悪夢機械 (新潮文庫 テ 10-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102255018

作品紹介・あらすじ

核戦争後の地球、人間とミュータントの世代交代をテーマにした「訪問者」、パラノイアの狂気を描く「スパイはだれだ」、中国との戦争に敗れ、奇妙な宗教が支配するようになったアメリカを描く「輪廻の車」など、初期作品から晩年の作品まで、日本未紹介の短編を10編収録。アメリカSF界の鬼才、P.K.ディックが創り出した悪夢的イメージを集約した、傑作オリジナル短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 読んだことのあるディック作品といえば『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』のみという完全な門外漢状態で読み始め。晩年の作というラスト2篇はあまりピンと来なかったが、それ以外はどれもバラエティに富んでいてSF的趣向や仕掛けを堪能できる。「少数報告」は後に「マイノリティ・リポート」の名で映画化もされていて、原作とはだいぶ変わっているようなのだが、そもそも観たことがないのでネタバレ感もなく、こちらも普通に楽しめた。解説で知ったがディックは元々短編作家だったようで、ならばこそ未収録作を集めても秀作揃いなのね。

  • 他の短篇集とあまりカブリが無い、わりと貴重な1冊。『訪問者』『超能力世界』『くずれてしまえ』あたりが好み。マイノリティ・リポート、昔観たんだけど、もう一度観なおしてみようかな。

  • 2011年5月27日公開』 : の 映画 「アジャストメント」 がすごく面白かった。
     ⇒ http://sea.ap.teacup.com/pasobo/1213.html
    2011/6/9「映画:アジャストメントを見る」 〜 Myブログ「パそぼとベルルのあれこれフリーク」

    調べたら、フィリップ・K・ディックの短編小説 「調整班」 が原作とわかったので、読んでみる。
    フィリップ・K・ディックの小説は、はじめてかもしれないので楽しみ。

    2011/11/25 予約  借りる。 12/7 読み始める。12/8 「調整班」のみ読んで終わる。
    映画「アジャストメント」について :
    フィリップ・K・ディックの短編小説を
    「ヒアアフター」のマット・デイモン、「ウルフマン」のエミリー・ブラント共演で映画化したSFサスペンス。
    謎の組織が密かに人々の運命を支配する世界で、その事実に気付いた男が、自らの未来を賭けて組織と戦う。
    「ボーン・アルティメイタム」の脚本家ジョージ・ノルフィが監督デビュー。

    内容 :(「BOOK」データベースより)
     核戦争後の地球、人間とミュータントの世代交代をテーマにした「訪問者」、
     パラノイアの狂気を描く「スパイはだれだ」、
     中国との戦争に敗れ、奇妙な宗教が支配するようになったアメリカを描く「輪廻の車」
    など、
    初期作品から晩年の作品まで、日本未紹介の短編を10編収録。
    アメリカSF界の鬼才、P.K.ディックが創り出した悪夢的イメージを集約した、傑作オリジナル短編集。

    著者 : フィリップ・K・ディック
    1928〜82年。シカゴ生まれ。「高い城の男」でヒューゴー賞を受賞。
    「ブレードランナー」などのSF映画の原作者としても知られる。
    他の著書に「高い城の男」「ヴァリス」など。

  • やはりディックは短編がいい

     ディックの短編集。新潮文庫というのがミソだ。

     マイノリティ・リポートの原作である「少数報告」は何度読んでもおもしろいし、オープニングの「訪問者」や後半の「くずれてしまえ」は、アフター・ウォーものの中にあって、とてもすっきりと心地よい後味。

     作品は以下の通り。
    訪問者
     人類が突然変異したミュータントを残し、放射能で汚染された地球を去る。これを「訪問者」とするあたりがとてもいい。

    調整班
     どこかで読んだアイデアなんだが、何度も使われるアイデアなんだろう。あまりいいとは思えないな。

    スパイはだれだ
     オチがスッキリとしないという意味でこれも凡作かな。

    超能力世界
     いやに長いので飽きてしまう。再読してみたらいいのかもしれないが、長さでいやになった。



    新世代
     ロボットが人を育てる時代。親子とはという感じがテーマになるが、SF的に想像できる帰結だからイマイチ。

    輪廻の車
     アフター・ウォーなんだが、なんか現実っぽくて、ぱっとしない。

    少数報告
     ふたつの「殺人」という予知とひとつの「非殺人」という予知。「非殺人」という少数報告を巡って筋が進む。時系列を頭に入れておかないとわかりにくいが、やはりおもしろい作品だ。

    くずれてしまえ
     アフター・ウォーで再起を期する人類の話と言ってしまえばそれまでだが、そこに至るまでの作り込みがいい。

    出口はどこかへの入り口
     悩ましいタイトルの割にはテーマがわかりにくい作品だった。ちょっと理解しにくいな。

    凍った旅
     円熟期に書いたという作品らしいが、これも理解しにくい作品だった。

  • SF短編集。本のタイトルと同名の話はなぜか存在しない。でも機械の話ばかりというわけでもない。

    【訪問者】
    イチオシ。
    舞台は放射能で汚染された地球という、小説どころか映画でもゲームでもお馴染みの設定なのだが、ただ汚染されただけに留まらないところがいい。ラストで考えさせられ、読み終えて短編のタイトルを確認したところで再度うめいた。

    【スパイはだれだ】
    道がふたつに分かれており、ふたりの番人がそれぞれを塞いでいる。片方は嘘つき、片方は正直。質問を1回だけ許されるとしたら以下略的なクイズがあるが、そんな感じの問題をより複雑にしたような印象を受けた。
    【少数報告】も似たような感触。

    【輪廻の車】
    最後の一行に「あー!!」となった。

    【新世代】
    未来の話ではあるが、現代でもこんな関係は存在するだろうな。

  • 1950年代、作者が長篇作家へと飛躍するまえに書かれた短篇群を中心に編まれています。

    ディックの名作を挙げるとすれば、おそらくだれもが長篇群から選ぶでしょう。しかし、この短篇集は、のちに『マイノリティ・リポート』として映画化される短篇(「少数報告」)も含んでおり、それだけでも読む(または現在は絶版ということもあり、持つ)価値はあるでしょう。

    しかし最初に述べたように、長篇作家としての成熟期を迎える以前の作品集なので、総じて「秀作」というより「習作」と評するのが妥当かもしれません。

    また、時代設定は「未来」でも、どうしても書かれた「当時」の風俗などが良くも悪くも(多くの場合、後者の意味で)感じられます。

    「うーん」と思いながら読み進める一方で「いいな」と率直に思えたのは、最後に所収されている以下の作品。他のサイトからを引用すると――

    ■Frozen Journey 凍った旅 1980 浅倉久志・訳

    LR4星系まで10年の宇宙旅行の途中で、冷凍睡眠に入っていた乗客のひとりが半覚醒の状態に陥ってしまう。彼を再び眠らせることはできそうにない。宇宙船はやむなく彼に「感覚刺激」を提供することにする。感覚が遮断されると危険なのだ。だが、彼は宇宙船が提供する「夢」のことごとくを不快な記憶に結びつけてしまう。まだ自分が夢を見ているのだと信じ続けていた。船は男に、目的のLR4星系に到着した夢を繰り返し見せ続けた。そして10年後、船はようやくLR4星系に到着した。だが、男はまだ自分が夢を見ているのだと信じ続けていた…。成熟した作品だ。
    http://www.silverboy.com/silverboy/pkdsht11.htm

    ようやく目的地に到着したのに、「まだ自分が夢を見ているのだと信じ続けていた」という皮肉。しかし、その一方で、かつて彼と離婚した妻は、宇宙船のはからいによって彼と再会し、「『夢』のことごとくを不快な記憶に結びつけてしまう」彼のことを再度受け入れることにします。

    もし本作が「成熟した作品」であるならば、その大きな理由として彼女の「成熟」があるからでしょう。ディックと同じく1950年代にデビューしたSF作家カート・ヴォネガットは、妻との青春秘話「永遠への長い道」を1960年に発表(のちに映画化)しましたが、そこで描かれた出来すぎにしても読ませてしまうロマンスを思い起こさせてくれました。

  • PSYCHO-PASS1期15話で引用されてたので、アンドロイド…に続き読んでみた。

    システムによる人間の選別、犯罪の未然防止、与えられる最適な運命と自力で選択する不確実な運命... たしかにPSYCHO-PASSの設定とよく似ている。

    SFとしては超能力者や不思議な生き物が出てくるくらいであまり「サイエンス」な感じはせず、架空の世界で人間がどのように行動するのかを読者に問いかけている気がする。
    悪夢機械というタイトルがついているが、少し切ないが希望は残る読後感の話が多い。

  • 高校生以来のP.Kディック。
    子供の頃「もしかして自分が寝ている間って世界は存在てしないんじゃね?」と発明したけど、何となく秘密にしていたことを思い出した『調整中』。世界が砂のようにさらさらと崩れ去る描写が詩的で美しい。
    『くずれてしまえ』はありとあらゆる物が劣化コピーを繰り返し、最終的には人類文明そのものが劣化し滅びる話。やっぱ滅びる系はゆかしくあはれ。
    全体的に1950年代の作品がメインで設定が古くさいものの、その古くささというか良く言うとノスタルジックさと幻想小説寄りの侘び寂び感が相俟っててよかった。ちょっとブラッドベリに通じる的な。
    あと、アメリカのゴーストタウンを車でとばしたらこんな感じかなとも。

  • 資料ID:C0010331
    配架場所:2F文庫書架

  • 筒井康隆みたいな「スパイはだれだ」、錯綜するプロットがスリリングな「少数報告」など、文明のアイロニーや風刺の利いた10篇。

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