勝海舟の腹芸: 明治めちゃくちゃ物語 (新潮新書 455)

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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104558

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  • ♪腹が判れば話は早い、
    渡しましたぞこの江戸を
    頼みまするよこの日本を
    祈る思いの勝海舟に
    花の明治の夜が開ける♪

    ご存知、三波春夫の「長編歌謡浪曲 勝海舟」で歌われる江戸城の無血開城を西郷隆盛との談判で成し遂げ、明るい明治維新への道を開く場面がその名曲のクライマックスである。教科書もそしてテレビの大河ドラマも同じように明治維新を新時代の幕開けとして肯定している。

    が、著者はそのような明治維新を評して「びっくりするほどめちくちゃな時代」と言い、「明治初年代の十年間は、明るいとか暗いとかいう陳腐な二元論に収まらぬもっと原始的な混沌に満ちている。権力者が「法」なのだから、やりたい放題で行使できるのである。新旧交代は流血を辞さぬ残酷な淘汰を伴い、急ピッチの破壊と濫造で社会は大混乱だ」とする。

    本書は明治維新の年から二年間余り、上野彰義隊討伐、会津落城、箱館戦争終結までの旧幕府軍と新政府軍との戦いの歴史を通じて、如何に新政府の権力闘争が進み、また新政府軍の統制がバラバラであったかを描くことで明治維新の混乱ぶりを伝えようとしている。

    書名は「勝海舟の腹芸」とあるが西郷・勝の交渉については残念ながらごく僅かに触れられているに過ぎない。と、言うかそこでの江戸城明け渡しは江戸を舞台にした大規模戦争が回避されただけであり、戦争の舞台はその他の地方に移して継続したのであるから混乱に変わりは無いというものだ。

    「中国化する日本」の中で著者の與那覇潤は明治を知りたければ今の中国を見よ、と語るが明治維新そのものを知るためには文化大革命と中国の大混乱を見るのが適当なのかもしれない。

  • 勝海舟に焦点を当てた本だと思って買うとさにあらずんや。大政奉還から明戊辰戦争に至る明治初期の動乱を、それぞれの人物や事件にスポットを当てて解説。武士とは高潔なり、という概念ではなく、実はせこくて酷くてむちゃくちゃだった人も多いという事を知りうるだけでも読んで良かったのか、な?

  • ≪目次≫
    第1部 明治回天録
    第2部 明治滅法録

    ≪内容≫
    「週刊新潮」に連載の「幕末バトルロイヤル」から「明治めちゃくちゃ物語」と廂を取り替えてのシリーズ第2弾。
    この部分は、戊辰戦争前後にスポットを当てている。例によって、史料を縦横無尽に操って、細かく裏話が展開されている。

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著者プロフィール

野口武彦(のぐち・たけひこ)
1937年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。1973年、『谷崎潤一郎論』(中央公論社)で亀井勝一郎賞、1980年、『江戸の歴史家─歴史という名の毒』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞受賞。1986年、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社学術文庫)で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『江戸の兵学思想』(中公文庫)で和辻哲郎文化賞、2003年、『幕末気分』(講談社文庫)で読売文学賞、2021年に兵庫県文化賞を受賞。著書多数。最近の作品に『元禄六花撰』『元禄五芒星』(いずれも講談社)などがある。


「2022年 『開化奇譚集 明治伏魔殿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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