噂の女

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003526

感想・レビュー・書評

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  • 中古車店にクレームをつけに行った時に出会った色っぽい事務員、「中古車販売店の女」
    麻雀荘で働く肉感的な女「麻雀荘の女」
    料理教室の裏を暴く強気な女「料理教室の女」
    65歳の老人と結婚した24歳の若妻「マンションの女」
    続く「パチンコの女」、「柳ケ瀬の女」、「和服の女」、「檀家の女」、「内偵の女」、「スカイツリーの女」。
    実はこれ全部同一人物。
    糸井美幸という「噂の女」。
    彼女のことを異なる登場人物が各話ごとにあれこれと噂するという連作小説になっています。
    最初は短編集なのかな?と思ってました。
    それにしては1話はかなりあっけない終わりだな~と思ったけど・・・。
    でも2話目の途中で、「あ、この女性って先に出てた中古車販売店の女だ」と気づき、全ての話が「噂の女」で繋がっているんだと気づきました。

    最初登場した時は23歳で、ただ色っぽい女という印象だったのが、話が進む毎にどんどん恐い面が見えてくる美幸。
    どこそこの高校を出た、短大を出たに始まり、複雑な家庭環境で育ち、弟はヤクザだとか、社長の愛人をしていただとか、ヤクザや右翼と関係があるだの、そして殺人疑惑まで・・・。
    たった数年の内に高級クラブのママにおさまり、黒い噂の絶えない凄みのある女になっていた。

    物語の舞台は地方都市で、美幸以外の登場人物は皆平凡な人々。
    だから噂が飛び火して回るのも早い。
    そして平凡で退屈な地方都市を舞台にした事で、さらに美幸のセンセーショナルな姿が際立つ。

    これ、最初は美幸に鼻の下を伸ばし下品な噂をする男共を見て「しょうがねえな~。男って・・・」くらいの気持ちで読んでました。
    文章もコミカルで軽いテンポだし、そういう小説かな?と思ってた。
    でも読んでいて、これって結構深いテーマも含んでる話なんだ・・・と思えてきました。
    地方都市の抱える・・・というか今の日本の抱える問題-役人の横行、ワーキングプア、役人と地元企業の癒着、優遇される地方公務員の様子などをさりげなく描いていて、今の時代をリアルに描いていると思いました。

    そんな閉塞感と低迷感が漂う中にあって、一人別世界で生きている「噂の女」。
    作中、彼女目線の文章が一切ありません。
    この本の内容は全て人の噂。
    どれが本当なのか?
    どこまでが本当なのか?
    ホントの所は分からないままに、噂が噂を呼び、大きくなっていく様を上手く描いてるな~と感心しました。
    それにラストがすごく良かった。
    余韻の残るラストでした。

    個人的に一番印象的だったのは「料理教室の女」で、不正をしている料理教室に抗議に行くのに躊躇した女性に美幸が言ったひと言。
    「変われるチャンスなのに」
    変化し続ける女の言葉だけに、心にズーンとくる言葉でした。

  • この前の練炭結婚詐欺の事件からインスパイアされたドラマや小説が結構あったけど、どれも当然ながら事件内容以上のドラマを見せる訳でもなく、ただ下世話な物語に終わっているものばっかりだった。しかし、この作品は違います。主人公の女のキャラクター以上に、その女に振り回される人びとのドラマがほんと面白い。最終的には悪女からうだつがあがらない女にとってのヒーロー的存在に転換させる痛快っぷりは、読書速度を十分に加速させます。
    ぜひ、ドラマにしてほしいな。女の顔は鼻からした、あとは体だけしか映さないという演出つきで!

  • 2013.6

  • 中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるしがないサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女、寺への寄進に文句たらたらの檀家たち―。鬱屈した日々を送る彼らの前に現れた謎の女・美幸。愛と悲哀と欲望渦巻く連作長編小説。
    読み進めていくうちに、ああ、この女があの女なのね!とつながっていくところは面白かったけれど、もうちょっと裏があったり、実は悪い噂ばかりで事実は全く別だった、という種明かしがあったり…するのかと思いきや、最後までお話の通りだった辺りは少し拍子抜け。
    もうちょっと意外な展開があったら面白かったのになぁ。

  • 6月-5。3.5点。
    地方都市(たぶん岐阜県)での、ある一人の女に関する噂。
    時系列に、違うストーリーで連作短編。
    その女のしたたかな生き様が、明らかに。
    面白い。さすが奥田節。
    地方都市のしがらみや、世間の狭さが上手く凝縮されていた。

  • 【中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるしがないサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女、寺への寄進に文句たらたらの檀家たちー。鬱屈した日々を送る彼らの前に現れた謎の女・美幸。愛と悲哀と欲望渦巻く連作長編小説】

  • 糸井美幸は、とかく噂に上がる女。妙に肉感的で男心をそそる上、男の扱いもうまい。そして、なぜか美幸が付き合う男たちは風呂場で溺死しているのだった。巧みに男心を操る美幸はどんな女なのか。誰もが噂をするが結局誰もが、手玉に取られ、本当の美幸は分からない。すごい悪女で、絶対近寄りたくない感じがリアルに描かれている作品だけど、ちょっともやもやしたまま終わって残念。

  • 奥田英朗はやっぱり面白い!噂の女「糸井美幸」友達になりたい♪

  • 糸井美幸をめぐる男性の話が短編集となって、かつ、時系列になっている。

    岐阜弁に、共感し、
    男性たちの馬鹿さ加減に笑えました。
    表紙のイラストの意味が、読み終えて理解できました。

  • 糸井美幸をとりまく男たちのおはなし。
    その男たちに関わる女はまっとうで、普通で地味で少しは悪いところもあるけどそれがリアル。

    糸井美幸の正体は・・

    時系列が少しわかりにくかった。

  • なつかしい、とても、懐かしいぃい。
    岐阜弁のオンパレード!
    地名・・・。

    それぞれ違う女性の短編集かと。
    思いきや。いやいや、一人のおんなじ女性の噂のお話し。

    もやもや感と、いうのか。
    これを【余韻】と呼ぶのか。

    真相は定かにはならない。

    でも、岐阜だ、もの。
    『柳ケ瀬の女』もあって。
    『スカイツリーの女』で終わっております。

  • タイトルの通り、ある女の生き様がテーマなのだが、
    あくまでも、周囲に語らせる手法をとっている。

    その語り手たちも、なかなか悩ましい問題を抱えているのだが、
    ある人にとっては、噂の女が味方だったり、はたまた敵だったり・・・

    ただ、これが都会ではなく、ある地方都市を舞台にしているところも、
    噂という意味では絶妙だと思う。

  • ひとりの悪女をめぐる連作短編集。笑えました。出てくる男たちがタワケばかり。岐阜弁が久しぶりで心地よかったです。

  • おもしろい展開。

    地方性がよく書かれているとおもう。

    逃げ切ってくれ!

  • 男性に好かれる女性は何かと、あることないこと噂されるが、根も葉もないことなのだという事を期待して読んでしまったので、余計に後味の悪いおはなし。

  • おもしろかった。女を武器にのし上がって行く糸井美幸。そして次々に騙されていくオヤジたちは、謎の死。バカだなオトコって(笑)と思わせる。
    料理教室の講師が身内と連んで廃棄の野菜を食材に仕入れているのをつるし上げるところなんかはスカッとしたけどなぁ。

  • #読了。連作短編集。高校までは地味だった美幸は、短大時代に変貌を遂げる。地方のしがらみなどをシニカルに描き、男を手玉に取りのし上がる美幸の噂話。奥田節で進む物語に惹かれたものの、ラストにはちょっとがっかり。

  • ある1人の女についての噂話の短編集。最初の2話くらいはくだらない軽い話だと思ってたけど、段々と噂が大きくなっていくうちに引き込まれていく。重いモノから軽いものまで色んな話が書けてホントに奥田さんは凄い作家さんだと思う。ま、重いバージョンのが好きだけど。表紙もいいカンジ。

  • やっぱり奥田さんっていいなあ!
    男目線が多いのだけれど、少しも嫌味じゃない。(YH氏とは全然違うんだな)

    中古車販売店の女性社員は、男好きのする色っぽい女。彼女がいろんなところで噂になり、ついには・・・・

    ラストの元同級生の女性の言葉もなかなか男性では出てこないのではないかしら。

    奥田さんのような男性こそ、モテるでしょうね。あまりメディアに出ないけど、お付き合いしたいならこういう人だなあとか思ってしまいました。

  • 噂の女 糸井美幸

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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