- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087717129
感想・レビュー・書評
-
素晴らしい本は、本屋に入ると本の方から呼びかけてくれるような気がする。寺地はるなという作家は知らなかったが、タイトルと鮮やかなブルーの描写に惹かれて、手にとってみた。
ありふれた日常の中で、他人からは見えないそれぞれの悩み、上手く表現出来ない他人への思いが誤解され思わぬ方へ進んで行くもどかしさ、気づかなかった周囲の自分への優しさ、それぞれの話は淡々と進んで行くが、共感や気づかせが沢山詰まっていた。
水を縫う、というタイトル、読み終わって何となく分かる気がした。
読後に清々しさを味わえた一冊だった。
寺地はるなをもっと知りたい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子どもにもすすめたい!
好きの気持ちに従うって大事やけど、難しいこと。 -
寺地はるなの水を縫うを読みました。
タイトルの意味は最後にわかりました。
お祖母さんと母親とお姉さんと弟の四人ぐらし。
お姉さんは小学校の時にスカートを通り魔に切られてからかわいいに反応してしまいます。
弟は、刺繍が好きで母親にもっと男らしいことと思われています。
別れた夫はデザイナー希望でしたが、生活感が無く切れた母親に離婚されました。
それぞれの思いをオムニバス形式で描いています。
前半イマイチと思ったのですが、だんだん盛り上がり良かったです。 -
ひとつの家族の連続短編小説。
刺繍が好きな高校生の清澄。
子ども時代のトラウマから結婚式のドレスを着るのが怖い水青。
出来ちゃった婚で結婚後、いつまでも子どもみたいな夫にしびれをきらして離婚したさつ子。
自分は働く女性として生きていこうと思っていたけれど、時代に翻弄され75歳の挑戦を始めた文枝。
親の跡をついだ製縫所で全を雇う黒田。
デザイナーを目指したのになりきれなかった全。
それぞれの話に少し社会風刺的な要素を盛り込みつつも、メスは刺さない。
柔らかくてしなやかな文章が印象的だった。 -
清澄は中学まで一人だったけれど、高校になって解ってもらえる友達ができたのは良かった。くるみちゃんをきっかけに、好きなものが実益や他者に理解してもらえなくとも、好きなものは好きだと貫く気持ちがいいなぁと、羨ましく思う。
-
家族だからって必ずしも分かり合えるわけじゃない。
おばあちゃんとお母さん、2人の教育観の違いが面白かった。
おばあちゃんは、子供には失敗する権利があると言う。子供に判断を委ねる放任主義のような考え。その教育を受けたお母さんは、その教育観に理解できなくて、我が子に反対の教育をしてきた。
教育は何世代にも影響を及ぼすんだなと感じた。正解はわからないけれど、私はおばあちゃんの考えに賛同できたかな。 -
男だから、女だからとか考えてはいけないと分かりつつも、長年根付いている固定観念はやっぱりある。意識して頭のなかの価値観を更新していくしかない。思春期の子供たち、そして周りの大人たちは読んだほうが良い。
-
寺地はるなさんのお話は、さらっと書かれているようでいて、読んでいるうちにじわじわと温かさのような、切なさのような感情に包まれるものだと思った。水青が紺野さんを意識するようになったきっかけがいいなあと思った。恋愛感情だけではなく、人として紺野さんのような丁寧な人は良いと思う。劇的な変化という訳ではないけれど、ささやかで優しい。