家族八景 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101171012

感想・レビュー・書評

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  • 2022.11.4 読了。
    目の前の人の心の中を読み取ってしまうというテレパシー能力を持ってしまった住み込みお手伝いの火田七瀬が様々な家庭を転々として働く8編の短編小説集。

    心を読む能力を持つ少女のSF作品かと思って読み始めたら、SF?ミステリー?深層心理学?ホラー?と色々な要素てんこ盛りという感じだった。逆にSF感は少なめに感じたし、この作品が約50年前に執筆されたのは凄いと思う。家庭内における男女の立場や社会背景は少々違えども人間の内的思想を包み隠さず表現しているのは現代でも充分面白いのではないかと思えた。
    自分にはちょっと性的(心理)描写が多めでその辺りは少しばかり読んでいて疲れた。

    ちなみに有名だという「七瀬ふたたび」のことは全然知らずに読んでいました。

  • 40年以上前に書かれたとは思えないほどの斬新さ。関係性の中に現れる人の心の歪さ、醜悪さ、そしてそれ故の動物的な美しさは、今の時代も差程変わっていないように思う。
    普遍的であるが故の真新しさをここに見た。面白い。

  • 面白かった。人間の汚い部分が明るみに。夢中になった。

  • 思いの外時代を感じた。数十年前の話とはいえこんなにも考え方が違うとは。当時の世相がわかって面白かった。

  • 人間のことを刺激的に表現するので、爽快でもあり、自分のことを言われているようでこっぱずかしい。

    18〜20歳のくせに精神的に成熟しすぎてて、自分を省みて恥ずかしくなった。テレパシーは使えないけど、もっと大人になろうと思った。

    みんな七瀬のことナナちゃんって呼んでたけど、ナナちゃんって呼びたくなるような外見なんだろうか。自分も欲混じりの声でナナちゃんって呼んで、侮蔑の目でみられるんだろうな。それもまた一興。

  • 太宰治に続き、久々の小説。うすら寒い。でも、次々読みたくなる!

  • なかなか面白かった。子だくさんの汚い家の話が1番嫌だった。

  • 2017年12月30日読了。読心能力者(テレパス)の七瀬が住み込みのお手伝いとして転々とする8家庭それぞれが見せかけの下に隠した真の顔と、七瀬の関りにより発生する変化の結末は。筒井康隆の「七瀬三部作」の第1弾。超能力版家政婦は見た、という感じで、いちいち悲喜劇的な結末を迎えるそれぞれの家庭が悲惨。考えていることと行動が違うのは誰でもそうではあるが、このお話の8家庭はどれも極端…。もし七瀬が読心能力を持たなかったとしても、どの家庭での仕事も結局はうまくいかなかったのではないか?とはいえ精神感応能力の描写など、よくまあ想像力だけでここまで迫真のストーリーが書けるものだと感心する。面白い。

  • テレパスの能力で他人の心の中が
    見えてしまう七瀬が、
    お手伝いさんとして
    様々な家庭の内部を覗き見る話。

    テレパス能力があったら便利だなぁ
    なんて思っていたが、
    七瀬の身に降りかかる
    人間の汚い内なる心を
    これでもかと見せつけられると、
    超能力なんて持ってなくて
    良かったと安堵した。

    8編全ての家庭で、
    七瀬は幸せな女中生活を
    送ることが出来なかったが、
    それでも筒井さんの紡ぎ出すストーリーは
    時にコミカルで、
    きちんと読者の溜飲を下げてくれ、
    時間を忘れて読み耽った。

  • 大昔に読んだことがあるのか無いのか記憶が定かでないので初読状態と言って差し支えなし。
    住み込みお手伝いとかフロイト的設定とか確かに時代を感じさせるものはありますが、当方の生まれ年より前の作品とは正直思えない。今でも十分に読めます。
    結局七瀬が一番の悪人って気がする、心を覗かれる登場人物はやはり小市民でしょ。主人公を傍観者的立場に設定して良い意味で上手く誤魔化しているが、結構毒ありますよ。
    ちょっと筒井康隆に立ち戻ろうかな?

  • めちゃくちゃ面白かった。他人の心が読める主人公の話であるが、「他人の心が読める」という仕掛けが上手に仕掛けてある短編集であった。「他人の心が読める」というだけで、こんなにも面白いオチが作れるものかと感心したほどだ。

    また、主人公は家政婦なのであるが、この設定も面白かった。家政婦であることで、心の読める主人公が様々な家庭を渡り歩くことができるし、また色んな形の「温かい家庭」を片っ端からぶっ潰していくことができるからだ。そして実際そうで、私の家庭が不安になったほど、真に迫っていて、とても面白かった。

    検索してみると、なるほど何度も映像化されており、筒井康隆の代表作でもあるようだ。そら面白いはずである。

  • 筆者自身で「家庭」と「テレパシー」という縛りを附し多彩な表現を試みた筒井氏の作家としての才能と遊び心が伺える。本文もさることながら各章の題名に筒井氏のセンスが光る。

    火野七瀬というキャッチーなモチーフを置きつつも、描かれるプロットと心理描写は巧みで深潭だ。傍目からは順風満帆な家族の、危うくも絶妙なバランスで保たれる情景をテレパシーというフィルターを通して筆致する。とある瞬間に崩壊する脆さの描写の一つひとつが快闊そうで繊細で計算された構成となっている。

    「住み込みの家政婦」という設定を除けば40年近く前の作品とは思えない洗練された輝きを放つ良作である。

  • さくさく読める。
    心の中が読めるお手伝いさんの話。
    人の心を読んでいる描写?のなかで、その人がヒートアップしてくると、もう文章じゃなくて単語がわーっと連なってたり、そういうのはなかなか面白かった。なるほど…って感じ。けっこうな迫力。
    最初から一気に読むと、心の中読みすぎて胸糞が悪くなってくる。

  • 時をかける少女しか知らないけど
    名前はもちろん知ってる作家さん
    学生時代にキライだった教師が推していたので
    ぜってー読まねーと敬遠していた本を
    安さにつられて買ってみた

    文字がでかいのでさくっと読める
    結構古い作品なのでちょっと今とズレてるところもあるけど
    「青春讃歌」は今もこういう風潮があるので非常にヨカッタ
    あーでも、今はG.G世代をいかに攻略するかの時代でもあるから
    やっぱり違うといえば違うかなー
    いやいややっぱり書いてあることはスゴクよくわかる

    この1篇だけで星3つにする
    あとのはそんなに好みのお話ではなかったです

  • 七瀬の能力が羨ましいと思う反面、恐ろしくも感じ、自分に人の心が読める能力が備わっても、七瀬ほど精神的に強くないから、すぐに発狂してしまうんだろうな。七瀬の何もかも悟ったクールなところが魅力的。

  • 人間って、怖っ。

    40年前の作品と思えない面白さ。

  • 筒井康隆さんは天才!
    読者は従うのみ
    以上…
    2013 1

  • 火田七瀬。テレパスの能力を持つ家事手伝いの少女。
    それぞれの家族にまつわるお話。
    水蜜桃と紅蓮菩薩に圧倒される。二編の最後に鳥肌が立った。
    恐ろしいし、人間の嫌な面ばかり見るはめになるけれどどこか物悲しくもあって、ページを捲る手が止まらなかった。

  • ドロドロしてる。

  • ドラマ視聴後読み始めました。

    全体的に救いがない話ばかりですが、
    それもまた魅力的。
    主人公の性格もすごく良かったです。
    ただ全体的に主軸は同じなので
    少し飽きるかもしれません。

    「亡母渇仰」のラストのシーンは
    期待通り好物でした。
    あれを読ませるための本だと思いました。

  • 幸か不幸か、生まれつき人の心が読めてしまうテレパス、火田七瀬18歳。
    お手伝いさんとしてたくさんの家を転々と渡り歩く彼女が抉り出した「家庭」の虚偽と醜悪さ。。。タイトルの「家族」という言葉から予想したヌクモリティは皆無の仕上がりになっております。

    「家政婦は見た」エスパー美少女編。実写化するなら市原のえっちゃんでなく、堀北のまきちゃんにでも演じてもらいたいところ。「家政婦のミタ」もヒットしたところだし。

    と思ったらすでに何度かドラマ化されているらしい。

    「ザ・筒井康隆」、シニカルでブラックです。。。
    もうね、出てくる家族がことごとく酷い!

    多分同じ題材でも本多孝好さんならきっと繊細で傷つきやすい性格の七瀬を描くだろうなぁ。筒井さんの七瀬はクールな鉄火面タイプ。

    「七瀬ふたたび」や「エディプスの恋人」でもこの七瀬ちゃんが活躍しているそうで。機会があれば読んでみよう。

    またしてもRADWIMPS「最大公約数」の「パパとママが 心だけは隠して生んでくれたのにはそれなりの理由があった」を思い出し・・・。ちょっとくらいは相手の気持ちに敏感でありたい気もしますが。

    大先輩でもある筒井氏には今後とも頑張って執筆していただきたい。

  • 人間の叡智を超えた次元、科学と迷信の中間、知性の山と恐怖の谷のあわいの住人。七瀬の存在というのはそういったものかもしれない。人々の垂れ流すだけの猜疑心と欲望を、一人客観的に観ている彼女の存在にはぞっとすることもある。私の隣にいる彼女もそうかもしれない。その恐怖を読みながら感じるも、自身の中の独り言には歯止めが利かない。ただ、それを客観的に見つめている自分に気が付くことが出来た点においては、この作品は大きな価値がある。

  • 七瀬ふたたびシリーズ。
    何度もドラマ化されている作品だしやっぱ面白い。
    テレパス、サイコキネシス、タイムスリップ、予知とか、いろんな種類の超能力者が出てくるとこがいい。
    確かに心が読めるのは知りたくないことも知ってしまうし、思想と行動がバラバラの人だと偽善的に感じたり、不信になって、人に関わるのが嫌になるかも。

  • 人の心が読める家政婦の七瀬ちゃん18歳が、いく先々の家庭の話。
    どこの家族もドロドロしてる。後味悪いはなしも多い。
    人の心が読める事による苦しみや辛さもあるようだけど、七瀬ちゃんもなかなかの毒をもっている所が面白い。
    ちょっと引っ掻き回してやろうかしら?どうなるか実験してみよう。とか言って、人の恋路を操ってみたり、浮気をばらしたりする。
    かわいい。

    内容的にはそんなに面白くなかった。短編みたいで読みやすいけど、ただ後味が悪いという救いのなさがちょっと合わなかった。

  • 人の心を読むことができる少女・七瀬が家政婦としていろいろな家庭へ出向き、渡り歩く。いわば「家政婦は見た!の超能力少女版」。

    タイトル通り八篇の短編小説集なんだけど、いやーひどいな!
    八篇ということは八家族が登場するわけだけど、まともな家族がひとつもない。すべての家での後味が悪い。
    語りぐさになっているラストのエピソードはまた格別だった。若夫婦と姑という家に姑の看病要員として雇われる七瀬だけれど、エピソードは姑の葬式から始まる。旦那のマザコンぶりにドン引きしてたら、なんと棺桶の中で姑が生きていることが判明。
    火葬場で焼かれていく姑の、嫁と七瀬(嫁はともかく七瀬は完璧にとばっちりであり勘違い)への恨みつらみを七瀬はテレパスで受信しつつ、それでも言い出せない。言い出すことで姑が「生きながら焼かれる」ことはなくなるけれど、それをするには自分がテレパスであるということを話さなければならない。
    結局七瀬は自己保身のためにひとりの命を見捨てて、そして最終的には「母親(姑)が死ななければ息子(旦那)が自立できないから仕方がないんだ」と自分のエゴに綺麗な嘘を貼り付ける。いやー筒井康隆ひどいね!

    後味の悪い話はいろいろと読んできたけど、「どこにでも転がっていそうな」後味の悪さというのはまた格別だった。

  • 初めてこれを読んだ(確か)中学生位の時。「人の心が読めなくてよかった」と単純ながら思ったことを覚えています。

  • 読んだのは、25年位前。私が図書室に勤めだした頃。
    これを描いた筒井康隆氏って凄い!!
    って驚いたのを覚えている。
    当時、この本を非常に気に入った生徒がいたのを思い出したことと、最近またドラマ化されたと聞いたので図書室に購入。
    だけど、この表紙では自ら借りる生徒はほとんど皆無。
    3年生男子数人に無理やり借りさせたら、
    数人とも“割と面白かった”だって。

  • 高校の課題図書で、初めて読んだ筒井康隆の作品。
    なんでまたコレが課題になるかね。自由な学校だったんだなあ。

  • テレパスの話は数あれど、生の人間感情を描いた本作はなかなかにえぐい。

    やはり、この世で一番エグいのは生の人間感情なのかなぁ…

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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