細雪 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1005
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (936ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122009912

感想・レビュー・書評

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  • 「細雪」は本当に面白い。何せ女の4人姉妹ですよ。色々出来事がこじれないはずがありません。彼女らの生き方の物語としても面白いっちゃ面白いのですが、私は昭和初期の着物や風俗を読むのが楽しいです。

    何せ上品だし、文章は馴染みやすいし、話の展開もわかりやすいし、心情描写も細やかだし、登場人物には共感できるし、良い人しか出てこないし、誰が読んでもきっとその人なりの楽しみを見つけてもらえる小説だと思います。

  • 雪子の左目の目尻に浮かぶシミ。あれは完全なシーニュで、当初からそれとしての価値しかない。川端の『千羽鶴』に出てくるやり手ババァ(主人公の父親の愛人の一人だったかな)の胸にあったアザはもっと肉感的だった。

    ところで、この小説では「戦争」(時局、ナチズム)あるいは「死」(木下の死、妙子の伝染病)は常に底流にあるが隠されていて、いずれもある日突然に(まさに「洪水」の後から)湧き出す。普段はシーニュでしか現れないものが、やがてシーニュではすまされなくなってゆく。そういうものの代表が雪子のシミで、最初は「ほうっておくか、結婚すれば治ってしまうもの」であったが、結局「体の一部として身についてしまった」当のシミなのである。

    中村真一郎によれば谷崎はプルーストを読んでいたらしい。本当なら興味深い。いずれにせよ、いらぬ「批評の誘惑」を喚起する小説。

  • 面白かった。桐野夏生のデンジャラスを読んで、タイトルの優雅さと船場の美しい四姉妹の話という古典に心惹かれつつも結局いまになるまで未読のこちらをようやく読了。
    図書館でよそから取り寄せるので受け取るまで本人のボリュームを知らず、借りに行って重量にびっくり。読み切らないかなと思ったし、妙子以外は現代の目線からするとなんというかおしとやかすぎて何もおもしろいことはなく、ゆるゆると日記みたいな内容が三人称で書き連ねられているだけなんだけど、ページをめくる手が止まらず、最後の文章で「えっ!?止まらない下痢の一文で終わり?」と、思わず次のページが本当に白紙か確かめる次第。
    終始女性陣への観察眼が常軌を逸していて、批判する時には昼ドラの姑みたいないやらしい姑息な感じすらする。あっぱれ。特にこの最後の下痢の下り(ダジャレか)に嫁入り衣装の思い出などを混ぜるのもすばらしい。女を表す五行くらいの文章にあんなにぴったりなものがあったか。
    時代もあって差別的な見方もあるし結婚については特にしち面倒臭いことばかりだけど、そういう時代の資料としてとても面白い。ちょうど物語の終わりの雪子と同年代の時に読めてよかったのかもしれない。

  • 生活劇。
    昭和11年秋から昭和16年春までの大阪旧家の4姉妹物語。

  • 貞之助は、なんてよくできた婿なんだ。

  • 大阪船場の旧家にいた美女4姉妹の日常生活が、船場言葉で絢爛に描かれた小説。昭和10年代のありようが、徐々に落ち行く上流階級の4姉妹各々の生き様を通して伝わってくる。物語はとりわけ、芯は強いが当世風に馴染まず内気な三女の雪子を軸に進む。ぐずぐずと煮え切らない面には幾度も苛立ったけれど、そのゆったりとした時間感覚で四季折々の行事を楽しめる。何より一貫して爽やかな印象なのは、意見が異でも仲違いはしない、上品な血の繋がりが根底にあるからだろう。だからこそ、終わり方に衝撃を受けた。

  • 大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。(Amazon)
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    これまでに、何度も何度も映画化・舞台化された名作。
    私が今回そんな文学を読んでみようと思ったのは、「海街diary」がきっかけです。

    ...と言っても、原作を読んだわけでも映画を見たわけでもないけどね!(笑

    いやでも、女4兄弟って昔からよく作品になりますよね。
    古くは若草物語、そして細雪、海街diary。

    同じ両親から生まれた女性でも、それぞれの個性がとても面白い。

    本作品も、興味深く読みました。

    舞台は神戸、芦屋、大阪。
    基本的には次女・幸子の家で物語が動きます。
    と言うのも、結婚した長女以外の三女・四女ともに
    次女の家にほとんど入り浸っているから(´ω`*)

    姉妹のうち長女だけが後半で東京に引っ越します。
    それに伴い、三女も東京へ行くのですが、東京が嫌さにしょっちゅう口実を設けては次女の家に入り浸る(ノ´∀`*)

    お嬢さん育ちですからね。
    東京の狭い家より地元の広い家の方がいいのね。

    で、この三女雪子さんが美人にも関わらずぜーんぜんお嫁の貰い手がなく、周りの心配もなんのその。

    貰い手がない、と言うよりはあれですよ、
    選り好みしてたらいつの間にか選ばれる立場になってたやつ。

    でも自分に自信があるのか?
    嫁に行く気がないのか?
    当時としては三十路過ぎておひとり様って、かなり異質だったのでは...
    (当時は、ですよ。当時は>強調)

    で、けっこうこの三女、くせ者。
    私はちょっと苦手なタイプだと思うw

    なんかけっこう頑固で、外では何も言わないくせに
    家族の中では割と勝手なことばっかり言って
    人に説教ばっかりして自分のことは棚上げ、な感じヽ(´Д`ヽ)

    これは...
    結婚してもうまくやれなそう...
    と、人ごとながら無駄な心配をしたりして。

    途中で水害の場面が出てくるのですね。
    最近、関東でも甚大な被害がありました。
    そのせいかそのシーンがすごい臨場感があって...

    被害に遭われた皆様の傷が一日も早く癒えますように、
    とこの場を借りて言わせていただきます。

    今現代の感覚だと、やっぱり四女が一番好感度高そう。
    自分の道を自分で切り開こうとする女性は、いつだって人気ですよね。
    (若草物語だとジョーかな?)

    にしても、すごーく朝ドラ向きの作品ですよね!
    もうすでになってるとは思うんですが、またやればいいのに~。
    ちょっと食要素を足せば絶対いい>「ごちそうさん」かw

    と言うか、第二次大戦前のこの時代って、
    世界的にはともかく庶民としては
    意外と一番いい時代だったのかも知れない...

    懐古趣味なのでまた昭和の作品を読みたくなりました♡

  • 職業婦人をモデルにした4女・妙子が活躍し始めた中巻後半あたりから俄然の盛り上がり。(それにつけても妙子の男運の悪さと見る目のなさよ…)
    姉妹で足の爪をきる場面の不可侵な神聖さ、猫が音楽に合わせて耳を動かすことを可笑しがるあどけなさ、蛍のきれいさを堪能したあとで箒で掃きだす吹き出すくらいの頼もしさ等々、天災も不幸も幸福も死も人生の一部として受け流していく日常の強度。時代におされても変わらず楚々として美しい雪子の目元にほんの薄いシミを描き出す作者の残酷さと、それがあるからこそより一層強調される過ぎ去った年月の美しさに震える。

  • 文章が長いだけのことはあり、非常に読み応えがありました。昭和初期の没落した家族4姉妹の物語。結婚して子供がいる長女、次女。まだ独身の三女、四女が非常に対照的。下の独身2人は、内気な性格の三女と、仕事・恋愛と自由奔放な四女。この二人に振り回される次女の幸子さん。姉の長女家族や自分の旦那さんに気を使いながらも妹たちの心配もする。いくら没落したとはいえ、昔の名門だからとちょっと見栄をはったところもあり。大変なご苦労を背負わされているわけなのです。一番下の四女の妙子さんのあまりにものやりたい放題には読んでて私もはらはらしました。できるものならもう一度じっくり読み返したい作品です。

  • 文庫ではなくかなり昔のハードカバーで読みました。
    全編旧字体だったので、多少の読みにくさはあったものの、お話の雰囲気には合っていたと思います。
    没落した大阪の名家に生まれた美しい4人姉妹の数年間が、美しい文章で綴られていくのですが、美しさの裏に隠された醜さ・・・といいますか、権高さや身勝手さ、そして優越感に裏打ちされた差別意識などが赤裸々に表れてまして、読んでいくうちに少々イラッとしたりもしたんですが、時代の違いもあるのかなーと。それにしても、どうしてこう女の気持ちが分かるんですかね、谷崎先生!

著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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