反省させると犯罪者になります (新潮新書 520)

著者 :
  • 新潮社
3.99
  • (153)
  • (183)
  • (112)
  • (13)
  • (6)
本棚登録 : 1986
感想 : 233
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105203

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分が犯した罪や過ちを反省する事は、悪いことをした人が必ずしなければいけないこととされているが、それが実際には更生させることにはなっていないこと、あるいは逆効果であることを様々な実例とともにわかりやすく論じている。このようなコペルニクス的展開を世に問うていること、が本書の価値である。

    著者は悪いことをした経緯を深く分析しなぜそのようになことをしたのかを、自らの家庭環境などから分析することを提唱している。しかしそこで1つ疑問に思う事は、家庭環境などの回想が一種の自己欺瞞や自分自身の美化を引き起こさないか、ということである。心理学の研究によると、人間は自分自身の現在に合わせて過去を歪曲して理解しあたかもそれが本当なであるかのように信じ込んでしまうことがあると言う。トラウマ研究などによって幼少期のトラウマが人口に膾炙してくると、その副作用として、実際にはなかったのに、幼少期の虐待に自分も虐待があったと信じ込み、親に裁判を起こし、逆に親から名誉毀損で訴えられるということもあるそうだ。人間の記憶は意外と簡単に捏造され、自分の都合のいいように語られ、解釈される。著者が提唱しているように、自身の過去などを語り、自分が親などに求めていたものを考えるという方法がどれくらい危険性を孕んでいるのだろうか、という疑問が湧いた。

    かといってこのような疑問は、この著者の価値を減ずるものではない。逆に私のような一般の読者にも、本書の内容から出発して考えさせる、というとにその価値があるとも言えるだろう。

  • 何ともショッキングなタイトル。
    犯罪者って、大げさな…と思ったものの、著者は無期懲役囚の支援、更生の実践者で、これまでの経験から、反省させることが人を能くすることにつながらないと主張する。

    世の中は反省にあふれている。ネットもマスコミも不寛容で、反省しなければ総叩き。学校でも家庭でも、迷惑をかけた相手の立場を考えて反省することが、悪を正す唯一の方法のようだ。

    しかし筆者は、過ちを犯した人にとって、相手の立場で考えることは容易ではない、まずは自分がその行動に至った内面、溜めていたことを知ることが必要と説く。例えば刑務所の受刑者のケースでは、大きな犯罪の前には薬物や子供のときの軽犯罪があり、そこには親からの愛情不足、共感不足があることに本人が気付くことで、はじめて更生のスタート地点に立つ。

    確かに、問題行動は抑圧された感情が表面化したものであり、小さいうちに向き合うことが大切だが、向き合う技術のない人が支援しようとしても上手く行かないだろう。親になる人、教師になる人は、そういう勉強が必要だと思った。

  • 受刑者の更生について書かれているけど子育てに役立つ本!
    子どもが問題を起こした時に、反省しなさいとか相手の気持ちを考えなさいって言葉を言いたくなる人は読んでみてほしい。
    どういう対応がいいかも書いてあるから。
    子どもが甘えられるように心理的に安全な環境を作ってあげたいと思います。

  • 自分もやりがちな、結局子どもから「ごめんなさい」を言わせるがための指導。
    この問題点について、犯罪者更生の視点から書かれている。
    著者が他人の車にぶつけてしまったときの素直な心情は、確かにと頷いてしまった。
    結局自分が一番かわいい、人間という生き物にとって、はたして言葉だけの「反省」や「謝罪」にはどれだけの意味があり、持続性があるのか。

    この本を読んで自分が変わったことは、「どうしてそんなことをしたのか」との“結果”を聞かずに、「なにがしたかったのか」との“経過”を聞くようになったこと。
    子どもは不完全な生き物。
    失敗から学ばせてあげたいと改めて思った。

  • 犯罪者に反省をさせるなー。確かに極端な命題である。しかし、犯罪者に即時に「反省」を求めると、彼らは「反省する態度」が上手くなり、「世間向けの偽善」ばかりを身につけるだけで、犯罪を行なった本質的原因を解消することが困難になる。受刑者が出所後、再犯をしないためには、何より、人と繋がって、人に頼っていきていく力を身につける必要がある。なぜなら、人と繋がって「幸せ」を感じられるようになることで、自分を大切にでき、それと同時に他者を大切に思えるようになるからだ。人は皆弱い。問題を起こしたとき、人間心理として、まず後悔をして、それから、反省に至るのが自然であり、自分の「人生」がきまる裁判の場で、被害者のことよりも我が身を思うのは必然である。被害者に対して犯罪を行なった正当化はできないのはもちろんであるが、犯罪を行うには、必ず「その人なりの理由」がある。その理由を解消しないまま、刑罰を受けることは、理不尽さを感じさせ、被害感情を募らせることになりかねず、その結果は、表面上の「反省態度」であり、真の更生はありえない。生き直しのためには、過去と向き合い、内面の問題を受刑者自身が理解し、他者に対して本音で言語化して表現することで、心の傷を回復することができるように支援をすべきだ。刑務所は刑罰執行の場で、管理と秩序維持が最重要価値となっているが、自由とケアの視点を導入することが、加害者・被害者に加え、新たな加害者・被害者を生み出さないための社会の制度設計として理想である。
    受刑者の心の問題は私たち社会の心の問題を映す鏡であり、子供の問題行動を叱り、反省させることは、刑務所での問題と同じ問題がある。子供の問題行動は自己表現のひとつであり、子供のしんどさや生き辛さを知るチャンスだ。そのしんどさや生き辛さを解消するため、問題行動を必要行動だったと理解させ、その原因を受け止める教育体制が求められている。

  • タイトルは過激だが、著者の意図は、世間で常識とされている悪い事をしたら反省、というのは、本当の反省にはならない、ということである。実際に刑務所で教育プログラムを実施している著者の言葉は重く、心に迫る。

  • まともな人間は反省できる。ということはみんな犯罪者予備軍である。どんな人も読むべき人間心理の一冊である。
     反省はあと!まずは自分を見つめよう。

     体系化できていない独自理論って感じは否めない。しかし、これは教育の観点として参考にすべき事実である。教育がうまくいくには前提が必要。被教育者に「教わる」土台ができていないと、馬の耳に念仏なのである。それが「反省」でも同じ。問題行動のほとんどはこの土台ができていないから起きる。

     土台作りをサポートしてもらえなかった人々の存在を知らしめてくれる一冊であった。


  • 著者の主張は一貫しています。その主張は大きく2つです。
    
    ・抑圧すると爆発する
    ・問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである
    
    「抑圧すると爆発する」というのはどういうことかというと,「自分の中にある否定的な感情を発散せず我慢していると,いつか犯罪や自死などの行動として最悪な形で現れる」ということです。
    
    生きていく中で人は否定的な感情を抱えます。それをうまく発散できれば大きな問題は起こりませんが,うまく発散できず溜め込んでいると後に問題行動として現れます。犯罪者も同じで,自分の中にある否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪を犯してしまったと考えることができます。なので,まずは,その否定的な感情を発散させることが改善への一歩なのです。
    
    しかし,「悪いことをしたのだから反省しろ」と反省文を書かせたり,被害者の心情を考えさせたりすることは,否定的な感情を発散させるどころか,さらなる感情の抑圧へとつながります。たとえば,犯罪者にも犯罪を犯した犯罪者なりの理由があるわけなので(それが良いか悪いかはとりあえず置いておく),まずはその感情を発散させる必要があります。しかし反省文を書かせることは,その理由を発散させることにはならず,思ってもいないこと(たとえば,私の心の弱さが犯罪へとつながってしまいました。反省しています。など)を書かせるだけになり,結果として本当の気持ち=感情は抑圧されることになります。その結果,犯罪者は反省することなく,また同じ過ちを繰り返す可能性が高くなってしまいます。
    
    ですので,犯罪や自死などの行動が起きないようにするためには,自分の中の否定的な感情を発散させる必要があるわけです。そして,自己の否定的な感情を発散させる,つまり自己理解が深まっていくと,結果として他者理解も深まっていきます。なぜなのかはここでは詳しく書きませんので,本書をご覧いただきたく思います。
    
    2つ目の主張は支援者の立場からのものです。自己の否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪や自死が起きるわけなので,支援者からみると,そのような問題行動が起きたときは逆に言えば,何が問題行動の原因となっているのかを探り,それを解消するきっかけになるわけです。ですので,支援者には,問題行動が起きたときに闇雲に反省させるのではなく,その行動の原因を一緒に探っていくという姿勢が求められます。
    
    このように本書では,「抑圧すると爆発する」「問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである」という主張を論拠に,現代の「更生」の在り方を批判していきます。筆者の考えが豊富な事例をもとに展開されますので,説得的な内容になっています。
    
    本書は犯罪者の更生についての話が主ですが,「教育」に携わる人にとって示唆に富むことが豊富にあります。たとえば,「自分のなかに,正しいと思って刷り込まれた価値観が多ければ多いほど,他者に対して「許せない部分」が増えていきます。」(p.158)という一文は,子育て,特にしつけを考える上で重要な指摘かなと感じました。
    
    「教育」あるいは「支援」を考える際にこれまでの価値観を相対化する上で役立つかなと思います。
    (ただし,問題行動の原因を親に帰属しがちな部分はちょっと気になりました)

  • 宮口さんの【ケーキの切れない非行少年】で紹介されていた一冊。
    タイトルからして過激。内容もかなり切り込んだ内容になっていた。
    でもそこには、著者の「何とかしたい」という情熱や想いを強く感じた。

  • ①加害者の犯罪心理「後悔」が先、「反省」はその後。

    ☆だからすぐ、「ごめんなさい」という加害者は疑ってかからなければならない。

    ②罰はできるだけ受けたくない。受けるとしても罰はできるだけ軽いものであってほしい。それは人間の本能なのです。

    ☆そうそう。そうなんだよね。
    では、どうすればいいのか。
    軽くすればいいわけじゃない。ではどうすれば・・。

    ③それでは、どうすればいいのでしょうか。方法は1つしかありません。反省させてはいけないのです。被害者に対して不満があるのであれば、まずはその不満を語らせるのです。不満を語る中で、なぜ殺害しなければならなかったのか、自分自身にどういった内面の問題があるのかが少しずつみえてきます。
    一見、非常識なことをしていると受け止められるかもしれませんが、本音を語らないかぎり、受刑者は自分の内面と向き合うことはできません。

    ☆まず、本音を語らせる。これが実は難しいと思う。
    第一、相手に心を開ける状態でないといけない。

    ④人は不満や怒りなどの否定的感情をもっていると、その感情をいつまでも引きずります。(中略)
    心のなかにたまった否定的な感情は、それが解放されない限り、いつまでもその人の心のなかに残り続け、その人の心を苦しめるばかりか人生さえ生き辛いものにさせます。

    ☆まず、否定的感情をださせる。その手法が知りたい。

    ⑤反省文を書いた後、必ずといっていいほど生徒指導部の部長が生徒に告げる言葉です。それは、「これからはすべての先生が君に注目している。しっかりとした学校生活を送りなさい」という「励まし」の言葉です。この励ましが生徒の心に今後どれほどの負荷(ストレス)を与えることになるのか・・。

    ☆これ、思わず言っていまいそうな言葉。
    では、なんと言えばいいのか。

    ⑥言い方は悪いですが、私たちは子どもの問題行動を歓迎しています。なぜなら問題行動とは、「自己表現」の一つだからです。和子の「しんどさ」が表面化したと捉えることができるのです。

    ☆その時の周りの対応が重要。
    叱るとかえって悪くなるのは目に見えている。
    問題行動が出たら、
    そこから何を得たいのか
    そこから何を回避したいのか
    考えてみる。
    冷静に~~

    ⑦親はなぜ子どもが問題行動をおこしたのかを考える機会を与えられたと考えるべきです。

    ☆子どもとしっかり向き合う。「ありのままの自分」を受け入れてやるには?

    ⑧問題行動が起きたとき、ひとまず叱ることは控え、本人が問題を起こすことに至った理由に耳を傾けることです。

    ☆理由。

    ⑨私は問題行動を「必要行動」と考えています。

    ☆せざるを得なかった、と考える。
    「もし断っていたらどうなっていた?」
    「一人になるのが怖かったんだね」
    「なぜ喫煙する友達と付き合うようになったの」
    「その時どんな気持ちだった?」
    「よく話してくれたね」
    このような問いかけで否定的な感情を口から出させる。
    できるかなあ。

    ⑩人は自分のことを理解してくれる人を、常に求めています。

    ☆これは分かる。

    ⑪いじめ防止教育は「いじめたくなる心理」から始める。

    ☆いじめの加害者の文章を読ませて
    「これを読んでどう思いますか」
    「なぜこの子はいじめてしまうのだと思いますか」
    「同じような気持ちになった人はいませんか」
    などと聞き、本音を探っていく。
    結局は自分も人の目を気にしている。「調子がよくて目立った存在でありたい」もっと言うと、「注目されたい=愛されたい」

    ☆愛されたい!

    ⑫「自分が愛されたいという気持ちをうまく表現するためにはどうしたらいいか考えてみよう」などと提案してもいいかもしれません。

    ☆こうやって聞いたら子どもはなんていうんだろう。

    ⑬「人は誰もが寂しさやストレスを持っている時、それを弱いものに向けてしまうことがある。だから、寂しさやストレスがあったら、ため込むのではなく、誰かに話を聴いてもらうこと(=頼ること)が必要です」と展開する。

    ☆ここが落としどころか。頼ることを教える。これは確かに自殺防止の第一歩になるだろう。誰に聞いてもらうかも大事。

    ⑭いい大人でいられる条件は、「子どもっぽさ」をうまく出せることと言っても過言ではありません。飲み会やカラオケで楽しくはしゃいだり、仲間とふざけ合ったりすることが「しんどさ」を発散させることになって、大人としての「いい仕事」ができるのです。

    ☆子どもっぽさとは何か。

    ⑮今回、問題を起こしたことは君がいい方向に向かうためのチャンスとしたい。今回、なぜこんなことが起きたのか、一緒に考えよう。

    ☆+日ごろから思っていたことを自由に話してくれないか、と一緒に考える姿勢をもつ。

    ⑯あらかじめいろいろな課題を用意しておきたいものです。
    「これまで親からよく言われたこと」
    「自分のストレスについて」
    「今、悩んでいること(しんどいこと)」
    「今回の行動を起こして、「得たもの」と「失ったもの」」

    ☆こういう言葉がいくつあるか。そして、パッと出せるかにつきると思う。ノートをみるわけにもいかないしね。やりとりを引きだすための言葉。いくつも用意しておく。

    ⑰人間関係をよくするために使いたい言葉。
    「ありがとう」「うれしい」

    ☆「寂しい」「悲しい」で自分の気持ちを素直に表現。

    ⑱プチキレの勧め
    自分の話を聴いてくれそうな人にちょっと自分の「しんどさ」をいうことです。(中略)重要なことは表現することです。

    ☆わーい♪これはできてるかな ( ´艸`)

全233件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

立命館大学教授

「2012年 『ロールレタリング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡本茂樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×