ボトルネック (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287812

感想・レビュー・書評

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  • まるで映像を見ているかのような描写に魅了されて、一気読みしてしまった。

    自分が存在した世界と存在しなかった世界。

    主人公が両方の世界を知り、対比することで知る自分の存在価値。

    読者に委ねられる結末は、ボトルネックというタイトルから私としては最悪の結末を【想像】して胸が苦しくなった。

  • めっちゃ酷な…
    確か崖から落ちたはずやのに…
    気がつけば、今までとは、微妙に違う世界に飛ばされる。(パラレルワールドやな)
    そこは、自分自身が存在しない世界。
    代わりに違う人がおる。(姉?)
    その姉の存在が自分のいた世界との違いを生んでそうな事に気づく。
    それも、自分の世界より、ええ感じになってそう…自分は要らん?ボトルネック?
    と本人は思ってる。
    そんなん、隣の芝生は青く見えるだけやって!
    お父さん、お母さんのギクシャクした関係は、2人の問題!兄貴も!ノゾミも!
    そんなもん、当人の問題や!
    って考えられる人なら、こうならんか…
    やっと、もとの世界に帰って来たと思ったら…
    お母さん〜! アウト!ʅ(◞‿◟)ʃ

  • ずいぶん昔、テレビで観たコントは秀逸だった。
    ウッチャンこと内村光良扮するサラリーマン風の男が、颯爽と登場して道端に落ちている空き缶を一つだけ拾って去っていく。ただそれだけ。
    しかし空き缶が拾われずそのままの未来では、風が吹いたら桶屋が儲かる式に現象が連鎖して、最終的にはタンクローリーがガソリンスタンドに突っ込んで大惨事となる。
    ウッチャンは実は世界を救うヒーローで、事件や事故の原因となる「芽」を日夜摘んでいたのだ。
    しかし誰も彼がヒーローであることを、ましてや世界が彼の手で救われていることを知らない。

    バタフライ・エフェクトなどという言葉を知る由もなかった僕は、笑うと同時に大きな衝撃を受けた。

    日常の自分の些細な言動がどれほど世界に影響を及ぼしているのか。「世界」が大き過ぎるのなら、自身の人生とその周辺にどのような変化をもたらすのか。考えてみると、面白いと同時に恐ろしくもなる。

    嵯峨野リョウ。
    友人の弔いのために訪れた東尋坊で不意に平衡感覚を失う。
    ところが気がつくとそこは金沢の街。
    自分が「生まれなかった」世界で出会った「生まれてくるはずだった」姉。
    「間違い探し」の過程で遭遇する事件の予兆。

    パラレルワールドものでありながら浮ついた感じがない、現実と地続きの米澤穂信の筆致。
    そして伏線の張り方と不可解な状況の解きほぐし方は、まさにミステリのそれ。再読して唸る。

    読者自身をも東尋坊に投げ出すかのようなラストには驚いた。
    しかしラストを「絶望的」に解釈するブクログユーザーさんが多いのにはもっと驚いた。
    僕自身は「決別」と「最初の一歩を踏み出す勇気と希望」の物語だと読んだからだ。

    浦沢直樹の『MONSTER』や東野圭吾の『白夜行』のように、ラストの解釈によって余韻や物語の意味合いまで変わってくる。
    あのシーンは、嵯峨野リョウにとっての「分岐点」であり、読者にとっての試金石だと思う。
    当然そういうことも織り込み済みであり、僕らはまんまと作者米澤穂信の術中に嵌まっているのだろう。

    • kwosaさん
      アセロラさん

      コメントありがとうございます。

      そう、そのウッチャンのコントは当時の自分には衝撃的で、ずいぶん昔のことなのにいまだに覚え...
      アセロラさん

      コメントありがとうございます。

      そう、そのウッチャンのコントは当時の自分には衝撃的で、ずいぶん昔のことなのにいまだに覚えていますもんね。

      『ボトルネック』
      僕は面白く読んだのですが、もしこの本が「ファースト米澤」なのであれば、ちょっとビターな味わいに次を控えてしまうかもしれませんね。
      是非、他作品もいろいろ手に取ってみてください。
      2013/02/05
    • 九月猫さん
      kwosaさん、こんばんは。

      コメントでは、はじめまして。九月猫と申します。
      フォローしていただき、ありがとうございます。
      また『...
      kwosaさん、こんばんは。

      コメントでは、はじめまして。九月猫と申します。
      フォローしていただき、ありがとうございます。
      また『ライフ・イズ・ビューティフル 』にうれしいコメントまでいただき、ありがとうございます!
      (そちらにもお返事書かせていただいています♪)

      米澤穂信さんの作品、小市民シリーズと古典部シリーズが大好きなのですが、
      この『ボトルネック』は出だしで「あれ、テイストが違う?」となり、
      さらに他の本に気をとられ、数ページ読んだまま放置中です(^-^;)

      でもkwosaさんのレビューを読んで、こんなに面白そうなお話なんだ!と
      読みたい気持ちがぐぐぐーんと!!
      積読山に戻さずに、すぐ読む予定山にあるので(どちらにしても山なのですが;)、
      近いうちにちゃんと読んでみようと思います。
      ラストの解釈、どちらに受け取るのか・・・楽しみです。

      素敵なレビューがたくさんのkwosaさんの本棚、こちらからもフォローさせていただきました。
      これからどうぞよろしくお願いいたします(*_ _)ペコリ
      2013/03/31
    • kwosaさん
      九月猫さん

      花丸とコメント、そしてリフォロー! ありがとうございます。

      米澤穂信さんは僕も大好きな作家で、小市民シリーズはすべて、古典部...
      九月猫さん

      花丸とコメント、そしてリフォロー! ありがとうございます。

      米澤穂信さんは僕も大好きな作家で、小市民シリーズはすべて、古典部シリーズは『クドリャフカの順番』まで読みました。
      これら二つのシリーズは、青春のほろ苦さをカラフルな糖衣でくるんで上質なミステリに仕立て上げた感じですよね。
      でも米澤さんって、結構カカオ純度高めのかなりビターな物も書きますので、ひとくち味わって食べ残してしまう気持ちもわかります。
      全部の作品を読んだわけではないのですが、それでも総じてクオリティは高いので、他も手に取ってみてはいかがでしょうか。

      それにしても、積読山と予定山。いいですね。
      僕も予定山をつくっているのですが、いつの間にか積読の雪崩に浸食されていたり、掃除の時に妻にかってに並べ替えられていたりでなかなか......
      水木しげるとゲゲゲの女房みたいになっています。

      こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
      楽しい本の話がたくさんできると嬉しいです。
      2013/04/01
  • はじめは不思議な話だなと感じていた。間違い探しをする度にサキの生きる世界がリョウにとって自分の存在意義を否定することに繋がる。絶望しかない。最後のメールからどう解釈するかは読者次第と言われているがいずれも辛い選択だったと思う。

  • 救いようがなく、悲しい気持ちに…。
    米澤穂信作品には、必ず1人ナチュラルにサイコなやつがいるよな。笑
    金沢に縁があり4回ほど訪れているので、小説の中に出てくる金沢の街や情景が目に浮かび、また金沢を訪れたくなりました。

  • す、すごかった……。
    畳みかけるような人格否定にくらくらした。そんな辛いことってある……?と思いながらクライマックスへ向かっていたら、最後の最後の2行の落とし方が最悪すぎて完璧。最高でした。

  • 「自分のいなかった世界」に飛ばされ、間違い探しをしながら自らの存在意義を確認していく嵯峨野リョウ。

    自分は、ある人の存在は誰かにプラスの影響を与えるか、マイナスの影響を与えるか、それとも無影響なのか。これまで「無」だと思っていた自身の存在がマイナスに働いていた事実に絶望したリョウは次のどういう行動を取るのか?

    私はリョウは自殺という道を選ばないと思う。無関心というのが一番辛いように、人への影響が無ということはあり得ないと分かったことが、まずは大きな「成長」であり、彼の存在がプラスに働いているケースもあるはずである。取り返しのつかない道のりにはまだまだ巻き返せる選択肢もあると考えることが踏み出す一歩となるのではないだろうか。

    サキによって、考えたくもなかったことを考えさせられたという点など随所に成長物語としての一端が見られる。

  • 崖から落ちたはずなのに、気がつけば見慣れた街にいる。そんな非現実的な出来事から始まる物語は読んでいて最初からワクワクしっぱなしでした。
    時折登場する恋人の従妹の怖さが米澤さんらしいなとも思いました。

    私も4兄弟で弟や姉がいますが、もし自分が生まれていなかったとしたら、もし他の兄弟の誰かが生まれていなかったとしたら、他の兄弟の人生は違ったのかと思うと不思議な気持ちになります。
    運命(人生)は最初から決まっている。全ては必然である。と聞いたことがあります。不遇の事故で亡くなったとしてもそれは最初から決まっていることであると。
    そう思うと、全ての選択は最初から決まっているのであれば、世界に分岐点は存在せず、似たような世界線は存在し得ないのですかね?いわゆる作中のような並行世界が存在しないというわけですが。
    考えれば考えるほど不思議な気持ちになります。今こうしてボトルネックの感想を書くことも運命づけられていることなのだろうか。

  • 面白かったです、設定もリョウとサキの対比も。
    ずっと鬱々としているリョウ。
    リョウはサキと出会って嫌でも客観的な視点で自分の存在価値について向き合ってしまい、そして劣等感爆発。
    サキは快活で気持ちのいい性格だけど、陰からすると眩しすぎるし、結果残酷だった。
    めちゃくちゃイタイところを突いてくる米澤さん。


    リョウを救ってやりたいという気持ちで妄想を膨らませ読後に浸る

  • 前2冊が「感涙」と「驚嘆」だった。
    味なら、「甘味」と「旨味」。

    今回も先入観無く読み始めた。
    200ページ読んでも感じるのは「苦味」。
    それも読了後、舌先に深い苦味が残るタイプだった。

    「次も」と勝手にハードル上げていた自分に良いアクセントだった。
    ここまで狙い通りだったとしたら、坂本さんって一体何者・・・。

    救いばかりが本じゃないと思い知らされた。

    作者が付けた「ボトルネック」。
    最初は唐突感のある用語の登場シーンや使い方には共感できなかった。
    でも読み終えて深い題に思えた。

    流れを窄めれば後の勢いが落ちる。
    狭窄の極みは停止。
    主人公の性格、追い込まれる気持ち、東尋坊までもボトルネックにかかっているとしたら。

    後半のグリーンアイドモンスターのくだりが雑に感じたので星4つ。

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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