情報の文明学 (中公文庫 う 15-10)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033986

感想・レビュー・書評

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  • 「第三の波」よりも早かったが国際的には知られず。
    何か、インフレーション理論を想起させる。
    「情報」という単語を考えていくとどうしても拡散せざるを得ず、本書からもそれは感じられる。一編が短くなるのはそうしたためだろう。
    「環境」という単語と、そういった点で似ている。
    著者の先見性、発想の豊かさは星新一氏を連想させる。

  • 書かれたのが大分昔とは思えない、今でも通用する情報学の本。
    解説を読むとトフラーの第三の波と同じことをトフラーの前に提唱していたとあり、それ自体もすごいことだが、トフラーよりもわかりやすかったことに感動した。
    情報化社会とはどういうことかをもう一度俯瞰して考えたい時に読むのがおすすめ。

    ここからは個人の感想だが、「情報は中身を知ってからお金を出すことはないから常に水物、価値が計りづらい」ということだけど、知財など今の時代は情報を得ることではなく使うことにお金を払うのであり、DVDやiTunesは欲しいときに自由に見られる(聞ける)ような便利さとか検索しやすさ、加えて手元に置いておくことによる所有欲にお金を払うのだとしたら、情報を見てからでもお金を払うことはあり得ると思った。本も買ってから読むのが普通だけれども、本屋で全部読んでそれでも欲しい本というのも稀にある。地図や旅行ガイドブックは手元にないと使えないから買う。そうするとお代は見てのおかえり的な売り方というのは、もしかしたら一読で使い捨てられる情報に対してのみ当てはまるものかもしれない。ただ、一見性が悪いということではなく、観劇などはライブ感を買うということでは、高値が付くことにもつながっているわけで、どちらが悪いということではないのか。

    そして著者はそういうことを気がついた上でどちらも情報の側面として否定はせず、ご本人は、技術の進歩の恩恵を受けて伸びてきている(既出の)情報の蓄積、整理も大事と言って博物館を運営しているんじゃないかという気がした。

  • 1963年に発表された「情報産業論」は、社会の情報化とその帰結についての展望をおこなった、先駆的業績です。なお著者は、本書の位置づけについて、『文明の生態史観』が人類文明の地理学的な見取り図を描く試みであったのに対して、本書は人類文明の歴史学的な見取り図を描いたものと述べています。

    情報産業革命は、農業革命、工業革命につづく人類文明史における第三の革命だとされます。このプロセスを、著者は動物の発生の過程になぞらえて説明しています。第一段階が消化器官系を形成する内胚葉期、第二段階が筋肉・骨格を形成する中胚葉期、第三段階が脳神経系と感覚諸器官を形成する外胚葉期に、それぞれ相当します。「外胚葉産業」である情報産業は、「腹の足し」になるわけでも、労働の負担を軽減するわけでもありません。それにも関わらず、人びとは情報を求めずにはいられません。言葉やイメージ、色や形、音や映像、味や香りや肌触りなどの情報が人間の感覚器官や脳神経を通過し、活発な活動を生じさせます。

    こうした観点から、著者は現在のあらゆる産業は情報産業化していると論じます。たとえば食料について見ると、現在の食糧産業はエネルギーを供給することを目的としているのではなく、味覚を楽しませることを目的としており、人びとは味覚を楽しませる情報に金を払っているということができます。著者は、衣類や観光、スポーツなども、こうした意味ですべて情報産業だと主張しています。

    こうした発想は、1970年代から80年代にかけて隆盛を見た消費社会論の中で盛んに論じられ、今では当たり前の風景になってしまっていますが、本書の論考が発表された当時はずいぶんと大風呂敷の議論に見えたのではないかという気がします。「コンニャク情報論」などは、今では珍妙な説明に見えてしまいますが、まだ誰にも見通すことのできなかった時代の変化を、何とか直感的に描ききろうとする先覚者の努力を読み取ることができるように思います。

  • 今から半世紀近く前に、今日の高度情報化社会の到来を予言した筆者の慧眼に、ただただ敬服。

  • 「情報」を一つの産業と捉えた情報産業
    論を始めとして補論・再論そして論文についての批評等をまとめた項まであります。 皆さん書かれておられることですが2014年に読んでも遜色なく、とても興味深い内容でした。

  • 2014 1/2読了。Amazonで購入。
    いろいろまとめ買いしているうちにAmazonからリコメンドされ、おうこれは読んでみねば・・・と思い手にとって見た。
    梅棹忠夫先生が1960年代に出した先見性のかたまりみたいな論文で唱えていた「情報産業論」について、関連する複数の論考をまとめた本。この本自体は1980年代末出版。
    「情報産業論」の主題が各論で繰り返されるので、圧縮すればだいぶ情報量が減りそうな気もする反面、どこが肝なのかはよくわかった。

  • 1963年に「物質とエネルギーの産業化から、感覚情報と精神の産業化へ」と説いた先見性ありすぎの書。農業革命によって胃袋が満たされ、工業化によって過酷な肉体労働から解放された。人類は、残る脳と精神を開放する最後の段階に入った。可能性は、無限だ。

  • 情報産業について歴史的な視点から、新しい時代の予見を探ることができて興味深かった。

  • 豪快な予言。

  • 情報論とはなんとも大雑把な書名であるが、読んで納得、これは情報論としか言えない。
    「コンニャク情報論の立場にたてば、ノイズも情報の一種であり、排除するわけにはいかない。ノイズさえも感覚器官、脳神経系を興奮させるのである。」という一節が、自分自身の気づけば小一時間Facebookで時間を浪費する毎日の端的な説明になっている気がした。それはノイズにしかすぎない。しかしノイズも情報であり、我々はそれに刺激されてしまう。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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