歴史とは靴である 17歳の特別教室

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065181898

感想・レビュー・書評

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  • 結論は歴史は分からない。本当に重要な、言えない事実は文書に残さないもんね笑。司馬遼太郎も浅田次郎も好きな私は、エンターテインメントとして歴史を楽しむので十分。まさに教養とはムダの積み重ね。たくさん本を読み始めて、全然違う方向から一つのエピソードがつながりだした。

  • 12p

    人類は、他の個体が経験したものを、空間や時間を飛び越して、人類共有の財産にして、次の行動が学習されていって、もうちょっとましに生きられる、もしくは愚かな考えをも伝えて、差別や偏見を後代に残したりする。

  • 【「教養」にはいろいろな定義があると思いますが、「ムダの積み重ね」じゃないでしょうか。「年季の入ったムダ」と言ってもいい】(文中より引用)

    歴史家の磯田道史が高校生を対象に行った歴史に関する授業の様子を収録した作品。歴史を学ぶことの意義や今求められる教養、そして日本史の面白さについて縦横無尽に語りかけてくれる内容です。

    超個人的な感想になりますが、やっぱり自分は磯田氏の歴史への触れ合い方やその説き方が大好きだなと感じた一冊。磯田氏自身も歴史が好きで好きで堪らない様子が行間から滲み出てくるようでした。

    今後も新刊が出るたびに手に取るんだろうなと☆5つ

  • なぜ学ぶのか。

  • ・ぼくもここに苦しんでいます。史実を史料できちっと吟味すると同時に、一般の人が読んでもおもしろいものを世に問いたいのです。なかなか難しいのですが、その思いで『武士の家計簿』や『無私の日本人』(文春文庫)を書きました。さいわい二作とも映画になり、読者や観客ができて、広く史実を紹介できたものの、これからも模索は続くと思っています。

    ・日本人の世界人口における割合は、1700年ごろには5パーセントありました。2010年は10分の1の比率になります。世界の人口において、いま、日本人は200人に1人、赤穂浪士の討ち入りの江戸時代には、世界で20人に1人が日本人だったのに、どんどん小さくなっている。
     GDPだってそう。ぼくが若いころ、日本のGDPは中国よりももちろん大きかったのです。一人あたりにすると、10倍あったんです。だけど、今後、米・中は日本の7~8倍の経済規模になる予測にたいして、日本は伸びが低いので、おそらくいまから30年後の2050年ーみなさんがちょうどいまのぼくくらいの年齢になるときですよーにはインドと比べても4分の1の経済規模しかない日本になるとされています。このデータは世界銀行系のシンクタンクの予測ですから、そうそう外れないでしょう。

    ・むこうが完全に正しいとかはまったく思いませんでした。たとえば韓国の教科書は自分の時代を進ませるために、近世がものすごく早く始まったようにして、「われわれは日本より勝っている」みたいなことをいうのです。当時の識字率でいったら日本の方がもっと高く、朝鮮はかなり工業化レベルでは後れていました。奇妙な教科書だとも思いました。しかし、この人たちは日本とはちがう、こういう考えかたをもっているのだ、その違いがわかることが、勉強です。

    ・教養とはなにかということを、ぼくはよく考えるのです。「教養」にはいろいろな定義があると思いますが、「ムダの積み重ね」じゃないでしょうか。「年季の入ったムダ」と言ってもいい。
     たとえばフランス語とか英語とか勉強してみたけど忘れましたということがあります。
     忘れるのにどうしてやるのだろうと思う人には、「バカを言っちゃいけない」と言いたい。一回覚えて忘れた状態を教養という、最初から触れたことがない人間とでは雲泥のちがい・・・・と内田百閒は言いました。ぼくが大好きな随筆家です。
     そうなんです、なんとなく触れたことがある感じが人間にとっては大事です。たとえば落語を聴いたって、ものの役には立ちそうにないけれど、人間とはどういうものなのかを考えるときにきわめて大事です。バカバカしいような話のなかに本質があります。だからムダが大事にできるようでなければいけないと思いますね。

  • 磯田さんのお話聞けるはずだったのにコロナで中止になったのが悔しい。話がおもしろい。人文系の学問を学ぶことの意義、教養とはなにか、忘れてしまうのと一度も触れたことがないことは雲泥の差であること、引き出しが増えた気持ちになった

  • 読了。この本は、磯田先生が実際に高校で行った授業の内容を文字起こしし本にしたもの。こんな授業、学生時代に受けてみたかった。
    「歴史とは」という話で進んでいく。今の教科書的な話ではなく多方面から考え、何が歴史になり得るかと語る。
    最後の生徒との質疑応答が1番興味深い。生徒も今の状況をよくわかっていて、人文系の予算が減らされる理由などを質問したりしている。
    目先のことや自分の目の前の狭い範囲で物事を考えがちになっていること、教養は無駄の積み重ねなど、磯田先生の回答も良かった。

  • 高校での特別授業での講演内容。 
    情報リテラシーとか、多角的な目、好奇心。
    思考実験からの、発想結合。

    鹿児島と沖縄には、班田収授の法が無かった。
    ←教科書は「標準的な日本人」になるための平均値
    着ぐるみ文化
    ←かつては、文字を知らない人への見える化だったのでは。

  •  授業内容よりも生徒の質問に答えるところが面白かった。
     特に、最後の「一旦覚えて忘れた状態を教養という」という内田百閒の引用と、雑木林のような多様な学問が大事、といった考えが、本当にそうだなと思った。まさに教養があるから言えること。
     他にも、各国の教科書の日本語訳を見て国ごとの考え方を知るべき、とか、
     オスとメスはどうしてあるのかという息子からの質問に、コピーをとって劣化していく様を見せるとか、なるほど確かにと思った。

     教養とは、考える力をつけるために必要なんだなーと改めて思いました。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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