白ゆき姫殺人事件

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714593

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり湊かなえといえばこの登場人物1人称語り。内容も「告白」さながらのイヤミスぶり。OLが惨殺されて、まず後輩が恋人に話す。その恋人が週刊誌の編集者で、その後同僚、同級生、そして地元の親にまでインタビュー。しかし、ゴシップって本当にやだやだ。些細なことに尾鰭がついて大きくなっていく。そんな日常ありうる恐怖。 しかもこの本、後半は資料集になっていて、SNSでのやり取りや、週刊誌の記事が載ってます。一緒に読んでいくことに気が付かず、読み終わった後に資料を見るという大ボケをかましてしまった・・・

  • 報道は角度を変えると、市民のでばがめ根性だよね。
    城野さんの記事はただの悪口大会。

    容疑者だからと何でも公開されてしまう仕組みに恐ろしくなった。それを平気な顔で見ている私たちは本当に人間なんだろうか。

    容疑者が犯人じゃなかった場合、みんなこんな風に生きていくしかないのか。ズタズタにされたのに。
    人間がにんげんであることが恐ろしい。
    だからこそ、自分が自分を信じて生きていくしかないのね。

  • 最後まで読者の興味を惹きつける運び方は流石です。
    関係者の証言で本文が進められ、巻末に資料としてツイッターや週刊誌の記事等を載せる構成は効果的だと思いました。
    被害者の真実はもう知りようがありません。証言者の言葉は主観的だし、立場も変われば受け取り方も変化するものです。現実社会もそうで、お互い誤解や思い違いをしながら、話し合って解決する場合もあれば、結局分かりあえないままということも多々あります。この本を読みながら、真実は当事者しか知らないのに、間違った情報が面白おかしく興味本位に伝わってしまう怖さをあらためて感じました。
    そして、救いがない話が多くても湊さんの本を また読んでしまうのだろうなぁ、私は。 

  • 世間をにぎわす「しぐれ谷OL殺害事件」・・・巷では「白ゆき姫殺人事件」と呼ばれる事件。
    「白ゆき」という人気の洗顔せっけんを扱う化粧品会社の美人OLが雑木林に連れ込まれ、全身十箇所以上を刺された後、灯油をかけ火を付けられて殺害された。
    事件を取材するのは被害者の後輩の知人である週刊誌記者。
    彼がインタビューを取った内容がそのままこの小説となっている。
    そこから見えてくるのは被害者がものすごい美人だったということ、そして事件の容疑者が彼女と同期の女性だということ、さらに彼女たちの関係性、容疑者の女性の正体・・・。

    こういうのでありがちな、事件の真相から遠いと思われる人間が最初に証言していて、被害者女性は美人で性格も良かった、それに比べて容疑者は平凡なルックスで地味な女性・・・というような事を言っている。
    ああ、多分これだと被害者の人間性がこれから分かるような証言が続くんでしょう・・・と思いきや、そこから続く証言は全て容疑者の女性についてのもの。
    後輩女性、元恋人、学生時代の同級生、地元住民、そして当事者の証言。
    そこから「あれ?」と思ったし、証言から見えてくる被害者女性の真の姿もこの物語にとってはただの前提だったんだ・・・と読んでいて分かった。
    ラスト分かった犯人も最初こうなんでしょう~と思っていたのを見事に逆手に取ったもので、展開もラストも悉く裏切られた。
    でも、そのやり方がさり気なくて小気味いい。
    読み手の予想をほんの少しずつかわした感じが巧い!と思う。

    そして、その勘違い、思い込みこそがこの話で証言している人間たちに共通している事だと気づいた。
    人はそれぞれ、「あの人はこうだ」という自分なりの考えや思いを持っている。
    それが噂を一人歩きさせて、事件を話題性のあるものにしてしまった。
    一度植えつけられたイメージって中々拭えない。
    この物語の被害者は実は二人いるんじゃないか、と思う。

  • 関係者の告白と、つぶやきや週刊誌などの関連資料からなる構成は初めてでおもしろかった。

    その関係者の告白から週刊誌の記事は書かれているのだけど、抜粋して書かれるとこんなに悪意のある本意とは別のものが出来上がるのがびっくりだった。
    世の中のニュースや記事もこうやって成り立ってるのだと思うとちょっと怖い。

    話し自体は盛り上がってきた所であっけなく終わってしまった感じ。

  • とりあえず栞は本文用と資料用に2本入れてほしい。
    斬新な構成と錯綜する証言でクライマックスへの期待大だったのだが、最後は、自分にはメインキャラ崩壊とストーリーの空中分解でしかなかった。

    消化不良。

  • 週刊誌の記事ひとつでその人の印象を決めてしまう人もいれば、実際に会ったことがある人たちそれぞれが違う印象を持つこともある。果たして“本当の”その人って何なのか…そんなものを知ることすらなく決めつけたまま終わってしまう関係のほうが多いのかもしれない、と思うと切ない。

    本作に出てくる赤星も聴き手でいるうちは性格を計り兼ねていたけど、いざマンマローのつぶやきを読むととんでもない最低野郎だということがわかった。典子はその外見から白ゆき姫なんて最初は持ち上げられていたけど、城野の告白以降、性格ブスが発覚。城野だって例外ではない。それぞれ人格に幅があるともいえるが、人間不信になりそうなラインナップだ。

    一番怖いのは自分と反対の意見が多くなるとどっちを信じていいのか不安になること。自分の知ってるあの人に違う側面があるはずだと想像すると、100%その人を“信じる”なんて事はできなくなるのではないだろうか。
    「同級生」や夕子のように自分が知る部分だけを根拠にして、頑なに相手の意見を否定し続けることは果たして正しいことだろうか。
    知らない部分を想像することが良いことなのか悪いことなのか、それすらも正解がないのは恐ろしい。
    『贖罪』のときのように、オチよりも過程により深く考えさせられました。

  • 読了、70点。

    **
    ある非常に美しい女性が十数カ所も刺された上に火を点けられて発見された。
    彼女の同僚から事件の情報を得たレポーターは関係者の取材を進めながら事件の真相を追いかけて行く。
    **

    久々の湊作品。相変わらずいい意味で読み味が鬱々としていて人間の嫌な部分を魅せつけてくれる湊節健在。
    小説の構成としては殆どが取材記録と言う形の関係者の証言を一人称で述べて行くような構成は初期作品を思い起こさせてくれます。
    終盤の紙面構成はなかなかオリジナリティがあるとも言えますが実際に見て楽しいかというとかなり疑問である意味有り触れているとも言える。
    またミステリとしては同じ系統の某作品と比較すると上手さが感じられ難いのがやや残念。
    基本的には湊さんの毒味を楽しむ小説だと思います。

  • 大人気の洗顔石鹸「白ゆき」を作っている化粧品会社で、ひとりの美人OLが殺された。刺殺された上に灯油をかけられて燃やされたのだ。
    犯人は誰なのか・・・事件当日から休み続けている同僚に疑いの目が向けられ、周囲の人間は好き放題に噂する。
    湊かなえらしい構成のミステリーなんだけれど、それほど大きな驚きはなかった。この話の薄気味悪いところは、もしも明日、自分の隣人が殺されて自分が疑われることになったらこうやって周囲の人間は「私」が思っていたのとはまったく違う「私」の像を語りだし、その像が一人歩きしていくのだろうという他者の目の不確かさといい加減さだ。
    巻末にツイッター風のやりとりや物語内に出てくる週刊誌記事、新聞記事が掲載されている。目新しいけれど、読みづらいし、「他者の目」を皮肉さを煽る効果はあるけれどちょっと蛇足な気がしないでもない。

  •  米粉を使った洗顔用石けん「白ゆき」が大ヒットを飛ばして有名となった会社「日の出化粧品」のOLが殺される事件が起こった。被害者の名前は三木典子。彼女は誰もが羨む美貌の持ち主だったのだが、疑惑の目は次第に彼女といつも比べられていたのではないかと思われる同僚女性・城野美姫に向けられていく。『週刊太陽』の記者・赤星雄治が取材して得た証言から見えてくる真実は?

     様々な関係者の証言だけで物語が構成されていくお得意パターン。今回はそれプラス、巻末に記者の赤星雄治が書いたとされる『週刊太陽』の記事や、コミュニティサイト・マンマローでのやりとり、新聞記事などが資料として添付されている形式。だが、この資料は証言の内容のただの繰り返しで、読むのが面倒なうえに実りが少ない。これ、必要だったかなぁ。事件自体も特に、「ふーん」という感じで、特筆することが無い。ネタ切れなんだろうなぁ。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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