あおい (小学館文庫 に 17-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094081732

作品紹介・あらすじ

27才スナック勤務の「あたし」と、おなかにへたくそな地図を彫っている3才年下のダメ学生・カザマくんは同棲して4か月。ゆったりとしたリズムにどっぷりと浸かった生活をしていた「あたし」は、ある日、妊娠していることに気づく。そして、気がつけば、長野のペンションへの短期バイトを決め、そのバイト先からも逃げ出し、深夜、山のなかで大の字になって寝っころがってしまう。そのとき、「あたし」の視野に、あるものが飛び込んでくる。

感想・レビュー・書評

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  • 西加奈子さんのデビュー作。つたないけれど一番透明な作品です、西加奈子。と帯に書いてあったとおり、危うい位なつたなさが伝わってきたが、それがいいのか、シンプルに心に伝わった。ほんとに素直な作品。

  • 西加奈子の書く文章の「強さ」にいつもなぜか泣きそうになる。

  • 直木賞作家 西加奈子のデビュー作。

    彼女はその授賞式でこう語った。

    「とにかくプロレスからはむちゃくちゃ勇気をいただいてます!」

    猪木、藤波、長州、闘魂三銃士。

    新日本プロレスファンという彼女は、その後の低迷期にも会場に足を運んでいた。

    全盛期に比べ寂しくなった東京ドーム。

    そこでは棚橋弘至が奮闘していた。

    「チャラい」と言われ、ベビーフェイスなのにブーイングを浴び続けた彼の活躍により、リングに熱とファンが戻ってくる。

    彼女は、その姿に自身を重ね合わせるのだという。

    『太宰で終わった』『最近の作家なんか読めへん』

    こんな悪口を目の前で言われても、彼女は小説を書き続けた。


    27歳・スナック勤務の「あたし」は、友達の雪ちゃんから恋人を奪ってしまう。

    「『悪いのはあたしです。』
     そういう言い訳をしては、開き直ってひどいことをする、あたしは本当にずるい人間だった。
     そのときだって、雪ちゃんは何も悪くない、悪いのはあたし。そう思う自分に、また吐きそうになるくらい嫌気がさして、同時に、『あなたが悪い』と思った男の子はカザマ君が初めてだということに気付いた」

    スナックのママ。

    そのお客さんの森さん。

    お店近くの書店員のみいちゃん。

    傍目から見れば「変わった人」。

    でも、みんな自分に誠実でありたいと願っているだけだ。

    物語から見えてくる、作者の情熱と誠実さがまぶしく、心地よい。


    他に、友達の葬式に参列した仲間たちが初めて知るかれのニックネームの由来「サムのこと」。

    明日大阪を出て東京に向かう「うち」。恋人と過ごす最後の夜のラーメン屋「空心町深夜2時」の2短編が収録。

  • 西加奈子の著作。「さくら」よりも前の作品で、彼女のデビュー作です。
    「あおい」というタイトルが不思議な感じがします。
    主人公の名前ではないし、誰か親しい人の名前かしら?
    しかしなかなか登場しないのですよ「あおい」が。
    何か象徴的な意味合いの存在かしら。。気になります。
    それがずっと心のどこかにひっかかり、遂に登場して「あおい」というタイトルの意味するところが分かった時の開放感。そして清々しさ。
    そう、「あおい」が登場してからわずか11ページで話は終わるのです。

    周りから「さっちゃん」と呼ばれる、26歳・スナック勤務の「あたし」の語り口で話は進みます。
    同棲相手は4歳年下の「カザマ君」。
    このふたりの関係が何ともゆるゆるで不安定。
    しかし彼の子を妊娠したかもしれないというあたりから、「あたし」は揺れ始めます。
    仕事も辞め、長野の山奥で働こうとする「あたし」は、そこも抜け出して夜の山をハイクします。
    長い道のりの間に様々な思いがこみ上げ、そこで始めて語られる「あたし」の苦悩と切なさ。そして「あおい」との出会い。
    その奇跡のような出会いが、「あたし」をカザマ君のもとへ還らせます。。

    刹那的に生きているような「あたし」の胸のうちが、切なくなるほどです。
    局面にたつたびにつぶやく「カザマ君」の名前。それもまた切ない。
    途中から登場する友人の「みいちゃん」も、良い味を出しています。
    肝心の「あおい」が何のことかは、言わずにおきましょう。
    だって、「あおい」に出逢う前と出逢った直後が話の佳境。
    「あたし」の心の深い部分に触れて、思わず涙が出ます。

    そう言えば今日はバレンタインですね。10代から60代までの人々に
    あまねく支持されるラブソングはドリカムの「LOVE LOVE LOVE」だという話を聞きました。
    今日くらいは、この話のさっちゃんのように、ピュアな気持ちを取り戻したいなぁ、なんて。

  • 西加奈子さん初読みです。
    淡々とした日常を描いてるんだけど感情表現が生々しくて率直でこのギャップが、おぉこれが西加奈子か…と思わされました。感想としては共感はできないし、主人公にはもっと上手く生きて欲しいと思ってモヤモヤするけど、読み進める内にそうもいかない背景もあったのだと分かり、最後は希望の見えるカタチだったのがまぁよかったなぁ。
    ちなみに西加奈子さんのデビュー作。次は話題作を読んでみようかな?

  • 西加奈子さんのデビュー作。
    不思議な話です。こういう感じは、ちょっと私はわからない。

  • 完全に虜になってしまった西加奈子さんのデビュー作。
    面白い云々よりも、読めて嬉しい気持ちが勝ったファンのわたし。

    今の自分とそう変わらないときに既に繰り出されていたステキな言い回しや、ちょっとはみ出てるキャラクターが愛くるしい。

    カザマくんの頭が大きいことが印象に残っていてお気に入り。

    ただ、『あおい』よりも一緒に収録されていた『サムのこと』の方が印象深く、たまたま読了した2日後に通夜に参列したのだけど、悲しさを噛み締める切れ目切れ目で、なぜか冷静に物語に登場するちぐはぐな葬式を思い出したりした。

  • 昔読んだので忘れてしまったけど、
    風間くん、かわいくて、名前と合っていた。

  • 表題作が西さんの処女作らしい。一言で印象を表現すると「剛速球を力いっぱい投げ込む新人投手」って感じかな。勢いとテンポと笑いと奇抜さのバランス感覚が絶妙で気がついたら夢中になっていた。これはラブストーリーなのである。あおいとは、彼との間にできるはずの子供の名前。それにしても欲望に忠実な女性だな。女の友達とかできないのではと思ってしまう。僕のタイプではないが、その破天荒さが物語を動かし面白くなる。楽しい作品です。

  • サムのこと が良かった。

    仲のいい友人のお葬式の話、胸が熱くなる。

    誰が死んでも、何が起こっても、日常はいつもぼうっとそこに横たわっていて、それは悲しくなるほど無責任で、残酷で途方もなくやさしい。
    なんたいうか僕たちは、だからこそ生きていけるんだ。

    わかるようなわからないような。

  • 西さんのデビュー作なのか。読みながら良い意味で違和感を覚えます。ある意味、完成度が高い。ひょっとして現在のものより良いんじゃなかろうか。同時に何かを「描きたい」という強いモチベーション・意思のようなものを感じます

    どこかキチンとして無くて、将来とか世間とか気にしないけれど、今の一瞬や仲間にはそれなりに誠実な「現代の若者」を描いた作品。
    私の中で西さんは「どんな人であれ、自分を肯定しようよ」と語りかけてくる作家さんです。ただ、この作品ではそこはあまり強く感じません。ポジティブに肯定するというよりニュートラルにあるがままに描く、そんな感じの作品です。

    登場人物たちの思わぬ発言や行動、流れとは無関係に思えるもの、逆らうようなものがしばしば現れます。でもそれが不自然ではなく、むしろ心や気持ちの揺らぎを表しているようで、上手いなと感じます。
    改めて良い作家さんだな~という印象です

  • あおい
    著:西 加奈子

    直木賞の受賞の「サラバ」を読み
    著者の最近の話題作である「漁港の肉子ちゃん」を読み、短編集である「炎上する君」を読み、角度を変えてエッセイ「ごはんぐるり」を読んだ。

    西加奈子氏の全てがわかったとは言えないものの、次読むモノには違う何かを求めた。

    迷わず決めたのはデビュー作である「あおい」
    ガンガンに上がった私の期待というハードルをひょいと飛び越えるかと思っていたが、ひょいと下をくぐって驚きを与えてくれた。

    青春を語る年代の主人公でもないもののどこか青春というかすぐ壊れそうで脆い感情で出来上がった見世物を色々な角度から眺めている気分にさせてくれる。

    変化球はないもののまっすぐではなく角度を変えて感情に突き刺さってくる言葉のチョイスは流石。

    右にも左にも上にも下にも読むものの感情を揺さぶるも最後はしっかりと仕上げてくる。
    勢いを感じる作品。

  • どの物語も短いのに、むき出しのまんまで迫ってくるもんだから、まるでどろどろのゾンビに追いかけられるような感覚になった。悪い意味ではない。
    これが芸術なんだろうなという文体で、すぐには飲み込めなかったから、読み終わるのになかなか時間がかかってしまった。「あおい」は特に続きを読みたいのになかなか読み進められなかった。暗い気持ちになるわけではなく、かといって読み終わって清々しい気持ちにもなれない。(私だけ…?)なんとも形容しがたい感情が巡ってくる。読み終えたあとはすこぅしほっとしてひと息つくことができる。
    一人称の感じ方だけで物語が展開していく部分があるのを見て、西加奈子さんはかなり自分の世界観を中心にプライベートでも動く人なのかな?と作者のことを知りもしないのに考える。
    大体、小説というものは一人称の場合、その人の視覚的な視点で物事が動いているように見せていると私は認識している。けれどそれとは違う展開を活字に興すことができているのが、「これが凡人には成せない技なのか…!」と読んでいて驚愕してしまう。なのに独りよがりの文体にはなっていなくて、ちゃんと読者を引っ張っていってくれるので「あれ?この場面はどうなっているんだ?」とならないのがすごい。
    最後の山崎ナオコーラさんの解説。私と同じ考えの部分がある!と大興奮(笑)
    物語の締めくくりに相応しい、西加奈子さんを知る作家さんの視点での解説は是非読んでほしい!

  • ちょっとしたことろに女性の生の心情が見えて、ブルースやなって思った。

  • 共感は絶対できない。ただ、こういうふうに素直に生きれる人は羨ましく思うし、近くにいたら認めてあげたいと思う。

  • 読み始めたときは、独特の文章に馴染めなかったけど、
    読み進めるとすぐに、どっぷり世界観にハマってしまいました。めちゃくちゃ好きだ。
    レトロな緑や紫のフィルターのかかったような色彩の
    世界で、同世代の私は、ちょっと古着が流行った学生時代を思い出して懐かしかった。
    なんだかとてもリアルで息をしているような小説でした。とにかく好きです。

  • 西加奈子のデビュー作。表題作「あおい」の他、「サムのこと」「空心町深夜2時」の短編を収録。

    ・・・
    西さんの恋愛ものは難しい。自分の常識に合わない女の子が大概主人公。

    裏表紙を見ると、27歳、スナック勤務、三歳年下の駄目学生・カザマ君と四カ月前から同棲し、彼の子供を身ごもる、とあります。

    友達ならば面白いんだろうなあとか感じます。でも、私の読み方は自分だったり近しい人を投影して読むタイプ。こういうのが自分の嫁だったり娘だったりしたら・・・それは困りますわ笑。

    ・・・
    散々ウームと(やや否定めに)唸りつつ、でそれでも読んでしまう、西さんの作品。
    ふと考えるのは、自分は一体何に惹かれるのか、ということ。

    山崎ナオコーラさんが書いている解説にその答えが。
    「率直」「みたまんま」。

    これです。
    「あおい」にせよ「サムのこと」にせよ、登場人物がどうにも憎めない。でそれはやっぱりどの人物も「率直」なんです。私はこういう、思ったことをそのまま伝える人に親近感を感じるみたいです。

    もちろん、伝えることには非常な技術が必要であり、その言語力だけは西加奈子レベルでありますからね笑 この言葉のセンス、これが私にとっての西さんの一番の魅力なのかもしれません。

    ・・・
    ということで西さんのデビュー作でした。

    恋愛小説が好きな方、純文学が好きな方、西さんが好きな方にはお勧めできる作品です。
    因みに私は「サムのこと」が面白いなあと思いました。友人の葬式で初めてその友人の素顔を知るという話です。

  • 西加奈子さんの本は、惹きつける力がすごい
    読み始めて直ぐ、捲る手が止まらなくなる。妙にリアルで、真っ直ぐで少し生々しい
    キャラクターを表す時の比喩が面白いなぁと思った
    表題作含む3作全て、もう終わりか…となんだか寂しい思いにさせる
    もっとこの人たちの人生を読みたいって思う

  • 西加奈子の小説の濃い部分を更に煮詰めたみたいだった。カロリー高め

  •  好きって凄い。

  • 大胆なのか、臆病なのかわからない主人公だな、と思って読み進めてたけど、どっちかじゃなくてどっちもなんだって後半でわかった。

    いつも人の顔色をうかがって、心の動きにとても敏感で、ちっちゃいネズミくらい臆病なくせして、時々、一瞬の感情の波に、すべてを任せきってしまうことがある。
    窮鼠猫を噛む、違う。面倒くさいというのも違う。
    ただ流れに捨て鉢に身を任せるのではなくて、なんてゆうか、一度起こった感情の波を、より大きな波へ変化されるのだ。

  • 西加奈子さんの作品との出会いは漁港の肉子ちゃんでした。次にサラバを読みその世界観に引き込まれて他の作品も読みたくなりデビュー作であるあおいを読みました。淡々とした普段の生活の中でスローテンポで流れていくストーリーは一歩間違えばつまらなくなってしまいがちですが、西さんの独特で時にストレートな表現力に心をつかまれて気がついたら読みおわっていました。西加奈子さんの本を5冊まとめて買ったので続けて読んでいこうと思います。

  • 最初はメンヘラ女子のダラダラしたストーリーだけの小説かと思っていた、終盤に向かうにつれて主人公を形成する過去を生々しく描けていると思った。関西弁口調のリズムやユニークな表現で飽きずに読み終えることができた。


  • あおいも良かったけど、サムの方が好き。社会からはぐれかけた、属することができない人たちの集まりなので、そのコミュニティでさえ曖昧な形だけど、似た者同士特有の居心地の良さで成り立っている。なんでここにいるんだろう?とみんなから思われていたサムが、実は一番そのコミュニティに自分の居場所を求めていた。仲間内では誰より、社会的に、また精神的に自立しているように見えていたサムも、結局は社会から孤立した存在だったということが最後にわかる。そして、そのことに彼が孤独や劣等感を感じていたということも。だからこそサムは、馴染めない世の中も、そこに加われない自分自身をも肯定も否定もしない友達たちに憧れ、仲間になりたかったんだね。でも仲間という概念自体ないグループなのでサムは結局満たされることはないまましんでしまったっていう切ない話だった。

  • 最後の短編「空心町深夜2時」行かんといてくれっていうてくれたらな、うちは、どこにも行けへんのに。ていうことばが裏腹な感情を表してて印象的だった。

  • 物語の情景が、そこに立って見ているような気になるくらい鮮明に美しく伝わってくる

  • あおい

  • はて、なぜこの本を手に取ったんだったか・・・?
    苦手な感じの文章だが、読み始めたら早かった。朝の電車で読み始めて、帰りの電車で読み終わった。

    表題作は、話がどうとかっていうのもそうなんだが、好きな花が出てきたので、星ひとつおまけだ。
    「そうゆう」というような書き方は嫌いなんだけれどもね。あと、大阪弁のセリフが妙にうまくない。わざわざカバーの折り返しで、作者が本当に関西出身なのか確かめちゃったぐらい。いや、言葉は合っていると思うんだが、なんか、字になった感じがべったりしている。なんでかな?

    「サムのこと」はちょっとよかったかな。

  • ぽくぽくする。表題作がすき。あたしことさっちゃんは、ママのいるお店に勤務していて両目の大きさが違うから、はじめ「地下の鳩」のみさをなのかと過った。

  • 出版社の担当の方?すげえなていうか。
    ここからサラバ!まで行く?てわかる?
    おれわかんないよ酒屋だし。やるよなあ

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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