小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065125540

感想・レビュー・書評

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  • 映画化すると聞いたので手にとって見たが
    こちらはシリーズの続刊のようだ。

    上巻を読んだ限りでは、九ノ里がやや良い印象だが
    そこまで活躍を見せておらず
    共感できるキャラクターがいない為、
    淡々と読んでいる。

    そんなにも『最近の高校』は未だに漫画を嫌い、
    図書委員は漫画や雑誌、ラノベを読むことも許されないのだろうか。
    漫画村をモデルにした件にしても、
    こんなに最近の高校生はモラルがなく頭が悪いのか?
    と疑問に感じた。
    好む物語の話でも、同族嫌悪で失敗し成長する主人公を
    好きにならないというのも同じく疑問だ。
    本当にそんなものなのだろうか。

    ただ、確かに
    もう物語じゃ人の心は動かせなのかもしれない
    というのは自分の時折感じなくもない。
    そもそも文章を読めない人が多くなっており、
    200文字もあれば『長文』と言い出す。

    『世界の行間を読む』という真中の言い方は好きだった。

    地の文で同じ言葉の繰り返しが多いのが気になった。
    たとえば、『訥々と』。何度も同じように使われるし
    話し手が同じなら口癖設定なのかなとも思うが
    違う人に変わっても同様だった。

    天月彼方の持論は中々興味深い。
    ・売れている作品は運がいいだけ
    ・読者は売れている本しか買わない
    ・運の悪い本は存在すら知られない
    ・読書好きじゃない普通の人たちは自分で本を探さない
    ・本気を出さないでうまく手を抜いて書くべき
    ・届かない相手にはいくら頑張っても届かない
    ・物語が人を動かすかどうかなんて、読者の力量次第だ。読み解く力がないやつには、何を言っても無駄だ
    ・真摯に書くのは売れてからでいい

    小余綾などは反感を覚えているようだが
    間違いとは言い切れない。
    彼女が言うように実際天月が売れているから、というだけではなく。
    漫画しか読まない人が増え、
    読書をする人が少なくなり、
    自分で好きな本を選んで行間もきちんと読める人ではなく
    テレビで紹介され平台に積んである本だけ気まぐれに手に取るのが
    『普通の人たち』。
    そんなのは間違っている、と思いたくても
    手にとってもらえないなら話が始まらない。
    どんなに良い本でも気づかれなければ読まれないし、
    読解力の無い人が読んでもつまらない、わけわからないで終わってしまう。
    それなら、真剣に書くとしても流行に迎合した
    漫画化や実写化しやすい軽くて頭が悪くてもわかる内容を
    量産して名前を売ってからでもいい。

    これは、そのとおりだ。


    物語が本当に好きで、真摯に向き合って
    向き合いすぎて書けなくなろうが、血反吐を吐きながらやっとの思いで書こうが
    そんなの読者には関係無い。

    多分、真摯に物語に向き合うことが正解だと
    持っていきたいのではないかと想像するが
    ここまで現代日本の読書力低下や
    本が売れないという『真実』を書いた後で
    どう正解まで持っていってくれるのか下巻を読むのが楽しみだ。

  • ■小説は、好きですか?

    もう続きは書かないかもしれない。合作小説の続編に挑んでいた売れない高校生作家の一也は、共作相手の小余綾が漏らした言葉の真意を測りかねていた。彼女が求める続刊の意義とは……。その頃、文芸部の後輩成瀬は、物語を綴るきっかけとなった友人と苦い再会を果たす。二人を結びつけた本の力は失われたのか。物語に価値はあるのか? 本を愛するあなたのための青春小説。

  • 好きな作家さんのシリーズ2作目。
    子供の時から年に百冊前後だから、結構な小説を読んだと思うけど、いつもその小説から滲み出てるものを汲み取って咀嚼しようとはしてる。そう言う読者ばかりでもなく、そもそも読む人も減っている現状で、とても息苦しい話ではあります。
    本から感じたものは、今の自分を形づくり、支え、周りを彩ってるから、こう言う小説が好き。

  • 主人公が複数いるが奇しくも同じ悩みを持っている
    『小説が好きだ』自分の心に気が付くまでの曲折が
    少年少女には死ぬほどの悩みになる
    秋乃は小説を紡ぎ出す少女の最初の読者になった
    詩凪は自分で小説を紡ぎだせなくなった
    一也は「詩凪の小説」と引き出し共著を出す

  • 秋乃の性格が 自分の性格と似ていたこともあって
    感情移入をしながら読ませてもらいました.

    作家さんと読者というふたつの視点から展開される
    物語はとても新鮮で 興味深かったです.

    『 世界の行間を読む 』
    という言葉 とっても素敵ですね.

  • 1.小説の神様
    2.小説の神様 上 あなたを読む物語
    3.小説の神様 下 あなたを読む物語
    4.小説の神様 わたしたちの物語 小説の神様アンソロジー

  • 無印では小説家・一也と詩凪の「魂の慟哭」を中心に描かれましたが、今回は少し学園青春ものに寄ったような印象がありますね。続編を書くことの意味、小説は単なるエンターテインメントなのか等の問題を議論しながら、後輩の成瀬秋乃にスポットを宛てて「小説」を中心とした過去・現在の友人関係が語られる今回でした。天月の持論には考えさせられるものがあるな…。ともあれ、一読者として作品にどう向き合っていけば良いのだろう。今回の副題の示す意味を考えながら下巻へ続く。

  • 「物語の価値はどこにあるのか?」
    主人公は自分自身。
    どれだけ嫌だと思っても絶対に変えることの出来ない事であり、自身で選んだ道を歩み続けなければいけないからな。
    相手の想いを勝手に想像するのは自由だが、本当の事は相手にちゃんと問わなければわからないよな。

    「書かない理由はなんなのか?」
    満足の出来た物を。
    始めから続編を書くなんて予定していなかったのか、それとも本人が勝手にそう思っていたのか気になるところだな。
    バレないように交友関係を隠していたからこそ、とっさにかばうことも何もできなかったのだろうな。

    「物語は人の心を動かすのか?」
    求められるものは。
    どれだけ言葉で取り繕っていたとしても、現実で体験してしまったら今後どうすればいいか決まってしまいそうだな。
    必死で叶えたい夢を絶たせてしまった後に、何度謝られようが許す事が出来ないなんて当たり前では。

  • 「凄い・・・。物語って、読むだけじゃなくて、書くものでもあるんだ・・・」

    「物語が与える影響なんて、そもそも微々たるものなのかもしれない。けれど、中にはその優れた感性で、かけがえのないものを掴み取る読み手もいる。それは物語の力というより、作家から読み手に委ねられた力なのかもしれない」
    「物語じゃなくて・・・、読み手の力、ですか・・・」

    「なんか小説って、兼業?売れない芸人みたいに、普段は本職の仕事をしてて、空いた時間で小説を書いてる人が多いんだってさ。それで、よくよく考えてみると、芸能人とかが小説を書いて、それがすごい話題作になっちゃってるとかよく聞くでしょう。要するに、みんな片手間にやってるわけだよね。でもさ、漫画は違うの。大勢の人が、ものすごい時間と労力を注ぎ込んで作ってるわけで、片手間にできることじゃないと思う。ほら、小説と違って、芸能人が漫画家デビューしましたって話とか、全然聞かないじゃん」
    作家デビューする芸能人はいても漫画家デビューする芸能人いないという話も、確かになるほどと思えてしまって面白い。

    僕は知らなかったんだ。夢を叶えるまでの道より、夢を叶えたあとの道の方が、ずっと過酷だということを。

    「努力や才能は、運には勝てない」

    「あなたは、お父様の背中が、格好悪くて情けないものだと、そう言ったわね」僕は頷き、そのまま視線を落とした。悩み苦しんで、藻掻いていた一人の男の背中。情けなく、みっともなく、憧れを感じられない人間の姿。しかし小余綾は、闘うことは格好の悪いことなのだという。悩み苦しむことは闘うことの証なのだと。

  • 間違えてこの続編から読んでしまったが、さほど困らずに読めた。でも、ちゃんと続編として読んだ方が色々楽しめたんだろうな。
    自分に自信がもてずにうじうじした性格の人が語り手の割には読むのが辛くない。日常感じてることの表現が透明感があって、登場人物の年齢と合ってて良かった。

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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