- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101201429
感想・レビュー・書評
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「アレグリアと〜」と似た感じで、主人公が仕事を進めていくなかで少し不思議な、ファンタジーっぽい出来事が起こる。5篇とも仕事場の雰囲気、同僚の人柄が違っていて、それがしっかり伝わってくるのが凄いな〜と思った。津村さんの小説は主人公の心の中で毎度率直な反応やツッコミが入るのが好き。1番気に入った話はおかきの袋の仕事。
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風変わりな仕事をおもしろく紹介する本かと思って読んだら、とても良い小説でした。
また1〜5話までお話は続いてますが、1話につき1つの仕事で完結していて読みやすいのに読み応えがあります。
主人公の地味な生活や職場での出来事を描いていて、華やかなことは何もおこりませんが、それがとてもリアルで不思議と退屈になりません。
独特のユーモアもあり、声を出して笑ってしまうところもいくつかあり、最後はちょっとじんとしました。とてもよかったです。
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仕事は辛いが、やりがいがないわけではない。人間関係もそこまで悪くはない。今まで通り、一つ一つの山に取り組んでいけばいいだけ。
ふとしたことで、燃え尽き、そんな毎日に戻れなくなることがある。それが主人公だ。
様々な職種を体験し、次に向かおうとする背中をそっと支えたくなった。
第4章の『さびしくない』については、ありそうな話でぞっとした。 -
世にも奇妙系
色んな仕事があるなぁと、、
色々してみたいな -
『ケアの解体と再構築』という本のタイトルに反応した主人公。もしかして私と同じ仕事なのかなとそんな予感がした。本の最後で主人公が逃げるように辞めた仕事はソーシャルワーカーの仕事だったことがわかる。私と同じ仕事。この本との出会いに運命的なものを感じる。
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煙に巻かれるようでありつつも、働くことについてしみじみ考えてしまう物語。
ストレスが溜まって退職したがゆえに、穏やかな仕事を探す「私」。職安で紹介されるのは確かに希望通りであるはずなのに、スルーできない"ふしぎ"を引き起こす人がいたり、つい仕事にやりがいを見出して頑張りすぎそうになったり、かと思えばそれを横取りされたり・・・(藤子おばあちゃんはまあまあ怖かった)
なかなか続けられるビジョンが見えずに職場を転々とするさまは、こらえしょうがないとも言えるけれど、その理由や心情をつぶさに読んでくると、「いやこれは仕方がないよな」「これを我慢してまで働くのはちょっとな」とも思える。今までに自分が見てきた"大した理由もトラブルもなさそうなのに辞めていく人たち"を思い起こす。私にとってはなんでもなかったことが、その人たちにとっては考えるべき問題だったということなんだな・・・。
それにこの物語の私は真面目だし仕事に熱意を持つことができる。それだけで十分評価されていいのだ。転々としている、ということはまた別の側面として見なければいけないんだな、と思う。
そんなマジメな感想を抱きつつも、半分以上は「おもしろい!」と思って読める津村節はすごい。5話『大きな森の小屋での簡単なしごと』がとくに好き。サッカーチームのあれこれが絡んでくるのが面白い。 -
面白いなぁ。サクサク読んでしまった。主人公がやったいくつかの仕事、こんな仕事が本当にあったらやってみたい。きっと主人公のようにいろいろな面を見ていろいろ考えてしまうのだろう。私もこれまでにいろんな仕事を体験してきたけれど、大抵の仕事って…そういうことだよなぁ。
最後の話はちょっとミステリーっぽくてドキドキした。そしてラストはなんだか自分のことを言い当てられてるみたいで、ちょっとなんだかなぁと思ってしまった。 -
あまりにも仕事がいやでゲンナリしていたところ本屋でこの本と目が合った。私もコラーゲンの抽出を1日見守るような仕事がしたいよ・・・わかるわかる・・・と友達と愚痴を言い合うような感覚で読めて、読み終わったあと少し気持ちが軽くなった。
主人公は36才女性、新卒から14年間勤めた職場でバーンアウト、できるだけ淡々とした仕事がしたいと職安で相談に乗ってもらいながら転職を重ねていく。ちょっと不条理なシュール系の「みはりのしごと」や、不思議な力がはたらく(?)「バスのアナウンスのしごと」を経て、かなり実績を残せたんじゃないかという「おかきの袋のしごと」(これ難しいけど楽しそうだったなー)、ポスターを貼るだけのはずの「路地を訪ねるしごと」では思いがけず怪しい新興宗教のような団体『さびしくない』と戦い、森林公園で見回りするだけの「大きな森の小屋での簡単なしごと」では行方不明者を発見するなど、だんだんパワーを取り戻していくかのように主人公が活動的になり(まるで有能な探偵のようでもあった)いつのまにかなんとなく、そこにあったはずの答えに辿り着くのが、気負い過ぎず、プレッシャーもなく、心地よかった。
先日たまたま平日にあまり混まない美術館に行った際、監視のために部屋の隅っこに座ってるお姉さんや、全然お客のこないミュージアムショップの店員さんを見て「羨ましいな、こういう仕事がいいな」とつい思ったりしたけれど、美術館の片隅の椅子にずっとじっと座っているだけなのも実際にはしんどいだろうし、しょせん隣の芝生が青く見えているだけ、「この世にたやすい仕事はない」まさに至言だと思います。
仕事の内容、環境、通勤、待遇、人間関係、なにひとつ不満なく快適に働けてなおかつ経済的にも安定する夢のような仕事なんてきっとこの世にはないだろうなあ。がんばるしかないか。
津村記久子の文体は、読み手に圧をかけない不思議な力の抜け具合があって、疲れているときに読むのにちょうど良かった。それでいてフラメンコ教室の「ハビエル・バルデムが好き?」には思わず爆笑してしまうなど、随所に笑いのツボも隠されていて、今まで『ポトスライムの船』しか読んでいなかったけど他の本も読んでみようかなと思いました。