てらこや青義堂 師匠、走る (小学館文庫 Jい 3-1)

著者 :
  • 小学館
4.02
  • (36)
  • (44)
  • (29)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 354
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094071825

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • エンタメ色がやや強めでしたが
    この時代の寺子屋事情、お伊勢参り事情など興味深い部分も多くて
    面白かった。

  •  今村氏らしい、疾走感全開の江戸青春小説。
     前半は4人の筆子の紹介も兼ねた事件。ここは展開は緩やかで面白いが勢いがつかない感じ。その中でも今回の黒幕・源之丞や三雲禅助が登場し大きな事件を予感させる。後半の伊勢詣の道中、事件が起きる。十蔵は捕らえられ、筆子たちが奮闘する。
     ツッコミどころは多いが、後半は一気に読んでしまう点が流石。襤褸鳶シリーズのように様々な特徴の忍びが出てるが、印象的な者は少なく、その点はこの設定の限界かもしれない。
     江戸物の青春小説というと、宮本昌孝『藩校早春賦』が想起され、それには及ばないけれど、武家だけでなく商家や大工の子らが活躍する点に新しさと広がりを感じた。

  • 素晴らしい、著者の原点、どこか荒々しく、骨太の冒険活劇、魅力ある登場人物の一挙手一投足に心が震える、現在出版されている書籍・シリーズ(くらまし屋、ぼろ鳶組、イクサガミ、童の神等)に脈々と受け継がれている、じんかん、塞翁の盾、八本目の槍等から受ける歴史の深さや懐かしさも感じられ、それぞれの著者の書籍、シリーズへの布石も伺え大変満足しました。この登場人物でシリーズ化に期待したい。

  • 内容(ブックデータベースより)

    明和七年、太平の世となって久しい江戸・日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀の隠密だった。
    学問は苦手ながら剣術に秀でた才を持つ下級武士の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服問屋の息子・吉太郎、極度のあがり症ながら手先の器用な大工の息子・源也など、さまざまな個性の筆子たちに寄りそう日々を送っていたが、藩の派閥争いに巻き込まれた筆子の一人、加賀藩士の娘・千織を助ける際、元忍びという自身の素性を明かすことになる。
    年が明け、筆子たちのお伊勢参りに同道する十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団「宵闇」が公儀隠密をも狙っているという報せが届く。十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも危険が及ぶことを知って妻の里へ向かった。

    哀しみに満ちた妻との出会いと別れ、筆子たちとの絆の美しさ、そして手に汗握る結末――「本書は無冠だが、無冠の傑作として永く文学史に残るであろう」そう文芸評論家・縄田一男氏が絶賛し、作家自身が「最も自分自身を剥き出しにして書いたかもしれない」と語った、今村翔吾の原点ともいえる青春時代小説の傑作!

    令和5年2月10日~15日

  • 今をときめく今村さんの作品、初読。寺子屋の師匠とわんぱくな子どもたちの物語――が、いつのまにやら流血、殺人ありの物騒な展開になっていて、入り込んで読んでいたところからハッと我にかえってびっくりした。なんというか途中で気をそらさせない力強さがある。
    子どもたちの悩みもそれぞれに真剣でいじらしいが、やはり十蔵が"凄腕の隠忍"という過去から離れきれない葛藤が重くひびく。外部の者が忘れてくれないというのもあるし、自身もふたをした心の底には鬼がずっと棲んでいることを分かっている。その背中を、前を向いていけるよう押してくれる存在が心強い。
    「強さの質が変わったのだ。無闇に卑下しておると、いざという時に剣が鈍る」
    「人は変われるのです。何度でも」

    十蔵が一発当てようとシャレで(?)書いた「隠密往来」を読んで、子どもたちがあれこれ試すシーンは、ピンチながらなかなかに痛快。
    「あかん!これ書いたやつあほや!」
    「滅茶効くやん・・・虎の子のこれもくれてやるわ!」
    金をばらまいて足止めする"金遁"にまんまと引っかかる大人たちの哀れさよ。

  • 今村翔吾お得意の痛快エンタメ時代小説。
    少年マンガの王道をゆく展開で、やはり面白い。けどちょっと飽きてきたな。

  • 子供たちも睦月も可愛い。先生羨ましい…

  • 寺子屋の師匠になった凄腕の元公儀隠密の坂入十蔵と個性豊かな筆子たち。
    互いを思い合う人情が交錯し、手練れの忍びたちも絡むワクワクハラハラ展開がおもしろくない筈がない。
    「いかなる子であろうとも見捨てはしない」の誓いの元、十蔵が教え子のために走り寄り添う気持ちを問題児たちがなんだかんだで受け止めていて胸熱。
    命を奪ってきた暗い過去や大切な者たちを奪われた凄惨な過去…それぞれ苦しみを背負う忍びたちもまた魅力だった。
    十蔵と対しながら、心を通わせた筆子の窮地に颯爽と現れるニヒルで絢爛な火遁使い、鬼火の禅助が印象に残る。

  •  今村翔吾の手になる世話物。史実を下敷きにした歴史ものだけでなく、こういう世話物もうまいのは火喰鳥シリーズなどで実証済みだ。と思って読んでみたが、ちょっと想像と違った。屈指の隠密だったという前歴をもつ手習い所の師匠十蔵と、にぎやかな筆子たちの日常風景という体裁ではじまる連作短編だが、章が進むにつれ、公儀隠密と忍びの者との暗闘が主題となり、最後は筆子たちが巻き込まれての大闘争で幕となる。筆子たちの設定や造型はさすがにうまいし、それぞれのシーンも十分面白いのだが、全体的に整理されていないというか、ドタバタして腰が据わってない印象がある。デビュー当座の若書きというせいかもしれない。子どもたちを手練れの忍者に向かわせるクライマックスはさすがに無理がありすぎるが、小難しいこと言わないで活劇だと思って読めばいいのかな。確かに劇画向きだ。

  • 手に汗握る面白さでした。
    まさか、忍者の戦いの話とは思いませんでしたが、壮絶なバトルの描写は、臨場感たっぷりでした。
    最近の小説は、スッキリしない結末が多くて、それはそれでリアリティがありますが、今村さんの小説は、読了後がスッキリ!します。
    続編を期待します。

全39件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

今村翔吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×