芥川症

著者 :
  • 新潮社
3.13
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本棚登録 : 297
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103358718

作品紹介・あらすじ

あの名作が、現代の病院によみがえる――文豪驚愕の医療小説! 医師と芸術家の不気味な交流を描き出す「極楽変」。入院患者の心に宿るエゴを看護師の視点で風刺する「クモの意図」。高額な手術を受けた患者と支援者が引き起す悲劇「他生門」。介護現場における親子の妄執を写し出す「バナナ粥」……芥川龍之介の代表作に想を得て、毒とユーモアに満ちた文体で生老病死の歪みを抉る超異色の七篇。

感想・レビュー・書評

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  • ◆病院の中・・・父親が突然倒れ、あっけなく亡くなった。しかしその理由を尋ねると、誰に聞いてもよくわからない。
    ◆他生門・・・心臓移植をして生き延びた俺。「救う会」に支えられ、ちやほやされる日々が続いていたが、そろそろ働かなければならないようだ。
    ◆耳・・・人の耳に異常に魅かれてしまう小説家の神尾は、担当編集者の園田に誘われ、再生医療ラボに取材に行くことになる。
    ◆クモの意図・・・もし地獄に堕ちたとしても、きっとクモが糸を垂らして助けてくれると信じている神田多恵は、小動物は絶対に殺さずに助けるという信念をもっている。
    ◆極楽変・・・足の蜂窩織炎で救急でやってきたジュローは芸術家で、個展を開いていた。
    ◆バナナ粥・・・ケアマネージャーの阪本直子は、自宅で一人息子が介護している玉井吾一郎を担当することになったが、彼は人の世話になることを拒否し、息子ともぶつかっていた。
    ◆或利口の一生・・・医者になった彼は、がん患者は治療せず何もしないのが一番だと思っていた。しかし実際に自分ががんになってみると…。

    以上7編の短編集。芥川龍之介の作品をもじったタイトルのものが集められている。

    ◆病院の中・・・専門的知識がない患者にとって、医者の説明はわからない部分が多く、胡麻化されている感じがするというのを、カタカナや病院の中をたらい回しされる様子でうまく表現している作品。ただ、結局は全員言っていることが正しかったというのはやっぱりちょっと無理があるかな。看護師やら病理医やらが勝手に病状を説明するのもありえないし。

  • 治療の見込みのない癌患者の肉薄した描写が強烈な『悪医』を読み、久坂部羊さんに注目。

    芥川作品のタイトルをもじった、医療にまつわるブラックユーモア集。

    心臓移植後の患者の生活を描いた『他生門』には考えさせられた。

    そして最後の短編「或利口の一生」は、久坂部さんご自身を投影した作品だろう。
    医療には「正解」は存在しないのだと深く感じ入った。

    「何もしない医療」をある程度肯定する姿勢に、そういえばイエス・キリストも、単に病人の手を握り祈る人だったと。
    なにか医療の本質をみた気がした。

  • 芥川龍之介の作品をモチーフにした医療短編集。所々グロテスクな描写もあるブラックユーモア集

  • 芥川作品のパスティーシュということになるんですかね、元ネタをいまいちよく知らない(ぶっちゃけ読んだことがない^^;)ので……でもまぁ元ネタがわからなくても十分ブラックで面白いですがね。

  • 文学

  • 久しぶりに面白い小説を読んだな、という感じ。
    これはパスティーシュ?

  • 芥川龍之介の小説のパロディ短編集とのことだったけど、かなりブラックなだけで、うまく揶揄ってるわけでもなく、イマイチかな。

  • 小説
    父の死因とは一体何だったのか?食い違う医師・看護師の証言。真相を求め、息子はさまよう(「病院の中」)。多額の募金を得て渡米、心臓移植を受けた怠け者の男と支援者たちが巻き起こす悲喜劇(「他生門」)。芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出会ったとき(「極楽変」)。

  • 芥川龍之介の短編には、医療や介護の現場にも通じるものがある。
    芥川が「今昔物語集」からパクって書いた小説から、自分がパクって小説を書いたらどうだろう。(本文より)
    目の付け所が面白いなぁ~!どんな内容なのか、想像もつかなかったのですが
    鬼気迫る話あり、身につまされる話あり、ブラックユーモアふんだんな話あり、面白く読みました。

  • 図書館で。ネーミングからなんとなく明るい話を想像してたら思って居た以上に暗かった。これは着想の勝利かなぁなんて読みながら思いました。

    医療現場と芥川の小説の題材と結びつけるのは面白い発想だなぁと思いましたが登場人物の行動が突飛で読んでいてハラハラしました。特に看護士の話。あまり一緒に仕事したくないタイプだな…

    最後の或る利口の…が皮肉が効いていて面白かったです。治る病は治る、治らないものは治らない。そう悟って大きく構えられたらどんなにかラクだろう。でもそう出来ないから人間なんだろうなぁとは思います。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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