救われるところも、好き。

  • 離婚でなく◯婚。なんかなぁ。
    どうせなら定年後夫婦のもっとありがちな様子を書いて欲しかった。こんな夫婦あんまし居らへんやろ。期待はずれ。

  • 出世競争に敗れ、失意のまま定年を迎えた元エリート社員。
    生きがい、居場所を求めてあがく。
    ひょんな出会いから、第2の人生が華々しく始まったのだが・・・

    60代半ばの自意識の高い男って手に負えないなぁというのが感想。
    エリート面倒くさい・・・(笑

  • テーマは新鮮で面白いだけに、生かしきれてない感じが否めない。
    結局作者はどうあるべきと思っているのかいまいちはっきりしないし、心理描写が最初は丁寧でまだ共感出来るけど、中盤から全く誰にも共感出来ず。
    ネガティブ過ぎて、引き込まれるところがなく、読了するのがやっとだった。
    千草にも主人公にも娘にもイラっとした。
    こんなに登場人物を好きになれない本も久しぶり。

  • 人生の終わりに9000万の負債かぁ。
    人生まだちょっとあるうちの5000万での開業も一歩踏み出せないのに。
    でも、奥さんみたいにキレきれるかなぁ。
    すごく上がり下りの数年の話だけど、面白かった。
    結局、終わりは大体同じになるんだな。

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著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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