ローマ人の物語 (25) 賢帝の世紀(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181752

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  • 14代目 ハドリアヌス
    在位20年12ヶ月。
    ローマ帝国最盛期の皇帝。
    領土内をくまなく巡り、帝国の組織の再構築に尽力。

    この皇帝も、先帝のトライアヌス同様、全身全霊を帝国の統治業務に捧げた人。このような人物が続けて現れるとは。

    ハドリアヌスは30代後半の頃、10歳以上年上のトライアヌス帝の妻プロティナから気に入られ、それが皇帝への道の大きなきっかけになるが、作者はここで、10歳以上年上の女性から好きになってもらえる男の条件を掲げている。そんなことをわざわざ箇条書きにして書いてくれるのはもちろん塩野先生しかいない。

    「第一に美しいことである。ただし、容姿が美しいというよりは、美しい! と思わせる「美」のほうだ。
     第二は、若々しさ。これも年齢が若ければよいというものではなく、新鮮さが立ちのぼってくるたぐいの若さ(フレッシュさ)を指す。この種の若さをまったく感じさせない若者は多くいる一方で、若々しい中年に出会う率も少なくない。
     条件の第三は、頭脳が明晰であること。こうなると知識よりも知力(インテリジェンス)が重要視されるのは当然だ。年上の女は、次代の勝者になりうる若者を愛するのである。
     第四の条件は、感受性が豊かであることだ。ともすれば感受性(センシビリティ)を欠きがちな夫や同年代の男たちを見慣れているからこそ、想いが激しくゆれ動き、それを自己制御しようと懸命に努める男が好きなのだ。
     条件の最期は、野心家であること。ただし、世間を熟知した女の心でさえも刺激するのだから、出世したいとか金持ちになりたいとかの小さな野心ではない。いだく本人がその実現には誰よりも不安を感じている、大きな野望でなければならない。」(p32)

    う~む。そうなのですか。勉強になる。
    しかし勝手なこといっているなあという気も…。
    ただし、夫に求められる条件は、またこれとは違うので、注意が必要である。

    「右の五条件はそなえていなくてもいっこうに不都合ではなく、代わりに求めるのは物心ともの安定性の方だろう。」(p33)

    そうですか。いったいどうしろと。
    まあ、塩野先生と結婚するわけではないからいいんだけど。先生も今年で80だし。

  • ハドリアヌス帝の治世

  • この時代にここまでの文明を築き、現代に続くヨーロッパに多大なる影響を与えたローマ帝国。他の文章でも読んだことがあるけど、「ローマ人はどこへ行ったのか」つくづく思う。

  • トライアヌスの後を継いだハドリアヌス。偉大な先帝の後というのはチャレンジングなものだが彼はビジョンを描きそれに忠実であり続けた。
    そのビジョンというのは「帝国の安全を守り抜くには平和は不可欠である」ということ。領土拡大どころか戦争さえも、やむを得ない場合以外はやらないという気概。それを姿勢に伝えるために鋳造した通貨に自らの4つのモットーである寛容、融和、公正、平和の言葉を彫らしている。ビジョンを掲げそれをブレずに伝える、正統なリーダー像である。
    また任期中の長い期間を外地に赴き現場を視察。危険な箇所には城壁を築いている。代表的なものがイングランド・ニューカッスルに築いたハドリアヌス防壁。福岡でいうと元寇防塁とか水城に当たるのか。見てみたい。

  • トライアヌスの後を継ぎ皇帝となったハドリアヌスは、就任直後、先帝の重臣を粛清し、市民の信頼を失っていた。しかし大胆な政策や改革を実施することにより人気を回復。そして皇帝不在でも機能する組織固めを確実にしたハドリアヌスは、紀元121年、念願の帝国視察の大旅行に旅立つ。目的は帝国の安全保障体制の再構築にあった。治世の三分の二を費やした、帝国辺境の旅。それを敢行した彼の信念とは。

  • ハドリアヌスも頑張りすぎ

  • ハドリアヌスの大遠征。やはり答えは現場にある。

  • ハドリアヌスの治世の前半の物語です。
    帝国内をくまなく旅し,再構築に努めたハドリアヌス帝の功績は,五賢帝の1人として選ばれているということと,この後の帝国がきちんと機能したという事実が何よりも示していると思います。もちろん,それができた前任者達の業績があってこそですが。

  • 賢帝の時代 トライアヌスを引き継いだハドリヤヌス帝の治世が綴られてます。

    この方の治世で感嘆すべきことは、国の守りとしても皇帝の支持基盤としても大切な前線都市と駐屯地をくまなく巡り、まさに帝国全土で磐石な体制を作り上げたことにあります。

    といっても帝国全土を巡るとなると今でいう、スコットランドースペイン北東部ーチェニジアーエジプトーシリアー黒海ードナウ河ーウィーンーライン河ーイングランドースコットランドを結ぶ広さですから、移動が馬の時代にこの広さを思うだけでもただただ感嘆に値します。

    前線や辺境の都市を慰問し、ボトムでの信頼の厚さは、即ち国境と軍を安定させ地方を活性化させたでしょうし、ひいては地方から帝国が安定しただろうことは想像に難くないところです。皇帝がわが町に来たとなれば、それだけで盛り上がるでしょうから・・・。この行いは現代の我々からも見習いたいところです。

    ただ1点不思議なのは、これだけ長くローマというかイタリア半島を留守にして政治が乱れなかったことです。おそらく完全に軍とローマ市民を掌握していた自信でしょうか。

    それにしてもすごいヒトです。
    あまりに手堅すぎて読んでいて、わくわくはしませんが・・・

  • 皇帝ハドリアヌス前段

    視察旅行での行動は、監査巡業でも似たようなことをやっている気がする。

    なぜにギリシアが衰退したか(頭脳流出による国内経済の低迷)。
    それに対するハドリアヌスの対応は?(学芸、観光による再興)

    ローマのエリート育成コースは、なんとなく現代の公務員の制度に残っているようないないような。
    ひょっとしていわゆる大企業でも似たようなやり方があるのかもです。
    この辺、比較してみると、永続する組織における後進育成のヒントが得られそう。

    最後に、自らの担当地域のみ知る人は、その担当地域の防衛すら十全になしえないという言葉。監査でも他の仕事でも同じことがいえますね。狭くなってはダメ。自分の担当はこれだからと自ら領域を狭めているようでは、もったいない。

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