私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ 387)
- 中央公論新社 (2011年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121503879
感想・レビュー・書評
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この本は書評するべきものではない。しっかり歴史を見つめ、そして今何を考えるのか、単なる原発反対、推進でなくもっと本質的な議論が求められている私達が必要としている膨大な情報がこの本に含まれている。多くの人に読んで欲しいし、正しく理解して欲しい。
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今の原発における現状までの経緯を分かりやすく解説してくれる一冊。戦後日本社会では技術的な豊かさを得たものの、心の豊かさを得るまでは至らず、そのことが今につながる。原発には未知の部分が未だに多く、すべての要素をもって議論することは不可能との見解から筆者は最終的に佐伯の『「きめ方」の論理』から、しっかりした情報収集をもとにいくつかの方策を柔軟に取り入れていくという極めてまともな結論に至る。原発推進派と反対派の共倒れの言論をゲーム理論から説明したり、原発関係の本のを読んだ経験が少ない自分にとっては内容が充実しているように感じられた。
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武田さんの著作はジャーナリズムを勉強するものとしては、個人的には、いつもわくわくさせられながら読んでいる。人文系の理論的なバックボーンを背景にしつつ、ジャーナリズム的実践を行うその記述スタイルは、僕自身が最も理想的であると思う、ジャーナリズム・スタイルだから。
今回のこの本も、もちろんそのような形式にはなっていて記述スタイルなどで大変勉強にはなったのだが、あとがきで武田さん自身が「この本は失敗だった」と宣言しているのが「えっ」と思ってしまった・・・。内容的には「あたりまえ」の事実ばかりということだろうか。
それでも、僕のような原発や原子力政策に対して全く何も知らない人間には学ぶものが多かった。本書は、戦後から現在までをディケイドで分別し、それぞれの時代の「核」論を記述していくというスタイルになっている。「1954年 水爆映画としてのゴジラ」と「1965年 鉄腕アトムとオッペンハイマー」の章が大変面白かった。 -
戦後日本の核利用を追った本。
裏にあった政治力学なんかも伺えて面白かったが、知らん人ばかり登場して読みづらい。。。
個人的には1974年論の電源三法交付金の話と2002年論のノイマンの話がスイスイ読めて面白かった。 -
日本が原発大国になった流れを、戦後の復興から歴史的イベントにからめつつ述べた本。
各章が各論のようになっていて、総論としては中立的な立場をつらぬいていて面白いんだけど
物語的語りが多くて事実関係を追いにくい。
あらかじめ歴史的事実を知っていないと難しいかもしれない。
原発の話というよりも、表紙にあるように「核」論という感じ。
推進派・反対派双方の意見を客観的にみているという点で興味深い。 -
勉強になった。ただ、タイトルの『「核」論』は違うと思う。
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原発が日本に存在するに至った背景が書かれています。
驚いたのはウランブームの初期、体にいいとされていたこと。
ラジウムドリンクを飲んだり、お風呂に入れたり、畑に撒いたり。
偏った情報が流されていたとは言え、原発を選択した背景があるわけです。なので、一概に原発を建てたことが悪い!とは言えないわけで。
反原発にしろ、原発推進を語るにしろ背景を知ることが大事ですね。
過去があるから今がある。 -
第二次世界大戦における被爆国でありながら,原発を推進することになった経緯が詳しく書かれていると思います.
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・周辺情報。どのような時勢の流れの中で原子力行政が進められてきたのか。
・軍備と原子力、電源三法による過疎の規模の固定 -
大戦直後から今日まで、原子力に対する世の中の認識の変遷をたどって、その時代に出てくる米軍人から政治家、社会学者などの思想が紹介されている。「スイシン派」と「ハンタイ派」の二項対立を調停し、膠着を打開したいという筆者の目標は、なかなか達成困難というのが読後の正直な感想。信じる神が違う「宗教」間の対立に近い。