廃墟建築士

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087712735

感想・レビュー・書評

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  • 装丁とタイトルに目を惹かれて図書館でかりる。
    建物を題材にした「七階闘争」、「廃墟建築士」、「図書館」、「蔵守」の4編の短編が収録されている。

    全体的に漂う喪失感と透明感が印象的。
    文章も適度に簡潔で読んでいて気持ち良い。
    廃墟が好きなので廃墟建築士はワクワクしながら読んだ。
    ないのは分かっているけれど、連鎖廃墟を見たい!と思った。

    日常の中にふいにあらわれる不思議な出来事を、登場人物たちは当然のごとく受け入れる。ファンタジーかと思ったけどこの奇妙な日常感は、世にも奇妙な物語っぽいと思った。
    この作者については、となり町戦争を読みかけて「思ってたのと違うな」と投げ出したのだが、あれもきっと読んでみると面白いんだろうな。

  • タイトルに惹かれて読みました。短編4本の構成。それぞれが建物にまつわる物語で、現実から、ちょっとずれたファンタジーのような不条理の正解のような…読んでいてふしぎな気分になります。

  • 廃墟って、どうも幽霊とかそっちのホラーを想像してしまう。
    けれど、この話の廃墟はわざわざ設計して造ってるせいか、なんだが透き通った感じを受けた。

  • 三崎亜記の独特な世界観が凝縮されています。
    個性豊かな短編ドラマみたいな感じに読み進められます。

    最初の「七階闘争」は少し切ない感じ。
    はじめは七階がなくなることを馬鹿らしくかいているのかな?とか、そういう不思議な人の気持ちを書いているっていうのか。
    けれども、最後は何か「・・・うん。」って思った。
    (分かりにくい感想になってしまった(笑))

    次の「廃墟建築士」は職人って感じの仕事ができる人の、建物への思いがドキュメンタリーチックでもあり、建物に対する気持ちの深さが職人の物語とともに伝わってきます。

    3つめの「図書館」は皆さんが言うように「バスジャック」をお読みになると更に分かりやすいと思います。
    人の貪欲さからの失敗が、「あぁ、やっちゃった。」って思う。

    最後の「蔵守」は正直分かりにくい。
    わかりにくいですが、受け継ぐっていう大切さが、読み終わった時に伝わります。
    仕事とか使命ってのに最初はさほど決意がなくても、中身を知ることで自分と受け継いだものの重要性がわかるんだと思います。

    どのお話もしっとりした感じで、レトロな建物の中で雰囲気読みすると更に面白みが増す気がします。

  • 相変わらずの三崎節、というか世界観。
    非日常的な奇妙な世界が、ごく日常として存在する。
    描かれている内容は不思議だけど、中の人たちにとっては何の違和感もなく
    ごく普通に生活している…
    そんな世界の出来事を集めた短編集。
    「となり町戦争」とか「バスジャック」なんかと比べて不思議感が強い気がする。
    説明的な文章が少ない、のかな?

    ちなみに『図書館』を読んでてなんだか既視感が…と思ったら、動物園の人か!
    流れで「バスジャック」も読み返してみた。
    こういう世界観は好きだし、面白いんだけどまとめて読むとちょっとおなかいっぱい(笑)
    でも時々読みたくなる三崎ワールド。

  • ●廃墟に魅せられ、廃墟建築士として生きてきた私。この国の廃墟文化の向上に努めてきたが、ある日「偽装廃墟」が問題になり…「廃墟建築士」●巷でおこる事件は七階で起こることが多いため、七階を撤去しようという決議が市議会で出された。マンションの七階に住む僕は、同僚の並川さんに誘われて反対運動に参加することになったが…「七階闘争」●会社から派遣されて、図書館でしばらく働くことになった私。本が“野性”に戻った姿を皆に見せるのが今回の業務だった。上手くいったかに見えたが、思わぬ事態が起こり…「図書館」●蔵も蔵守も待ち続けていた。自分たちの仕事を引き継ぐ後継者がいつかやってくることを。いつか現れるだろう略奪者との戦いを。…「蔵守」
    ちょっと不思議な建物で起こる、ちょっと奇妙な事件たち。三崎ワールドの魅力あふれる最新作品集。

    ------------------------
    不思議な世界観のお話。現代をベースに、ファンタジー的世界観を織り込んでいる。
    たまによく分からない設定があるけれど、それが本を読む手を止めることにはならない。この世界観を満喫して本を読むことが出来る。
    この人の紡ぐ物語は好きだなあ。

  • 好きな感じ。眉村派だ。

  • 4つの短編?から成る作品。

    廃墟が建築物として、廃墟を建築するために存在する廃墟建築士のお話。
    7階で起こる事件が多いため、7階を街から撤去することが決まったお話。
    図書館の本は実は夜、本来の「野生」の姿を見せるお話…

    不思議ワールドはいつもの三崎亜記作品ならでは。
    ただ、今回は「建物」という縛りがあるところが特徴。

    4編というのが中途半端な印象だった。
    もう少しサクッと読みたかったなー。

  • 良い意味で詐偽にあった気分。
    真面目な文体で突飛なことを書いている感じ。おかしなことがさも当然として浸透している違和感とズレで戸惑いはするもののなぜか最後は納得してちょっと感動してしまう短編4つ。


    「七階戦争」

    好きな子に今度楽しいイベントがあるんだよと誘われた主人公がホイホイついて行くと宗教の集会で危ないとは思いつつも気になるその子との距離が縮んだ気がして繰り返し集会に参加する内に染まってしまって今では立派な信者です、みたいな感じ。


    「廃墟建築士」

    廃墟となるべくして設計、建造される廃墟建築というものが文化的だといわれ存在する世界の話。廃墟を建築する、人は死ぬために生きている、この本を読むと建物がまるで生き物のようだと思う。廃墟所有率や廃墟の歴史、国民への浸透度、法律や制度などなど全てにおいて先進国の中で三流の日本にいる主人公が廃墟に魅せられたきっかけは連鎖廃墟。200年も前から現在に至るまで建造され続けている廃墟。これが実際にあったら少し怖い。


    「図書館」

    ナイトミュージアムでスパイもの。本、図書館は野生に生きていた過去を持っているという設定。伝説の時代、図書館は本を統べるものと呼ばれ本は空を飛び回っていたらしい。すごい。しかし乱獲者から逃れ行きていくため、時の賢帝との血の契約により図書館は視力と、本は図書館と共に地に縛られることと引き替えに絶対の安全と存続とを約束されたとか。すごい。主人公は「夜間図書館開放」のため図書館の調教をする女性。ナイトミュージアムと同様、夜の図書館では本が野生を取り戻して宙を羽ばたく。とっても面白いわけでもないが真面目な文体で書かれているから面白い。


    「倉守」

    意識ある存在として描かれる倉と、倉を守ることそれだけを使命として生きる倉守の独白が交互に書かれてお話が進んでいくお話。語尾の違いに戸惑いつつも読み進め、独白が二人のものだと気付いたのは結構読み進めた後だった。意思疎通が計れずとも第一に強く想うものが一緒である二つの存在が、最後に分かりあえはしない。しかし互いに相手の存在の意味に気付く事が出来るというのはきっと幸せなことなんだろうと思う。
    倉が愛情を知る場面が好き。(倉は意識があるので感情を学習することもできる)ある日突然自分の意識の中に現れた何者かに対する違和感は、敵対から諦めに、諦めから不安に、不安から疑惑にと変化していく。同時に、倉守にも同様のことが起きているのがおもしろい(倉守の場合は倉守見習いの出現)。話の最後に倉は、自分と取って代わろうとする存在だと思っていた自意識の中の存在が実は受け継ぐ存在(=子)だったことを理解し、感じていた違和感の正体に初めて気付く。

    個人的に「廃墟建築士」と「倉守」が好き。

  • 図書館の話が好き。

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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