憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203530

作品紹介・あらすじ

実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

感想・レビュー・書評

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  • 憲法が、アメリカのインディアンの習俗と付き合った人によってできたと言ふのは、なんか、はー。
     憲法22条第2項 国籍離脱の自由は確かに、ネイションが普通って人の発想でないなとか。
     中沢先生は、憲法に関しては護憲の人っぽく見えない。

  • 人質の自己責任論、改憲の機運に、アホみたいな改憲草案(右も左も)、アメリカの影。
    前にも姜尚中の本を読み直して気づいたことだが、イシューの変化しなさに驚いた。ただ、日本人は立場の違いを越えて、ほとんどが冷静さを失っているように思う。

  • 爆笑問題 太田光と中沢新一の対談集である「憲法九条を世界遺産に」を読んだ。

    現在の日本国憲法は、世界遺産に指定されそうなぐらい珍しく貴重なものであるという点には同意します。

    憲法改正が現実問題として取りだたされる中、他の国々との比較で言えば当然、矛盾だらけの憲法第九条はより現実的な条文に変えられるんだと考える方が一般的だと思う。

    そんな中で、他に類がなく当時の状況から奇跡的に生まれた憲法九条を、世界の人から見た理想の一つとして、世界遺産にして残そうというのも確かに意味のあることなのかもしれない。

    国会でまともな議論がほとんど行われることのない日本で、期待できるとは思えないが、現憲法の現在における意味や価値も、もっと議論されてよいと思った。

    どうも政治ネタは書きにくいな。

    2007年1月12日 読了。

  • 難しく考えすぎてしまった典型だよな。物事はもっと単純だし、あまりにも九条と言うものを最初に神格化してしまってる。

  • 知識ばっか詰め込んだ2人の言葉遊びでお互いの言葉に酔ってほめ合っているだけの印象。

  • 日本国憲法第九条をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきかを語った対談本。

    憲法改正の議論で注目されるのは「憲法九条」のこと。理想論と現実論、どちらか一つに偏るのではなく様々な視点から憲法九条について考えることが重要です。

    そして、歴史を通して戦争とは何か、平和とは何かを改めて考える必要もあります。

  • 宮沢賢治は童話を書きつつも軍国主義者の思想に染まっていた。戦争を二度と起こさないぞという意思が結集して奇跡が起きた。これが日本国憲法だった。
    アメリカからも、実は憲法改正を求められている?
    軍を持つ覚悟はあるか?国民が殺されても覚悟は?
    時系列的に、網羅的にもっと憲法の歴史と考察が知りたいと思った。思想的な話が多かった。

  • 「日本国憲法は世界の珍品?」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=K26701

  • 繊細な作品を作ってきた宮沢賢治が、一時期アジア帝国主義的な思想に傾倒していたことを切り口に9条を語るなど、ユニークな視点を興味深く読んだ。爆笑問題の太田さんが今も同じ考えなのかどうか、というところは気にかかる。この本が出た12年前とは何かが変わっている気がする。

  • 武器を持てば須らく現実の諸問題が解決するとは「血塗られた悪魔」とも別の意味の「お花畑/能天気」ともいうべきだが、とはいえ、事実に依拠しない理想主義的言説も同様。個人的に、理想を唱えるのは改良・改善を漸進的にでも目指し、貴重だと考えている(トヨタのカイゼンだって同じ)。そういう意味で、憲9条に関し、「世界遺産」化は兎も角(世界遺産は過去の遺物感を醸し出し、理想を顕彰するノーベル平和賞の方がシックリくる)、理想顕彰を目指す本書のロジックには期待。が、本書の論の脈絡のなさ(話題を広げる意図ある太田は自覚的)。
    さらに、事実の提示が少で、少々残念。また、理想を珍品に準えたり、お笑いに塗しながら切って見せるのは、太田・中沢の立ち位置からしてやむを得ないと思いつつも、残念な点か。◆しかし、幕末期の武士道が揶揄の対象だった点を古典落語から引く点は、芸人太田の面目躍如であり、武士道といったタカ派的物言いが依拠するファクトの相対化に繋がるだろう。また、お笑いの持つ愛嬌が、肩を怒らせながら意見を対立させる言動の止揚に繋がるとの視座は◎。2006年刊。
    ◆PS.本筋とは全く関係ないが、小泉政権への厳しい批判者であった「爆笑問題」を小泉政権は文部大臣賞で顕彰したとのこと。為政者は批判されるべき存在である。ならば、小泉政権の懐の深さを誰かさんも持ち合わせてもらいたいものである。

  • 妄信的に護憲派な人も批判しながら、9条がいかに珍品かを語る。異常であり、奇跡でもある。
    先の大戦、戦争を肯定した側を異常者として切らずに、なぜ肯定したのかを考える。宮沢賢治。そうしないと、同じ失敗を繰り返す。そうしても繰り返すかもしれないけど。

  • 実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

  • 本の存在は気になってたけど、なんとなく避けてたもの。爆笑問題は好きだけど、その本ってどうなのよ、みたいな変な身構えがあったりして。でも、読んでみて恐れ入りました。ニュース番組やらで色々意見するってだけでもかなりの知識が必要なのは自明だし、更にはそこにトンチも働かせようとなると、そら並大抵では無理ですわな。憲法第九条の堅持も含めて、暴走内閣の抑止効果を強く期待します。

  • 爆笑問題の太田氏と文化人類学者の中沢氏が憲法九条について語り合った内容の議事録。2006年という今とはやや状況の異なる時代に書かれたものだが、刺激的。宮沢賢治や落語、武士道を引き合いに出して九条にアプローチしているのは面白い。我々含む「戦後の日本人」は、戦前の思想を危険思想としてタブーにしてきたきらいがある。見たらそこに戻ってしまうんじゃないかという恐怖で蓋をし、未だに見ないようにしている部分。その蓋を恐怖に負けずに開ける作業が、九条を語る上で必要ではないか。
    本編とはずれるが、感受性は失われたものとの対話から生まれるっていう文言も、読んでハッとした。同時代に生きてるということは、似た様な思想を持っていることに違いないからね。もっと本を読まねばと思った一冊。短いので軽く読めます。

  • 田中光の言動はテレビで見る限りまったく同意できないものだったが、意外なことに九条に関してはリベラルな意見をしっかり持っていたので驚いた。宮沢賢治と田中智学、石原莞爾の関係から平和憲法を語るとは。実によく本を読んでいるし、深く考えている。TVでのコメントはやはり芸人としての立場をわきまえた悪ぶりだったようです。中沢新一の解説が非常にバランスが良く、九条の理解が深まったのは収穫だった。2006年の発行だが今、まさに読むべき状況になってしまった。

  • 太田光・・・あまり好きではなかったけど、この本を読んで考えが変わりました。ものすごくしっかり物事を考えている人だということが分かりました。同世代の人間として、ちょっとたのもしい気がしました。日本の憲法について、とくに九条についてはもっとしっかり学ばなければいけない。外国のことをよく知らないから、日本の憲法の、とくに九条の特異さが見えてこなかった。なぜ世界遺産にとまで言っているのかがとても分かりやすく説明されている。それだけ失ってはいけないものだったのだ。国家を一つの生命体だと考えると、自分と他者を見分けて、外から入る異物を取り除かなければいけない(免疫機構)・・・これが戦争へと発展することもある。しかし日本は、どんな場合にも戦争という手段(免疫)を放棄している。こんなことをしているのは母体だけだ。そう、女性にとって異物である胎児を9ヶ月に渡って体内に維持し続ける。それを排除しない。これはすごいことなのだろう。日本という国は、そういう意味で母親の優しさと強さを併せ持った国といえるのかもしれない。アメリカ人が作ったのかどうかは別として、日本人はこの憲法を守り続けるべきなのだろうと思う。

  • 近々衆議員選挙がありますね。憲法解釈も安倍政権の重要課題の一つですし、改めてこの本は読み直されるべき本です。戦後60年の節目、小泉政権の時も同様に憲法解釈に関する議論があったこと、そこから今日に至る議論の進展を問い直す意味でも。

    とは言え、私自身、先程中沢新一・波多野一郎『イカの哲学』を先に読みブクログレビューした後、そういえば……と思い本棚を整理してたらあったので読んだという話(笑)『イカの哲学』を理解する意味でも、こっちを先に読んでおけば良かったですね。『イカの哲学』を先にブクログでレビューした時は、都合が良いように波多野一郎を持ち出しただけじゃないかと中沢氏を批判しましたが、『憲法9条を世界遺産に』からの話の繋がりとしての平和論であったことも納得です。こっちには社会主義、共産主義に関する言及もあります。

    とは言え、私自身の立場としては、「憲法9条を世界遺産に!」という主張、平和憲法は特異な存在として日本人に君臨し、国家が守る法としては確かに無茶ぶりであるでもだからこそ守るべき!という論には、サムい感じを受けます。

    もうすぐ戦後70年を迎える今や問題なのは、平和憲法を守るという体裁のもと隠されたり、解決が困難になったり、実生活にまで不安の影を落としつつもどうすることも出来なかったりで、山積に山積しきった問題。すなわち、主権国家としての日本の立場なんだと思います。おそらく、戦後60年の段階ではまだ「余裕を持って、お笑いにしつつ」扱えたのだと思います。今は誰もが内心「笑ってる場合じゃねーよ!」という切羽詰まった、焦った雰囲気を感じます。

    しかし、改憲の立場や安倍政権が、この二人ほど「芸のある」やり方をしたとは思えません。テレビの視聴者に向かって息を巻き議論の熱を上げた太田氏と違い、特定秘密保護法という姑息な手段を使いました。殺されるのも覚悟で話し、討論せず、隠しました。このことは忘れるべきではない。

    かと言って、護憲側にも、太田氏程の芸はない。この本を読んでいてあっちに行きこっちに行きの議論ではありましたが、本の中身はいたって筋が通っている。中沢氏の論調のせいか若干ふわっとはしましたが、それが彼らの持っている憲法9条に対する覚悟を少しも揺るがせるわけではないとは思います。

    さて、今お二人はどういう心境で安倍政権を眺めているのか?

  • 日本国憲法第9条と宮沢賢治との関係が私にとっては初めてのことで驚いたが、宮沢賢治のことを一面的にしか捉えられていなかった私にとってはいい示唆を与えてもらったなと素直に感じているところである。

    太田光さんがおっしゃった
    「この憲法は、アメリカによって押しつけられたもので、日本人自身のものではないというけれど、僕はそう思わない。この憲法は、敗戦後の日本人が自ら選んだ思想であり、生き方なんだと思います」(p56)
    というコトバに、全てが集約されているんじゃないかなと。

    2016.09.06再読

  • 【超速読】テリー・ギリアムの件で対談者が得意になって話してるのは、正直かなり「痛い」と思います。というのも太田さんが愚直なまでに個別の信条にこだわることは、彼の表現(お笑い)を受け手が柔軟に解釈できなくなることにつながるわけで、淀川さんによる「シンドラーのリスト」批判の本質とよく似ている。今でいえば何とか和義?、坂本龍一、松本人志や私生活を丸裸にされる芸人さんのように、発信者の努力の跡や知力の限界がちらつくと、表現したものが独立できなくなる。あの総理になったら、の番組もひどかったですね(^q^)

  • 贈与とは愛なんだ、という中沢新一の話が印象に残った。

    以前、『ケルトの宗教 ドルイディズム』の中にある中沢新一の文章を読み、この人はすごい、と思った。
    それからゲンロンカフェで行われた東浩紀と中沢新一の対談を聴いて、中沢新一にさらに興味を持った。

    たまたま家にあったこの本を手に取ったのには、そういいう経緯がある。

    僕は次に、中沢新一の『カイエ・ソバージュⅠ 人類最古の哲学』を読んだ。
    これらかも、彼の本を読むつもりだ。

    中沢新一は、今の僕が求めている何かを与えてくれるような気がする。

  • するべきだね。こんな時代にこそ。

  • タイトルの意味が初めはピンとこなかった。でも読むと素直に納得。
    世界遺産にという意味は、それが歴史の流れの中のある一瞬に奇跡的に生まれて、それ以外の状況では実現しえない、壊してしまったら取り返しがつかない”珍品”だから。

    二人の考え方は徹して中道を行く。
    「誰かを憎んだり、傷ついたりすることはすごく人間的なことなんだけれど、そこを否定して、逃げようとしているんじゃないか」「戦争や、愛情から発生するネガティブな感情を否定することは、人間そのものを否定すること」
    憎しみが愛情から生まれるのだとしたら、単純に悪を決めつけ切り捨てることはできない。

    9条は他のどこの国にもない理想を掲げているから、現実の中で当然矛盾を抱えている。
    それでも、「普通」になるより「理想」を掲げてていようとする冒険心(太田の感じる”恍惚”)は、理念は違えど、戦前の日本人が感じていたものと通じている。
    狂気と毒を隠しながら、美しい姿を見せる桜。
    それは日本人独特の心なのかもしれない。


    2014.7.1、安倍政権は9条の憲法解釈を変更。
    思惑はわからないけど、9条の明白な文章はまだそのままある。
    簡単にはぶれない軸があるからこそ、あまりラディカルにならず、たぶんうまく立ち回るだろう。

  • 憲法九条を世界遺産に

    精神土壌の、無思考、思考停止、
    素直に自分が思ってることを表現すると世の中からバッシング抹殺されかねない、いじめ、
    西欧の合理主義やモダニズム→田中智学→危機的な日本の新しい方向性を示そうとした、
    虐げられているもの弱いもの声を出さないものの声を聞き取らなければならない25

    作者の意図と違うところで感動が生まれることの幅は芸術作品の力である
    同じ場所にいても違う世界をみている、
    誤解を伴ったディスコミュニケーションで世界は成り立って豊かになっている、
    宗教法国家による単一の意味付けは世界との間に齟齬を生じる、
    戦争の大きな概念正義こそが結果として人を

    宮沢賢治
    ディスコミュニケーションを乗り越えたい、
    宗教的情熱に自分の理想を見いだしたい、
    戦前の戦争的思考と戦後の平和的思考をつなぐ存在、
    愛が深く擬人化
    ●なめとこ山の熊、●月夜のでんしんばしら、●シグナルとシグナス、レーニンによるシベリアの電子化、スターリニズム、ハイデッガーの哲学

    愛は未熟で危うい、
    見えないふり忘れたふりふたをして隠し問題がみえなくなってる
    ネオテニー(幼形成熟)、
    諸刃や矛盾を受け入れる、
    ●ジョン・ダワー敗北を抱き締めて岩波書店

    宮沢賢治の作った童話、アメリカ主導の日本国憲法
    ドンキホーテ、桜、世界遺産、修道院


    突然変異、珍品、無垢、奇蹟的な瞬間の輝きと共に世界に出たもの、無邪気な理想論、
    仏教のように合作だからこそ価値がある、イロコイ連邦憲章、フリーメーソン
    ●星川淳、魂の民主主義、築地書館
    物事の浮かぶ海の上で、波が立っていることばかりに気を取られていると、その底流で動いているものが見えなくなってしまう
    厳しい条件のなかで理想や夢を実現させようとしている場所があるというだけで世界の姿は変わる
    ●ロッセリーニ神の道化師フランチェスコ
    アボリジニのドリームタイム
    ドンキホーテとサンチョパンサ


    かつて日本人が表現していた死
    美しい散り際、戦の象徴、
    狂気も毒もその美しさのなかに含んでいてその表現はかくしている
    恍惚、冒険心


    言っていることは鋭いが一般には伝わらない。
    正義を信じる美しい武士道精神と、その危うさ茶化す落語文化
    武士、伏し、職人、自分の命に執着しない、
    愛嬌、懐の深さをもつ落語、笑いのめした人たちの碑をたてる
    ●安楽庵策伝の醒睡笑せいすいしょう



    不戦ではなく非戦
    精神としての平和主義には伝統がある、一万年規模
    世界遺産は、壊してしまうかもしれない自分たちの愚かさを知るためのもの
    神の子イエスと神社は落書きされるお笑いの対象にされる、手をつけてはいけない場所との区別、見極め
    九条を抱えていることで、今自分が信じている正義は違うかもしれないと自分を疑ってみる、矛盾をはらむことで自分自身を疑い迷い考え続けるヒントになる
    環太平洋の平和思想の最高表現、懐が深い
    平和を維持するのは殴らない立場でケンカする人間
    テロに屈するな→戦争の論理発動
    転向、吉本隆明
    川端康成
    インテリの言葉は皮膚感覚で伝わってこない、理解させる芸がない、
    平和憲法を守る覚悟、
    軍隊をもっても戦争なんてできないしむしろ巻き込まれていく
    ★軍隊をもたない価値を守るには、下手をすれば殺される下手をすれば殺す覚悟や犠牲を必要
    憲法はあくまで国のコンスティチューション、国の制約と個人の問題は別
    感動は善悪を超越したところで起こる
    日本国憲法は政治と芸術の合作
    感受性や想像力がもっと鋭くないと理想から離れていく
    ●藤田嗣治の戦争画
    いまいる人といると年を取り、死んだ者とともにいようとし対話し蘇らせる努力は生命の蘇りを感じる
    ●ミラン・クンデラの不滅、集英社文庫、菅野昭正訳
    SMAPのトライアングル
    平和を表現することがいかに難しいか

    九条は国家の免疫機構解除、
    母体が子供を慈しみ育てるように、神話が人間と動物とのコミュニケーションの遮断を思考で乗り切るらせるように

  • 憲法についての対談集ですが、引用したい部分がたくさんあります。中沢はともかく、太田光って頭いいなあ。見直した。九条ってのはそのまま守ったら侵略されちゃうような「不可能な理想」だから、世界で唯一のもの。だから、理想を何とか守るために「自衛隊」みたいな拡大解釈が必要になる。世界中がこの憲法を持てば、人間社会のレベルが一段上がる可能性を秘めたこのユニークな憲法を捨てて「普通の」憲法にしちゃうってのはまずいでしょ、っていうのが骨子。確かに世界遺産は「他で代替出来ない貴重なもの」なんだから、平和憲法もその一つ、っていうのはなるほどで、この提案をした太田はすごい。あと、九条があるから、日本人は憲法や国際紛争の意味について語ることが多いっていうのもその通り。絶賛お薦め。

  • 爆笑問題の太田光と宗教学者の中沢新一が、憲法九条をテーマに語り合った本です。

    とにかくタイトルの秀逸さがすべてではないでしょうか。この「憲法九条を世界遺産に」というアイディアは、太田がジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』を読んで、日本国憲法がたいへんな偶然の中から生まれてきたものだという思いに打たれたことに基づいているとのことです。中沢も、こうした太田の発想のユニークさに深い理解を示しつつ、平和憲法を守れという護憲派の人たちも、ドン・キホーテのような理想を掲げる日本がそれでも戦後を着実に歩んでこれたのは、なかなかに賢いサンチョ・パンサが付き従っていたからだということを忘れてはならないと言います。

    そして2人の議論は、理想と現実の限りなく広い振幅の間に引き裂かれながら立ち続けることの意義へと移って行きます。

    非現実的だという批判をあらかじめ封殺した上で成り立っている議論だという気もしますが、価値あるものに賭けようとする2人の倫理性に感動を覚えるのも確かです。

  • これは、本気で考えていないとできないほど、レベルの高い対談。
    今一度、憲法第九条を見直す機会を持ちたい。

  • 現役の慶応SFC生お嬢様芸人、たかまつななが、芸人を志すきっかけとなった本。次は、談志の落語とSMAPのトライアングルを聞かなきゃ。

  • 実に、日本国憲法とは、一瞬の奇跡であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇跡の合作だった。しかし今、特に九条は次第に輝きを奪われつつあるように見える。この奇跡をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。
    芸でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢。
    宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

    中沢)宮沢賢治はディスコミュニケーションを乗り越えたいと思っていた。
      他人の苦しみが自分の苦しみである状態を造りあげたいと思っていた。
      世界を一つにするという田中智学の危険な政治思想に共感していった。
    太田)宮沢賢治の抱えていた矛盾とは何だろう。
      彼の作品には正義や愛があふれているけれど、
      正義こそが結果として人を殺す思想にもつながっていく。

    ● 10人集まれば10個の正義があり、相反する正義は喧嘩する。

    中沢)自分の中に矛盾したものを、平気で受け入れていく。
      それに従って現実の世界でも生きていこうとすると、 
      しばしば未熟だといわれます。
    太田)最後に必要なのは、理想を追う恍惚の中で、
      賢治も智学も持てなかったもの、自分を否定する勇気だ。

    ● 答に迷い続ける事も大事かも。見付けた答を自ら疑う姿勢も大事。

    中沢)憲法九条は修道院みたいなものなんですね。
      現実を考えればとても無理じゃないかと思える理想や夢を、
      まがりなりにも実現させてみましょう、という人たちがいると、
      その周りの社会まで変わってきます。

    ● ”リンカーンにも敵は大勢いたわ。正義の人に敵は付き物よ。でも彼らのようなバカ正直が頑張って世の中をよくしてきたわ。信じるならもっと大きなものを信じなさい。“

    太田)憲法九条を持ち続けている日本は、ドン・キホーテのように滑稽で
      しっちゃかめっちゃかに見えるかもしれないけど面白い。
      正気を失ってる時の方が元気でエネルギーがあるし絶対面白い世界
    中沢)ドン・ホーテのそばに
      「ミサイル撃ち込まれたらどうするんですか、旦那」
      と言い続けるサンチョ・パンサがいる事がまた大事な事なんですね。
      日本がなかなか賢いサンチョ・パンサと一緒に歩んできたという事実を忘れてはいけません。

    ● 日本国憲法はドンキ・ホーテとサンチョ・パンサの二人組で60年守ってきた稀有な存在。

    中沢)国家が国家である自分とは矛盾する原理を据えているわけで、
      日本国憲法が世界遺産に指定されるに値するポイントですね。
      現代の価値観ではあり得ない場所を持続しようというのが世界遺産の考えでしょう。
    太田)人間とは愚かなものだから、これだけは守ることに決めておこうというのが、世界遺産の精神ですよね。
    中沢)日本国憲法は矛盾をはらんでいますから、護憲、改憲と迷って当然です。
    太田)矛盾を正せば迷わなくなるんでしょうけど、迷わなくなるほうが危ないと思う。

    ● 憲法改正したら日本を、家族を守れるのか?
    改憲派は言う。
    「彼女がレイプされても黙ってみているのか!」
    じゃ、なにかい?
    どっかの国の兵隊がパンツ脱いでわんさか押し寄せるってのかい?
    レイプや殺人が目的で戦争仕掛ける国なんてあり得ない。
    もちろん個人レベルではそんなの徹底的に叩きのめすに決まってる。
    そもそも個人と国を同じレベルで語ることが間違っている。
    戦争は政治の最後の表現手段で、本来国益を守るのは外交だ。

    戦争しないっていう国に戦争しかけるのは国際世論を無視する相当な決断が必要になる。
    でも戦争するって国になったら、戦争の可能性が今以上に高まるのは間違いない。
    いずれにしても改憲派も護憲派も覚悟が必要だ。
    戦地で死ぬか、座して死を待つか、最悪の事態の想定だ。
    きっと政治指導者と官僚は戦地で死なない。
    戦地で戦うのはそれ以外の国民だからだ。
    国のために死ぬ事と家族のために死ぬ事は全く意味が異なる。
    多くの人は、家族のためには死ねても他人のためには死ねない。と思う。
    そもそも外交のあり方を議論せず、憲法改正を議論するのは乱暴だ
    まずは戦争にならないような国際社会での日本の役割、立ち居振る舞いを国民全体で議論すべきだ。

    中沢)日本国憲法が「世界遺産」に推薦されてしかるべき理由は、
      どこの国の憲法にもない、他者たちを同胞として受け入れようという、
      近代的政治思想では尋常ならざる原理をセットしている点にある。
      対談を通して世界遺産的な憲法を戴く事の利益と不利益を考えた。
      それがどのような結論であっても、他人に押し付けようと思わない。
      しかし、この国のユニークさだけは、明瞭に示す事ができたと思う。

    日本国憲法第九条
    日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
    国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
    国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
    ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
    国の交戦権は、これを認めない。

  • 本当に日本のことを考えている人でないと辿り着けなそうな答えである気がした。
    一歩間違えると誤った解釈をされかねない微妙な問題だからか、比喩表現や話の展開にかなり気を遣っている印象。それゆえ論旨が分かりづらくなっている感じはする。
    =つまり、あんまり印象には残らない。

  • 小学校で憲法9条のことを知ったとき、戦争をしない国に生まれて良かったなぁとしみじみ安堵したのを思い出した。はだしのゲンもおこりじぞうも読んだ事あったので。

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著者プロフィール

一九六五年埼玉県生まれ。八八年に田中裕二と「爆笑問題」を結成。二〇一〇年初めての小説『マボロシの鳥』を上梓。そのほかの著書に『違和感』『芸人人語』『笑って人類!』などがある。

「2023年 『文明の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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