- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087748574
作品紹介・あらすじ
日韓を代表する女性作家が、交わし合った二四通の手紙。野菜や花の話、子どものころの回想、家族への思い、そして文学のこと…。ささやかな、でも美しい賜物のような経験…。移ろいゆく季節のなかで、ゆっくりと深みをましてゆく理解と共感の一年間。
感想・レビュー・書評
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記憶がない父太宰治、周囲の方が太宰治を知っている状況の中で母の姓の育つとはどんな気持ちなのか語られ興味深いです。それ以上に、時間的には申京淑さんの「母をお願い」を書き上げる以前ですが、往復書簡の中で、ほぼ「母をお願い」の構成要素が見て取れたことに得した気がしました。こんな風に、ひとつの作品を書く前は小説の素材にかかわることを信頼する相手に重ね重ね語りながら、構想していくことがあるんだと知りました。
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津島佑子(小説家。太宰治の娘)と申京淑(韓国の小説家)の往復書簡。文学が世界を変えるかもしれないと思わせる素晴らしい本
2人のキーワードは 喪失と再生。2人の文章には 「喪失の悲しみと再生の喜び」「時間を経て 喪失から再生が生まれる」が随所に見られる
2人が伝えたいのは「国、言語、歴史が違っても、共通している 文学、小説家という仕事、女性、家族との関係などをキッカケに、時間をかければ、お互い 理解し合える」
男性的な野蛮な政治や愛国心では解決できないと思うが、この本のように 母親的な柔らかい対話で 日本と韓国の関係が再生に向かえばいい
印象に残ったのは「生きるということは、違う形に変化していくこと〜」 -
あるシンポジウムで日本の作家と韓国の作家が出会い、手紙のやりとりをするようになる。冬から始まり冬で終わる、往復書簡によってなりたっている。移ろう季節のこと、節目の習わしや行事のこと、家族や住まいのこと、なんと赤裸々に綴られていることか。特に津島氏の、まわりが口をつぐむ父という人について、自分の力で知り得た経緯や、亡くなった兄や、息子のことなど、なんだか人の手紙をこっそり読むような後ろめたさを感じたほどだ。