家族八景 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171012

感想・レビュー・書評

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  • H30.6.7 読了。

    ・エスパーで家政婦の七瀬が主人公の短編集。死の直前や精神崩壊の直前の描写が印象的でした。この小説が昭和47年に書かれたものと知り、驚きました。
    イドや超自我など心理学に興味を持ちそうなキーワードがちりばめられてます。
    個人的にはそれぞれの短編の後味が悪いのが残念でした。

  • 家族八景は多分中学生のころ、夏休みの読書で何を読むか迷っているところに、友達の誰かが面白いからと勧められた記憶があります。天邪鬼な私は勧められると従わないタイプなので他の推理小説(横溝正史?)を読んだ気がする。
    そんなこともあり、筒井康隆氏を嫌っていたわけでもないのに、時が経ちこの歳まで読まずに来てしまいました。

    七瀬は住み込みのお手伝いさんとして、いろいろな家族と接することになるが、テレパス能力があり、人の内面の感情や思ってることが理解できてしまうので、あるときは自身の防衛のために役立てられるが、能力を知られると異端とみなされ危険が伴うので悟られないように気を付けて生きていかねばならない。

    章が進むにつれて、七瀬の怖さが際立ってくる気がした、最後の「忘母渇仰」は怖い。「七瀬ふたたび」につながっていくのだろうか。

    また、性的な表現も割と多く出てくるのが少し驚いたが、当時のウブな中学生には刺激が強く友達はこの辺りが面白いと言っていたのかもしれない。

    「七瀬ふたたび」に続く。

  • 生まれながらにして人の心を読みとる能力を持った七瀬は、高校卒業後、自身の特殊性がバレないようにとあえて住み込みのお手伝いをしている。しかし同じ家庭で働くのは中々難しく働き先を転々としている。その働き先におけるエピソードの連作短編集。
    夫々の家族は表向きはどこにでもありがちな家族構成だが、心の中を覗き込むと彼ら彼女らの赤裸々な感情が七瀬に飛び込んでくる。
    筒井康隆ならではのシニカルでコミカルな文体で、ぐくっとストーリーに引き込まれるのだか、ラストにくるのはカウンターパンチ。
    七瀬シリーズの一作目で、何度も映像化された不朽の名作だが通して読んだのは初めて。
    初出は昭和47年なのでほぼ半世紀前の作品で昭和の香りだが、所詮、人間の営みにおける悲哀や欲望は変わらない。
    個人的には、J・J、植草甚一の解説がボーナス的で嬉しかった。

  • ずっと気になっていた筒井さん作品。
    図書館で手に取った時、あまりにも年季の入った様相にびっくりしたけど、これまでにどれだけの人に読まれてきた本なのかと思うとそれだけでワクワクした。
    かなり昔の作品になるけど、時代を感じさせずどの話も面白く人間の恐ろしさや浅ましさが赤裸々に描かれている。
    人の心を読めるテレパシーだなんて羨ましい能力だと思うけど、知りたくもない他人の心を覗けば不用意に傷つけられたりすることもある。こんなにも人の狂気にばかり触れていたら、自分まで狂ってしまいそうだなと思うけど、冷静でちょっぴり残酷さもある七瀬のしたたかな振る舞いが良い。
    続編も出ているので合わせて読んでみたいと思う。

  • 人の心を読める家政婦、七瀬が、色んな家庭を転々としてそれぞれの家族の問題を目の当たりにする。

    フロイト的な心的構造を心理描写に自然に持ち込んでいて面白い。

    心理描写は、小説の登場人物か第三者的な語り手の視点で描かれることが多いけど、「心を読める」七瀬が主人公になることで、その両方がミックスされた視点が構成されている。

    さらに七瀬が自分の能力の出自を明らかにせんとして心理学を学んだ過去を持つことが、心理描写に心理学的な知見を当てはめることの根拠になっている。

    おそらく、第三者的な視点のまま心理学用語を用いていたら、よりスノブな香りのする文章になっていたのではないか。

    そういう意味で、心的構造を心理描写に自然に持ち込めているように思う。

  • ひとの心が読めてしまう少女・七瀬は自らの力を知り、試すためにもお手伝いを職として様々な家で住み込みながら働いていた。
    その中の8軒の人々のエピソードをまとめた1冊。

    元々ドラマを昔に観て、とても好きだったので手に取った本。
    ドラマはかなり原作に忠実だったんだな〜。
    人の心が読めてしまう七瀬にとって、住み込みで働くというのは興味深い反面とてもリスキーで、読みながら自分だったら?を常に頭の片隅に置いていた。恐らくもっと人をけしかけたり、コントロールしようとしてしまうだろうなあ。
    最後の亡母渇仰のラストが壮絶すぎて、もし自分なら狂ってしまいそう。

    生活の中で、相手の気持ちが分かればなあと思うことはままあれど、人の心が読めるのは幸せなのかね、不幸せなのかね。

  • 人の心が読めたなら、便利だろうなぁと思うのは普通の人だからか。始めてこの話を読んだとき、「幸せにはなれないんだなぁ」と思って七瀬がいじらしかった。まぁきっとここがヒロインとしての『落とし所』であり当時の私はまんまと『落ちた』事に大人になってから判った。

  • 面白かった。人間の汚い部分が明るみに。夢中になった。

  • 人間のことを刺激的に表現するので、爽快でもあり、自分のことを言われているようでこっぱずかしい。

    18〜20歳のくせに精神的に成熟しすぎてて、自分を省みて恥ずかしくなった。テレパシーは使えないけど、もっと大人になろうと思った。

    みんな七瀬のことナナちゃんって呼んでたけど、ナナちゃんって呼びたくなるような外見なんだろうか。自分も欲混じりの声でナナちゃんって呼んで、侮蔑の目でみられるんだろうな。それもまた一興。

  • 筒井康隆の本を読むのは初めてな気がする。

    読み始めて暫くしても、
    全然違和感はなかったのだが、なんと1975年の作品のよう。
    自分が生まれる前の作品とは感じさせないのはさすが著名なSF作家だからか。

    内容は皮肉が効いていて中々、面白かった。
    筒井康隆の代表作は時をかける少女だと、
    wikiを調べて知ったので、これも今後当たってみよう。

    本のあらすじは、人の心を読むことが出来る超能力を持った少女が、家政婦(お手伝いさん?)をしながら、色んな家庭を渡り歩き、
    各家それぞれのねじ曲がった醜悪な人間模様を見て回るというもの。

    超能力をもった面白い主人公の物語なのだが、
    とにかく主人公の性格はとても褒められたものではない。

    まぁ一言でいうと度を超したのぞき趣味というか。

    わざわざ他人の心の醜い部分を読み取っては悦に浸っているようにしか見えない。
    人の心を読めるんなら、わざわざそんな疲れることをしなくても、
    楽に生きていけるのにと思う。

    タイトルのとおり、
    この小説は主人公の超能力を通して、
    家族の崩壊、いかに好き勝手なことを考えているかを描いている。
    大抵が相互の不信、不倫、金の問題などなど。
    エゲツない描写が面白い。
    多分30年前の筆者の問題意識なんかが反映されているんだろうけど、
    昔の家族も今の家族も考えていることは大して変わんないんだろう。

著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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