凍える牙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 513
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425207

感想・レビュー・書評

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  • こちらもこの前TSUTAYAで買った。色んな棚に何冊も置いてあって、値段も100~300円台あった中、安いやつで比較的きれいで出来るだけ版が新しいものを選ぶ。
    久しくご無沙汰の音道貴子シリーズだが、短編集ばかり読んでいて肝心のこの本を読んでないままだったのを、少し前の朝日の別刷りに載った『記憶に残る平成の直木賞作品』を見て思い出した次第。
    それにしても、初出が1996年というお話、刑事の連絡手段がポケベルというのが時代を感じる。もうすぐ終わる平成だが、年月の長さ以上に生活様式が劇的に変化した時代であったなぁ。

    ファミレスで食事をしていた男が突然火だるまになり焼死するという事件を、滝沢と組んで調べを進める貴子さん。
    直木賞の選評を読めば、「主人公の男女の刑事の人間関係」とか「主役と狂言回しとをかねた二人組の警官の人間創出」という字句が並び、男性刑事と組んで互角以上に活躍する女性刑事物として先駆的エポックメイキング的作品であったことが知れる。
    貴子さんの男も惚れ惚れする格好良さやそれでも失われない女性らしさはこのシリーズの特徴ではあるが、一方、中年男の滝沢との関係を今読むと、その肩肘張った描き方には些かの古めかしさは否めない。
    この歳月の中で女性の社会進出や地位向上は遅々としてでも進んだことを踏まえれば、ここでも平成は年月の長さ以上に色々なことが大きく変わった時代であったことを改めて思う。

    最初の事件に調べが遅々として進まない中、今度は獣に襲われて死亡する事件が次々と起きるという展開よりも、貴子さんと滝沢のやり取りに字句が割かれるお話は、その肝の部分が古さを感じさせる分、今となっては多分にこの作品の価値を減じているようには感じる。
    それでも、終章、バイクでオオカミ犬を追走し追い詰めていく描写など、この作者やこのシリーズらしい抒情に溢れ、エピローグも含めて、この作品の印象を良いものにしている。

  • 時限発火ベルト殺人事件で音道刑事と滝沢刑事がペアを組むが、女性とおっさんで気持ちは通じ合わない。
    もう一つの主人公として、オオカミ犬のハヤテが挙げられる。もちろん犬なので喋れないけど、知能、運動能力、気に入った人への振る舞いが上手く描かれていてる。
    事件の終盤では滝沢が音道に一目置き始めてきてるが、互いに認め合うような言葉を交わすこともなく別れるところと、ハヤテが人の指示だけでなく、自らの意思を貫いたところがいい。

  • 著者は1960年生まれで、この作品は1996年に出版されたようなので、著者が36歳位の時に書かれたものである。

    長い作品だなあ、というのが正直なところで、飛ばし読みで読了とした。

    この作品では、組織内での女性蔑視感とでもいうものが書かれており、セクハラ的な発言も多々出てくる。
    20年前の作品だからそんなものだろう、という見方もあるかもしれないが、それにしても違和感はぬぐえない。
    もちろん、今にしても、組織内での女性の立場が、男性と平等かというとそんなことはないと思う。ただ、あからさまにセクハラ的な発言をすることは減っているだろうが。

    この作品には、女性刑事、音道貴子が初登場している。
    そして、直木賞受賞作とのこと。

  • 新刊で読んだ時以来の再読。
    新刊の時に、ドキドキしながら読み進めた事を思い出しました。
    その頃、物語の事件現場の近くに勤めていたこともあり、忘れられない作品の一つです。

  • 直木賞受賞作と聞いて買った一冊。

    女性刑事の孤独なドラマだった。

    20年以上前の小説だが、この小説の男女差別感が今の時代に起こったら大変な騒ぎになるんじゃないかなとふと思ってしまった。

    話の中盤辺りからだんだんスピード感が出てくるようでワクワクしながら読めたが、終始付き纏う暗さというか、卑屈感?というか、孤独な感じがなんだか気になった。

    オオカミ犬を見てみたいなと思った小説でした。

  • 凄く面白いともいえないけど、読むうちに徐々に加速!かなり引き込まれた。
    また、社会に生きる女性の心理勉強になった。
    疾風…私はこのウルフドッグに物凄く共感してしまった。
    主人公の「皆、こうして生きてるのよ」の一言は「ですよねー」って言いたくなった笑

  • 音道も滝沢もそれぞれいいキャラだけど、なんといってもこの本の主役は疾風。生き様に惚れた。

  • 初めて乃南アサさんの作品を読んだ。
    思ったことを素直を羅列すると、
    直木賞を受賞した作品は面白いんだ
    90年代のセクハラひど過ぎ、自分が新入社員の頃、こんなにひどかったかと嫌悪
    主役は音道刑事だがオオカミ犬にも主演男優賞を!
    刑事物は大好きで竜崎伸也と加賀恭一郎に音道刑事を加えよう、シリーズ読んでみます。
    素晴らしい作品だった。

  • 警察小説マナーを踏襲しつつ、動物を加えて変化を持たせたのが良かった?

  • オオカミ犬?警察ものなのに?
    あ、ファンタジーかあと思った。
    いやすみません、そのオオカミ犬が主人公達を凌ぐ存在感となる。
    後半の疾走感たるや。
    オオカミ犬にとても会いたくなる一冊。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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