ヘルプ 上 心がつなぐストーリー (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606416

作品紹介・あらすじ

1962年、大学を終えて故郷に戻ったスキーターは、改めて南部の差別的風土に衝撃を受ける。同級生はほとんど主婦になったが、家事・育児を酷い待遇で雇ったヘルプ=黒人メイドに任せきり。作家志望のスキーターの頭に探していたテーマが閃いた。ヘルプを取材し差別問題を浮彫りにするのだ。しかし、白人と個人的に話すのさえ命がけだった時代ヘルプ達は頑なで…。全米1130万部のミリオンセラー。

感想・レビュー・書評

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  • あらすじ(hontoさんより)1962年、大学を終えて故郷に戻ったスキーターは、改めて南部の差別的風土に衝撃を受ける。同級生はほとんど主婦になったが、家事・育児を酷い待遇で雇ったヘルプ=黒人メイドに任せきり。作家志望のスキーターの頭に探していたテーマが閃いた。ヘルプを取材し差別問題を浮彫りにするのだ。しかし、白人と個人的に話すのさえ命がけだった時代ヘルプ達は頑なで…。全米1130万部のミリオンセラー。(https://honto.jp/netstore/pd-book_03516207.html

    映画を先に観て、良かったので原作も…とは思ってたのだけど、だいぶ遅くなってしまった!
    ので、どこまでが映画であってどこからがなかったか詳細には覚えてない…
    でも映画は時間制限的に仕方がないのだけど、省略されてる細やかな設定がものすごく大事だったり、すごく根深い問題に光を当てていたりするので、やっぱり本も読むのが正解だなと思った。

    映画ではわかりやすくするために、黒人女性(善)vs 白人女性(悪)、黒人女性を助ける白人女性ヒロインのエマストーン!という構図になってた感じがあるけど、本ではもっとその対立構造(対立と呼んでいいのかもわからん)が曖昧というか複雑というか…そして主人公が決してスキーターだけではない。内省的で賢いエイビリーンと、勇敢なミニー。この3人が同等に描かれている感じがした。特にエイビリーンに関しては、スキーターよりも存在感があった気がする。物語の終わりも彼女の視点で締め括られるし。映画ではどうやったかな…

    映画では伝えきれんかったヘルプと白人のレディたちの複雑な関係性が描かれててとても面白かった。南部出身の白人作家が「黒人の声」を書くって相当なプレッシャーというか批判もあったかもしれんけど、その時代を知れる本としてとても読みやすいし素敵だと思った。これはフィクションだけど、実在したヘルプの声って残ってるんやろか。その辺りも勉強したい。

    以下は心に残った言葉


    「あたしも前はそう信じてた。でももう信じない。それ(境界線)はあたしたちの頭の中にしかないんだよ。ミス・ヒリーみたいな人は、いつもあたしたちにそれがそこにあると信じこませようとしてる。でも本当にはないんだ」

    「そんな境界線なんか本当はないからね。あるのはリロイの頭の中にだけ。白人と黒人のあいだの線だって、本当はないんだ。誰かがずっと昔にこしらえたんだよ。貧乏白人と上流のご婦人方のあいだの線も同じことさ」(p.131)

    「あたしが言いたいのは、優しさに境界線はないってことだけさ」(p.132)

    お互いただの人間どうし。わたしたちを分け隔てるほどの違いなどない。あると思いこんでいた、大きな違いなどは。(p.308)

    エイビリーンがミニーに言った言葉(p.131-132)と、スキーターの気づき(p.308)。本当に全ての差別問題の本質がこの言葉に表されてると思う。頭の中にしかないこと。私が好きな映画『ジョジョラビット』でもそんなシーンがありましたな。

    南部出身の作家にとって、分離政策下の不平等な社会における黒人と白人間の愛情ほど扱いにくいテーマはないだろう。社会がそこに基礎をおく不誠実さゆえに、あらゆる感情が疑わしく思われ、二人の人間のあいだに流れるのが真摯な感情なのか、憐れみなのか、実利主義なのかの区別がつけられない。ーハウエル・レインズ『グレイディの贈り物』より(p.360)

    あとがきのとこに引用されてた。これほんとにそうなんだろうな。
    そもそもの大枠?が不平等なシステムで、ヘルプと白人雇い主(子供も含め)はその上での関係性だから、個人間でどれだけ愛のある関係を築けたとしても、それがいわゆる「本物」の愛なのかお互い信じたくても信じられなさそう。それがまたとても辛いな…

    以下は内容に触れます(ネタバレ)



    ・命懸けの語り
    白人であるスキーターに黒人女性たちが真実を語ることはもちろん、そもそも会って話すということ自体がこんなにも危険で命懸けやったんやなと。映画ではここまでシリアスに感じられてなかったかも(見送りのところか明るい外で会ってなかったっけ?)。本人はもちろん、愛する家族にまでその影響が出てしまうかもしれない、職に就けなくなるどころか、投獄・死刑の可能性も十分に理解した上で、スキーターを信じて、起こるかもしれないし、起こらないかもしれない変化を求めて、口を開いた彼女たちの勇気に感動する。
    特にエイビリーンは息子を酷い形で失って静かに怒りを抱えてたし、もう失うものはないからこそ、第一歩目を踏み出せたのかもな…
    スキーターもタブーに触れまくることで、関わっていることをひた隠しにしないといけない黒人女性たちを除けば完全に孤立無援状態だったし、友達と恋人と、自分の居場所を失うことになっても、最後までやり遂げた勇気がすごい。

    ・コンスタンティンとワンドロップルール
    コンスタンティンが白人の父を持ってて、娘が白かったという設定、映画ではなかった気がする。ジャクソンで黒人が白い娘を育てることの難しさ。見た目では判断がつかなくても、黒人の血が入っているならば黒人としての待遇を受けるという理不尽さ。コンスタンティンの娘の存在によって「境界線は本当はない」っていうエイビリーンの言葉がここでまた生きてくる。

    ワンドロップルール(リベラルアーツガイドさんより)
    https://liberal-arts-guide.com/one-drop-rule/

    ・ミニーと家庭内暴力
    勇敢で白人のレディたちにも果敢に立ち向かうミニーも夫のリロイの暴力に囚われている設定が辛い。酒癖が悪くて、暴力をふるう夫でも、彼がいなくなれば一人で子供を養えるはずもなく、逃げることもできない状況。黒人であること、女性であることが社会的にどれほど弱い立場であったかを再確認させられた。『カラーパープル』思い出した。

  • 映画化もされたベストセラー本。大変読み応えがあり、面白かったです。地元ミシシッピ州ジャクソンを離れ大学に通っていた作家志望の女性スキーターと、スキーターの高校時代の友達(地元を出ずに結婚・出産)、それぞれの家族の元で働いている黒人女性ヘルプ(メイドさん)を巡る物語です。主人公のスキーターは、幸せとはズバリ家柄の良い白人男性に求められて結婚し家庭を築きヘルプを雇う、というような周囲の価値観になじめず、母親との確執、世代間のギャップ、地元ジャクソンに対して感じる愛着と閉鎖的な価値観に対する違和感、違和感をまったく覚えることなく良かれと思って差別し続ける人々への不信感などに翻弄され、変わり者と思われても自分の心に正直に生きようとする不器用者。理想を追い求め紹介者もなしに一流出版社に履歴書を送り、返答を待つような世間知らずですが、かつて自分もそうだった、という編集者の目に止まり、個人的なアドバイス、と断られた上でとにかくまずは書く仕事を見つけなさい、そして書きたいテーマを見つけなさい、と言われて地元の新聞社のお掃除相談コラムの仕事につきます。自分で掃除したことなどない白人女性のスキーターは、高校時代の友人のひとりエリザベスのヘルプであるエイビリーンに頼んで掃除のコツを教えてもらいながら、なんとかかんとかコラムの仕事をこなしてゆきます。スキーターは自分を育ててくれた大好きだったヘルプ、コンスタンティンの消息を知りたいのですが、どうやらスキーターの母親との間に何かあったらしく、くわしい事情がわかりません。エイビリーンならば、、、と相談してみても、事情を知っていることは認めても、白人のレディに自分からは言えない、自分が話すべき事柄ではない、と、断られてしまいます。スキーターは正直だけれども必ずしもいつも聡明なわけでもないので、無意識のうちに自分も差別的なふるまいや言動をしていたり、人々や物事を見たままに捉えていたりもするのですが、エイビリーンや周囲の人に助けられながら、だんだんと意識が開かれてゆきます。そして自分が本当に興味があって書きたいテーマは、ヘルプの側から見たジャクソンのありのままである、それはタブーに触れることだけれど、どうしてもそのテーマをインタビュー本としてまとめたいと思うようになりエイビリーンに打ち明けるのですが、、、。お話はスキーターと、スキーターの友人エリザベスのヘルプであるエイビリーン、エイビリーンの親友で口の悪いミニーの3人の目線から順番に語られるので、同じことが違う立場の人からしたらどういう風に捉えられるのか、ということがわかって、とても読みやすいです。映画も見てみたいと思いました。いろいろな切り口があるので、繰り返し読むと、そのたびに違った感想を持ちそうな本です。

  • 地域で力を持つ奥様達が、家政婦として雇っている黒人女性に自宅のトイレを使わせるべきではない、少なくとも家政婦用、つまり黒人専用トイレを作るか、屋外にある黒人用のトイレを使わせるべきだとカードをしながらおしゃべりしている。
    始まってそうそう心身を凍り付かせるような話だけど、50年代から60年代のアメリカ南部は本当にこんな場所だったんだろうな…

    小説の時代はローザ・パークスからはじまったバスボイコット運動で公共の乗り物内での分離は違憲という結果が出た直後くらい。バスで黒人が白人に席を譲らなくてよくなっても、うっかり白人専用のトイレを使った黒人は襲われて、投票所へ投票へ行った黒人は車を燃やされる。そんな時代だった。

    息子の三年目の命日を迎えるエイビリーンの描写を読みながら、今年の兄の命日には兄のことを想い出さなかったことに気付いた。日記もないし買物もしていないので、本当に何をしていたかわからない。ブクログの記録は残っている。たぶん本を読んで料理して部屋を掃除していた。たぶん12年ぶりの何の葛藤もない12月28日だった。落ち込んで体が重く、何もする気力がわかなかったのは、兄の自殺のせいか、ただたんに月日が無為に過ぎていることへの恐怖か。その両方かもしれない。

    黒人男性は家庭で黒人女性に暴力を振るって、白人女性は黒人男性と黒人女性の生活を左右できる特権を持っていて、白人男性は白人女性と黒人男性と黒人女性の生殺与奪権を握っている。
    人種分離政策に反対する姿勢を見せただけで告発され逮捕された人のニュースが毎日のように新聞に載る時代の、社会的に保障された病的な差別の関係性がとてもわかりやすく描かれている。

    未婚の女性が一人暮らしをしたり、結婚に興味なかったりすると、その人には何か欠陥があるのではないかと思われるなんて、ぞっとする。
    その欠陥というのは、具体的に言うと落ちこぼれということ。落ちこぼれだと思われるのはまだましなほう。場合によってはレズビアンだと思われて、娘思いの母親は性的嗜好矯正用のお茶を娘に飲ませる。性的嗜好矯正用のお茶って何それ?

    ミス・シーリアがメイドを雇ってることすら話せないくらいだから、ミスター・ジョニーはとんでもないモンスターなのかと思っていたのに、いざ登場してみると善人にしか見えない。妻のこともちゃんと愛してる。しかも黒人のメイドともきちんと向きあって気さくに話をする。この時代の白人男性としては変人の部類かもしれないけど。一体この夫婦は何が問題なんだろう。

    ミスKKKが牛耳っている同盟は胸糞悪い。主人公はどうしてこんなくだらない同盟にいつまでもかかずらっているの?

    メドガー・エヴァーズがKKKに暗殺された事件が起きた。
    1963年6月12日
    BLMが起きた時、黒人はそれほど警察に殺されていないと統計の数字を持ち出して説明しようとする人はいたし、ある意味でそれは正しい面もあるんだろうけど、問題は黒人であるというだけでいつ殺されるかわからない恐怖が黒人の中にまだ沁み込んでいて、その恐怖にはちゃんと根拠があるということなんだ。

    ミニーはミス・ヒリーに一体何をしたの?チョコレートパイに何かしたようだけど。
    上巻のラストでミス・シーリアの恐怖の原因がわかった。すごくかわいそうだ。下巻を早く読みたい。

    別の本を読んでた時に気づいたけど、白人の子が黒人を差別することを覚えるようになると別の家に移るというエイビリーンは、ネルソン・マンデラの「生まれた時から肌の色や生まれた国、宗教で他人を差別する人はいない。」を思い起こさせるものだ。

  • 4.21/332
    内容(「BOOK」データベースより)
    『1962年、大学を終えて故郷に戻ったスキーターは、改めて南部の差別的風土に衝撃を受ける。同級生はほとんど主婦になったが、家事・育児を酷い待遇で雇ったヘルプ=黒人メイドに任せきり。作家志望のスキーターの頭に探していたテーマが閃いた。ヘルプを取材し差別問題を浮彫りにするのだ。しかし、白人と個人的に話すのさえ命がけだった時代ヘルプ達は頑なで…。全米1130万部のミリオンセラー。』

    『ゴールデン・グローブ賞受賞映画の原作。
    1960年代、米南部の差別的風土に衝撃を受けたジャーナリスト志望のスキーターは、ヘルプと呼ばれる黒人メイドのインタビュー集の出版を思い立つ。が、彼女たちは頑なで…。全米ミリオンセラー!』(「集英社」サイトより▽)
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-760641-6&mode=1

    原書名:『The Help』
    著者:キャスリン・ストケット (Kathryn Stockett)
    訳者:栗原 百代
    出版社 ‏: ‎集英社
    ペーパーバック ‏: ‎400ページ(上巻)

  • レビューは下巻で。

  • 読み応えがある。
    海外小説だけどよみやすく、黒人に対する偏見差別について学べるだけではなく、人間のことを描いた本だなと。周りにこんな人いるよね、こんな恋愛あるよね、というかんじ。
    読んでから時間はたったけど、いまでもスキーターやヒリーたちのことを覚えてる。

  • 恵泉女学園に見学に行ったとき図書館が素晴らしく、その中でオススメの本だった。早速購入して読んだら、うん、良かった。

  • 登場人物一人ひとりの魅力が出ていて面白い。
    続きぐ気になる。
    どうか、問題なく本が出版できますように。
    そして、彼女たちや子供たちの未来が明るくHAPPYになりますように…。
    下巻に続く。

  • 【配置場所】特集コーナー【請求記号】933.7||S||上
    【資料ID】91120540

  • 第156回 舞台はアメリカ、ディープサウス。公民権運動が盛り上がりを見せた時代のことです...(2012.9.21)
     
    舞台はアメリカ、ディープサウス。
    公民権運動が盛り上がりを見せた時代のことです。

    タイトルの「ヘルプ」は、家事や育児をする黒人のメイドのことを指していますが、違った意味にもとれます。
    重いテーマを扱った小説ながら、語りの面白さでどんどん読みすすめられますし、痛快さを感じる場面も。

    そして、ハッピーエンドとは言えなくても、希望が感じられる良い終わり方でした。

    もちろん映画のDVDも入る予定です。
    ぜひ見てくださいね。

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