- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101006024
感想・レビュー・書評
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冒頭、かず子の母がスープを飲む場面からいきなり引き込まれてしまいました。
ひらり、ひらりと燕のようにスプーンを運ぶ母の姿からうかがえるかつての日々と、現在のこの母子の境遇の差にくらりとさせられるのです。
物語が始まった時点で、すでに彼らの滅びの予感は漂っているのですが、どんどん濃厚になっていく滅びの色から目が離せなくなってしまいました。
語り手のかず子、彼女の母、弟の直治、小説家の上原。
この主要な登場人物たちには、共感できない部分や思わず眉をしかめたくなってしまう言動もあります。
しかし、自分の中にもこの4人がいるような気にさせられるから不思議です。
程度の差こそあれ、きっと誰の心にも4人は潜んでいて、普段はそのことに気付いていなくても太宰治の文章を読んでハッと気付かされているのではないでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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はじめまして(^-^)/
リフォローありがとうございました。
斜陽は好きな小説のひとつです。
内容はちょっと困ってしまう事も...はじめまして(^-^)/
リフォローありがとうございました。
斜陽は好きな小説のひとつです。
内容はちょっと困ってしまう事もありますが、文の美しさがなんとも言えなくて。
太宰の文章が嫌いじゃないかもと書いてあって嬉しくなりました(^-^)
今、風が強く吹いているを読んでいます。
yamatamiさん、好きな本の2位になっていますね。
本当に素敵な話で毎日ドキドキしています♪
明日の箱根駅伝予選会までに読み終わりたいのですが…微妙です(笑)
では、これからよろしくお願いします。
2015/10/16
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なんでしょうね。太宰さんの小説って、人の深層にある闇を描きますよね。
ただ、人間失格よりそのバランス感が丁寧かも…人間失格って死際に書いた作品だけあって、かなりなりふり構わずというか、破壊力みたいなのがあったけど、斜陽はもっとじわじわと侵食されていく感じ。
何にも満たされない、理解されない者同士が心の隙間を埋め合うのは同じですね。なんかこの「あなたは私にしかわかってあげられない」感が、女性にモテた原因だったんだろうな。 -
断片でとるととても秀逸で、寓話に富んでいる。
全体を見ると、これはこの時代に、その空気のなかだからこそ書けるのだとおもう。
太宰はほんとうに、その時代の空気感、人の心の機微を肌で感じる作家であったのだ。
その肌感覚の鋭敏なること!
それを言葉で表せるかという驚きが、何十年もたった今でも、鮮度高く、身に迫ってくるのだ。
さいごの解説も秀逸です。
だいぶちがうけど、朝井リョウとかはいつかこういう本が書けるかもしれない。 -
1.おすすめする人
→日本文学に興味がある、太宰治を知りたい
2.内容
→読み終わった後に何とも言えない
空虚感を感じる作品。
没落していく貴族が、社会に抗うこともできず、
人生を終えていく。
悲しくて、なんだか辛い。 -
人間くさい女性だった。この人は私がいないとだめになるの、みたいなメンヘラに似たような人。
現代にこのような人はあまり見ない。遠慮し合い、空気を読みながら、自分が変わればいいと自分の気持ちを抑え込む。
斜陽の女性のように、何がなんでも自分が正しいと思っている人が現代にいると、煙たがられるんだろうな。自我が薄い世の中よりかは楽しくなりそうなんだけど、、 -
日没前の太陽を意味する「斜陽」のように貴族階級から没落しながらも最後まで輝き続けるかず子やその家族たちの姿が描かれている作品です。
終盤あたりで紳士が「東京で『こんちわぁ〜』と軽薄な挨拶ができないと生きていけない」と言いますがこの言葉が貴族社会の崩壊を一言で表しているのかなと感じました。
高度成長期の足音が近づこうとする戦後は頑張って働けば誰もが資本を持てる時代です。競争相手も増えることで悠長に過ごすとが減り挨拶や人間関係も軽薄になる。今まで働かず自分のペースで生きてきたかず子たちにとって生きづらい時代になったのかもしれません。
そしてかず子たちの奥ゆかしく品のある話し方も戦後から消えつつある気がします。それは経済成長と共に日本人の大切な何かを失おうとするサインであるのかもしれません。 -
今の人たちは「死」という言葉をいろんな意味で日常的に使うけど、100年前を生きた彼らはなんというか…文字通りの意味をサラッと本気で言う感じというか…ふと「死のうかな」と思ったら死ねるような地獄を生きてたのかな〜と。直治の手紙を読んでいたら、別に勝手に死んでもよくね?スタンスになった(私は自分からはしないと思うけど!)
特に凄いなと思ったのは、かず子が上原さんに送った3通のクソ重い手紙。「貴方の赤ちゃんが欲しいのです」って……これを男性である太宰治が書いてるところがヤバい(語彙力)女性の気持ちを理解しているというか、女性の重めな感情がリアルに表現されていて、凄く好き…でした。さらに後半の「今でも、僕をすきなのかい」「僕の赤ちゃんが欲しいのかい」「しくじった。惚れちゃった」の3コンボは…えっちですね…(動揺)とびきり官能的でした。
お母様が弱くなり始めてから亡くなるまでの長い描写がジワジワ悲しさを引き出してる。お母様がもう長くはないことを理解してずっとそばに居たかず子と、ママが弱っている姿を見たくなくて2階に篭ってた直治、私は直治タイプかな…お母さんがだんだん弱っていく姿なんて多分まともに見れんし、手が浮腫み始めた時点でもう無理でした(涙)
統一感がなさそうだけど実はあの4人は共通して太宰治という人物の投影だった、というのがまた深いですね。難しかったけど他の作品にも触れてみたいと思いました。 -
後書きで知ったけど晩年の集大成という位置付けを踏まえて読むと登場人物四人それぞれに太宰治の姿が投影されているのが分かる
最後の手紙の文面や、それまでの主にかず子の語りの、言葉の威力、入り込んでしまう
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恋、と書いたら、あと、書けなくなった。
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直治とかず子のそれぞれの葛藤が表現され、その文章だけでありありと情景や心情を理解出来るのは、紛れもなく著者 太宰治の技量の凄さなのだろうと思った。
暗い雰囲気の題材の作品ではあったが、序盤は娘と本物の貴族であった母のやり取りの会話など、興味深かった。
息子、直治の突然の自殺という展開には驚かされた。直治の遺書はなかなか心に響くものだった。「人はなぜ生きないといけないのか?」という遺書は深いテーマだった。