白痴 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101024011

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んできた本の中で1番文体が好きかもしれない。

  • 登場人物は、男女の肉体関係を、浮気を、戦争を愛する。それが正しいかどうかよりも、そういった小説のフィクション性が、現実の輪郭を際立たせること。というかなんなら「現実はフィクションを含む」ことを思い知らされる。

  • 「堕落論」などのエッセイを読んでから小説を読んだ。坂口安吾がどんな考え方をする人なのか大体分かった状態で読んだので面白く感じた。どの話も彼自身の哲学が反映されていて、ここまで一貫に徹して己を曝け出している人も珍しいんじゃないかと思う。何か一つのゴールを見据えている感じがすごく伝わる。
    また、文体も肌に合っていた。純文学の抒情的表現や、…みたいな感じ、分かるでしょ…??といったような文体に馴染めない(私自身が鈍感だからだと思うが…)人間なので、坂口安吾の文体が心地よかった。特に心地よかったのは「青鬼の褌を洗う女」で、サチ子目線から語る心の機微の言語化や考え方がすごく面白かった。

    どの話でも語り手たちは(作者は坂口安吾なので…)理路整然とした雰囲気で語っていく。それでもふとした拍子に目の前の女をかわいいと言ったり、男をわけが分からず愛しいと言ったりする。そこがすごく好きだし、かわいい。
    好きな作家に出会えて嬉しくなった。

    〜メモ〜
    「私は海を抱きしめていたい」
    私は物その物がその物であるような、動物的な真実の世界を信じることができないのである。 私は最も好色であるから、単純に肉慾的では有り得ないのだ。
    「青鬼の褌を洗う女」
    私は現実はただ受け入れるだけだ。呪ったり憎んだりせず、呪うべきもの憎むべきものには近寄らなければよいという立前で、けれども、たった一つ、近寄らなければよい主義であしらうわけには行かないものが母であり、家というものであった。

  • 空襲 知的障害

  • めちゃくちゃで面白い。

  • ストーリーの展開としては自分の部屋に逃げ込んできた白痴の女と共に戦火から逃げるだけで主要人物は誰も死なない。
    しかし、戦禍における伊沢の思想の変化についての表現力が素晴らしい。

  • 戦争。
    生と死が日常に戯れる環境下で、人間は克己心の拠り所をどう置くか?

    表題作『白痴』の、伊沢と言う男の歪んだ優越感を始め、数々の乱暴で頽廃的な思想には目を覆いたくなるが、決して背けてはならない。

    ただそこに生きた炎を。
    人それぞれが燃やす権利を。

  • 哲学とか思想というとあいまいで
    ファッションとか姿勢というほうがよりちかい
    在り様ひとつのありかたとしてあこがれる向きの多い立ち方
    それを短い文章でかつある程度の時代を越えてあり続け差閉めていることについて
    文句なしの作品

  • 当たり前だけど戦争がこの時代の文豪に与えた影響では計り知れないなあと
    世界が終わるかもしれないという恐怖とある種の期待のようなもの、、これって三島が感じていたのと同じだとおもった。

  • 引用 頁六一〜 

    「私はあなたを嫌っているのではない、人間の愛情の表現は決して肉体のものではなく、人間の最後の住みかはふるさとで、あなたはいわばそのふるさとの住民のようなものだから、などと伊沢も始めは妙にしかめつらしくそんなことも言いかけてはみたが、もとよりそれが通じるわけではないのだし、いったい言葉が何者であろうか、何ほどの値打ちがあるのだろうか、人間の愛情すらもそれだけが真実のものだという何のあかしも有り得ない、生の情熱を託すに足る真実なものが果たしてどこに有り得るのか、すべては虚妄の影だけだ。」

    頁一六四〜 
    「私は女が肉体の満足を知らないということの中に、私自身のふるさとを見出していた。満ち足りることの影だにない虚しさは、私の心をいつも洗ってくれるのだ。私は安んじて、私自身の淫慾に狂うことができた。何物も私の淫慾に答えるものがないからだった。その清潔と孤独さが、女の脚や腕や腰を一そう美しく見せるのだった。」

著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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