- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101012315
感想・レビュー・書評
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“作者の妻が藝大生で…なんだかとっても面白い”
しかし、これは氷山の一角らしい。
…というきっかけで、巨大な氷山に立ち向かった二宮氏の労作。
何となく感じていた藝大生のイメージというものはある。
それと大きく外れていない部分もある。
しかし、大勢の学生にインタビューして二宮さん自身が感じた、藝大生も生身の学生であるという親しみやすさと、やはり只者ではない、一人ひとりが本当にスペシャリストなのだということにも気づかされる。
そして、藝大の懐の大きさである。
既存の学科の枠に収まりきれなくなった学生のために、新しい学科が創設される。
町工場並みの設備が用意されている。
大学の研究室というものは、そういう所だとは思うが、未来の人材のために本気でフォローする姿勢なのだ。
しかしそこは、やはりカオスである。
未来の巨匠は、今はまだるつぼの中でドロドロに溶けている真っ最中だ。
そこから形をなして浮きあがってくる者はやはり少ないのだろう。
「何か」に本気になっている人たちにとっての楽園でもある。
自分で揃えなくてもありとあらゆる設備が使いたい放題だからだ。
藝大にいれば何にでも挑戦できる。
「卒業したら、制作をどうしよう。設備を自分でそろえるにはお金がかかりすぎる」
やりたいことがあとからあとから湧いてきて、将来のことなど考えている暇が無い。
厳しい言い方をすれば、モラトリアムであり、ネバーランドでもあるかもしれない。
4年間終わって、まだ上の学校に“進学”する人が圧倒的に多いというのは、そういうことではないだろうか。
しかし、食べて行くことなど考えない、わき目も振らずの集中の中からしか芸術は生まれてこなかったとも思う。
一方で、日常に使う道具にも目を凝らせば芸術を感じられることがある。
芸術について考えてしまった。しかし楽しい。
同じ学生たちにインタビューしたとして、他の人が書いたらこんなに面白く読めなかったかもしれないと思う。
単なるインタビュー記事ではなく、小説のように読めた。
小説を書いてきた二宮氏ならではだろう。
上野には、美術館や博物館を訪ねて時々行くが、その屋根の向こうにこんな桃源郷が広がっていると知ってしまった今、上野に行くたびにドキドキしそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芸術は、生まれながらに持った才能と言われることもあるが、それを開花させるまでには並大抵の努力では済まないと言える。東京藝大出身の演奏家たちは、基礎に忠実であるからこそ、個性がプラスに転じているのだと思う。
2021,4/11-4/13 -
東京藝大の日常。
美術学部と音楽学部。
実際全く知らない現場だったけどこの本を呼んで驚きと面白さでいっぱいだった。
キングヌーの井口さんもまさかの登場で、より面白い。
物が壊れても買うのではなく自分で創るという所に惹かれました。凄い。 -
どう生きてたらそんな道に出会い、進もうと思うのか。若干18にして道を選ばなくてはいけない大学。
たいていは、なんとなーく進学して、なんとなーく日々送って、なんとなーく卒業し、なんとなーく就職する。一方藝大の方は、意思を持ち、何をしたいか何をすべきかを考え、日々大学生活を能動的に送り、半数は行方不明になる。その対比は、どちらが幸せか、なんて陳腐なものではなく、いかに人生を面白く豊かに、命を転がせるか、みたいなところにある気もした。
めっちゃ面白い。宝箱みたいな大学という印象を受けた。もとから、天才で現実離れした社会で生きていく、少しだけ無責任な人が多そうな大学という印象ではあったけど、良くも悪くもその通りではあり、だけど、みんな意外と普通の人間であり悩みながら生きていることを知れたのは大きい。
ものづくりって、カッコいい!って思った。こういう人たちの作品が正当評価される豊かな世界になると良いな、って思った。
井口理って、King Gnuのだよね?有名人になる前のお宝インタビューみたいで面白かった。しっかり、夢を叶えていて素晴らしいと思うと同時に、彼みたいに夢を手にすることのできた学生ってどれくらいいるのだろう、と気になった。
違うところを面白がり、同じところに感謝して -
専門用語が多く使われているので想像しがたい部分もあったが、自分が知らない世界を知ることが出来るのはやはり「読書」の強味だと再認識できた。
実際の生徒さんにインタビューしているので、その後何をしているのか調べることが出来る。"ノンフィクション"の面白いところである。興味がある人は調べてみるのもオススメである。
美校と音校を比べて、外見や服装は想像通りだったが、校舎や設備、風習がかなり違っていて驚いた。美校は良い意味で自由な印象を受けた。芸術は判断基準が曖昧だからこそ「芸術は教えられるものじゃない」とう言葉がかなり響いた。
音校は『のだめカンタービレ』の印象が強かったが、そこで描かれていることのより奥深いところまで知ることが出来た。音楽は一発勝負だからこそ厳しい世界であり、面白い印象を受けた。個人的に楽器の種類ごとにどんな事に気を付け、何を意識して練習をしているのか知ることが出来て興味深かった。指揮者=「交通整理」という表現がお気に入り!
ただ、何かに特化した学校については、芸術や音楽が得意で好きな人達が集まった学校のイメージを抱いていたのでそうではないことは意外だった。(当たり前なんだけどね)
藝大=「芸術界の東大」の表現の通り、入試は厳しいしただ芸術や音楽が好きなだけではやっていけない世界だと感じた。「光るものを持っている」人だけが通用する世界。自分が通っている普通の大学とはまるで違う世界だ。 -
はじめの奥さんが亀を作っているくだりが面白くて、そういうおもしろエピソードを期待していたのですが、内容は主に芸大生のインタビューでした。
まあ、それはそれで芸大という触れたことのない世界は興味深く、芸術や音楽に興味のある人であれば楽しめると思います。 -
野生の井口理がいたようないなかったような…
好きだから特技になるのか。ずっとやってたからそれが特技になってしまうのか。はたまたそれが自分のやりたいこと・やるべきことなのか。いや、それしかやることがないのか…
芸術の広義さを感じる作品であり、人間性はそこに顕著に見出されるものだと感じる文章だった。しかしながら、ずっしりと重たい文章とは違う。むしろ、作品の構成が端的でコミカルにつくられているためスキマ時間に読みたくなる、そんな本だと思う。 -
ブルーピリオドや、のだめカンタービレの世界。
個性的でおもしろいなあ。
こんな青春、素敵よね。
山田吾郎さんが、藝大についての意見を言っていて、深い、、、教育とは、アートとは、と考えさせられた。
この本ではそこまでの、視点はない。 -
音楽をやってたので、楽器や学科ごとのせいかくの違いとかめっちゃ分かる!と笑いながら読了。
美術学部の方々も含め東京藝大へ入ったきっかけや将来のことなど、普段生活していても出会うことのない人たちの話は興味深くて面白い本を見つけた!と思った。