- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094087642
感想・レビュー・書評
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どこまでが本気・戯言・皮肉なのやら(^^;; キング氏が書いているというだけで、何気ない思い出もホラーになるというか、否、こういう人生を送ってきたから今日の作品に繋がっているのか…。作品もたくさん出てくるので、ファンの方なら楽しめそう。美容院で読んでいましたが、鼓膜破られるとか痛い描写に、気づくと顔をしかめて読んでいる私なのでした(笑)。ドキュメンタリー映画『ROOM237』の公開が楽しみだけれど、氏は嫌がっておられるのかなー。映画『シャイニング』が大好きで、原作がキング初読みの身としては、セツナイところ★
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物語ることへの向き合い方を、ちらりと覗かせてくれる。誰にでも学べる文章作法と、誰にもわからない物語の受胎と、これまでの人生と、ひっくるめてエンターテインメントにできるのは、やはりさすが。
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あとがきで役者が達意の文章と表しているが
まさにその通り。
テクニックとしては基本の域を出ないが、
一貫して「正直に」、「誠実に」、「知っていることを」
書くという姿勢が、言葉に深みを持たせている。
プロットに縛られることなく、
自分が登場人物について知っていることを誠実に書く。
そうでなければストーリーを書く楽しみは得られないと説く。 -
キングが好きだ、と言うと微妙な顔をされることが多い。しかし、そういう顔をする人ほどキングの本を読んだことがないのだ。読んでみなさい。
あまりに恐ろしい小説もいくつもあるけど、どの小説にも根底には人間への深い愛が流れている。キングは、善の持つ力を強く信じる人なのだ。
そのキングによる『小説作法』を10年ほど前に図書館で借りて読み、夢中で読んだ。折りにふれ、再読したい気持ちはあったがなかなか再会しなかった・・・ところに新訳が文庫本で出たと言う。即購入。
私は作家になるつもりは毛頭ないが、それでもこの本は面白い。
読むこと、書くことが好きな人なら必読書。
よくいろんな小説の帯に「キングが絶賛!」とあるけど、この人どんな本でも絶賛しちゃうねえと思っていたが、あにはからんや、本書では、実名を挙げて、数々の悪書・悪文をこき下ろしてもいる。しかし、そこにもやはり愛が感じられるんだなあ。
キングは読み始めると文字通り寝食忘れるはめになるので、大好きなのに極力避けている・・・という、妙なファンである。しかも一冊読むとすぐに違うのを読みたくなるという恐ろしい魔力を秘めている。
頭の中でなんとはなしに反芻する小説がいくつかあるが、私の場合は、その一冊がキングの『骨の袋』である。『キャリー』でも『シャイニング』でも『スタンドバイミー』でもなく。なぜかは自分もわからない。 -
前半は、作家キング自身による成長/挫折の振返り。本人は「履歴書」と書いているがくだけた自叙伝に近い。はっきりと書いているわけでもないが母、兄への家族情愛が感じられる。いろいろハチャメチャなエピソードに満ちているが、よく考えるとこの程度は誰にでもありそうだ。むしろハイスクール以前からやはり天賦の文才が光っていたというように自慢しているようにも感じ取れる。
ハイスクールの新聞スポーツ記事のアルバイトで、編集長グールドがキングの原稿を修正した例が載せてある。(これ自身がフィクションなのかもしれないが・・)これに物を書くということの本質が凝縮されていると思う。不必要なものは削れ!だ。 -
キングによる執筆の指南本といった感じです。ストイックだなぁと思う一方で、とても利にかなったスタイル。天才の仕事場を覗いているようでワクワクしました。
読み進めていくと創作の喜びとともに、妻タバサへの愛も見えてきます。
読者として、小説家という職業に憧れることは多々ありますが、そういう心に刺さる作品でした。 -
キングは云う。何故、小説を書くのか?
「読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生を豊かにするため」
安易な自己満足的作風に陥ることなく、エンターテイメントに徹するキングの作家としての厳しい姿勢、作法は、ある種「修行」にも似ている。一読すると合理的かもしてないが、奥が深く、同時に目からウロコの言である。
「語彙をふやそうと、いたずらに言葉を飾ろうとするのは、ペットに夜会服を着せるようなものである。」
「なんらかの問題意識やテーマにもとづいて書くというのは、駄作のレシピである。」
「小説は三つの要素から成り立っている。ストーリーをA地点からB地点まで運び、最終的にZ地点まで持っていく叙述、読者にリアリティを感じさせる描写、登場人物に生命を吹き込む会話である。」
もちろんこのことは、キングがベストセラー作家のとして、その修行時代、サクセス・ストーリーの中で会得したものだろう。しかし、それが単に彼ひとりの力によるものでないことは、前半の前半生を綴ったコラージュ風の自伝部分でも、わかる。デビュー作「キャリー」に対する、妻タビサの助言は有名な逸話だが、名を成したあと、お決まりともいうべき、ドラック・アルコール依存症の泥沼からの脱出を促したのも、彼女の一言だった。キングは彼女への謝辞を忘れない。作家として成功するには、家族の支えが必要だ、とも断言している。
その上で、キングは何度も云う。何故、小説を書くのか?
「書くということは、時に信仰であり、絶望に対する抵抗であるから」
1999年に自身を襲った交通事故。文字どおり九死から一生を得た彼は、こう答えた。ここにも家族の支えがあったが、そこで見つけたものは、まさにこれ。この心境に達しなかったならば、復活は出来なかったに違いない。そして、もう一つ、次のことも云っている。
「人生は芸術の支援組織ではない。その逆である」
これは「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉と表裏一体。キングが辿り着いた、悟りとも言えるものだろう。
旧版の題名は「スティーブン・キングの小説作法」。あらためてこの新訳版を読むと、それが「スティーブン・キングの文章十戒」と思えてならない。まさに文章、小説を書くための、十の(実際に書かれているのはそれ以上だが)戒め、箴言集である。