サーカス団長の娘

  • NHK出版
3.38
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140054758

感想・レビュー・書評

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  •  ストーリーテラーの天才・ペッテルが、自分の考えたお話を作家たちに売りつける……といったおはなし。ゴーストライターというのとは、ちょっと違う。警句を除いて、彼が売るのは基本的にプロットで、完成は作家にまかせる。
     とても贅沢な小説だった。入れ子になっている梗概のひとつひとつをとっても、面白い小説が書けそうなくらいだ。職業作家がこの小説を上梓したということ自体、ほとんど驚くべきことのように思える。

     ペッテルの行為はべつに犯罪ではない。しかし、彼はあまりにも他人を侮っていたと思う。自分だけが特別だと思い込んでいた。こないだ読んだ、伊坂幸太郎『マリアビートル』の王子や、貴志祐介『悪の教典』の蓮実のように、他人の心を弄んでいる――彼の創造した物語の一部であるかのように。
     それに思い至らなかったから、ペッテルは、みずからの糸に絡めとられてしまう……。
     結末のできすぎ感は否めなかったが、それでもじゅうぶん価値がある作品だと思えた。

     ペッテルは非常にいけすかないヤツだと思うのだが、彼の発する言葉にははっとさせられる。
     これを、作家は、また作家志望の人はどう読むのだろう? と興味を持った。

    原題:Sirkusdirektørens datter

  • 児童書じゃぁ無かった!!

    物語が無限に沸いてくるテッペルという人間の人生。
    筋立てとしてはテッペルが自伝をかいているという雰囲気で
    進んでいきます。

    タイトルの「サーカス団長の娘」は作中作として
    登場し、あとあとまで複線として張られています。
    むしろ、複線ではなくそのままの意味でというべきか・・・。
    読者としてはこの物語がどのように進むかは
    容易に想像できてしまうのが残念でした。

  •  作品そのものに対して主人公の発言が皮肉すぎた。読んでる間リアルタイムで読んでる作品をバカにされている心地がしていやな気分だった。
     どうせここまでバカにするならもっと奇抜な作品にして欲しかったなーという印象。物語の因果が整いすぎていたと思う。心理学をよく取り入れているな、と感じたけど、「ベストセラーの原案をばんばん出す主人公」がたどる人生としては普通すぎる気がする。
     なんか散々に言ったけど、一言にまとめると「好みじゃない」ってことなのだわ。因果が整いすぎてるって思うくらい話はよく練られてた。

  • 物語のネタを作家に売るビジネスをする男性の話。

    主人公のペッテルは、並外れて豊かな想像力を持つ一方、本質的に他人に興味がない。思いついたプロットを実際に小説にできないのは、それを読者に届ける営みに必要な情熱が欠けているからだろう。愛する女性に対しても、その人自身についての想像力を働かせなかったために、終盤の悲劇が起きた。
    いくつかの物語が入れ子的に挿入されているが、フォントで地の文と区別されている。キーになる「サーカス団長の娘」の物語は微妙なバージョン違いで何度か語られるが、マリーアの娘に話してやった箇所(p133)では地の文と同じフォントのままで、この話が特別な意味を持つことが暗示されている。

  • 花が好きな本

  • タイトルと表紙のイメージと異なる。こういう雰囲気で本を作りたいという気持ちはわからんでもないが、騙された。騙されたというのは、サーカスに属する少女が主人公と思って手に取ったのに、色々話のネタを思い付くオッサンの、その小咄の1つであって、自身の悲しい生まれに根深く閉ざした物語という、回りくどかった書き方に騙されたのよ。作家は著名な人みたいだが、自分がそれを読み取る土壌を持っていなせいで「やられたぜ」みたいな読後感が残るが、こういった、他の作品で絶対に味わうことのない感覚を体験できるのも、大きな収穫ではある。

  • ヨースタイン・ゴルデル作品 翻訳本を
    少しずつ読み漁っている
    その読み終わった作品の中でも
    ちょっと評価のつけかたが分からない
    何を基準に星★の数を付けたらいいのか
    思い悩んでしまう作品でした
    なぜ、この本のタイトルが『サーカス団長の娘』
    になっているのか
    もっと違うタイトルでも良かったのでは?
    と思ってしまう
    あくまでも考え出した物語の中の登場人物であり
    全てが架空の物語で
    ある瞬間に考え出されたイメージだから
    この本を読了した後で
    タイトルと合っていない感じがしている
    ではどういうタイトルが好ましかったのか
    私個人の意見としては
    『物語のネタ、有ります!』
    なんてのは、どうかしら。
    本を書くためのネタがあれば
    見てみたいと思う人がいるのではないか
    哲学的な内容か
    そうではない普通の恋愛小説みたいな内容かにかかわらず、人の頭の中のイメージを見てみたいと思っている
    人間はたくさんいるのではないでしょうか?
    だからネット社会でSNSのコミュニティーサイトが流行るのでしょう。
    自分の事より他人の秘密とか、感心事を
    知りたいという要求は
    誰でも、少しは持っているものだと思います。
    でも度が過ぎた行動は嫌われますが…
    まわりを騙し続ける人生も
    アウトになってしまいますよね(^-^)

  • 物語の神になりそこなった男の物語。原因は愛。
    入れ子式の小説が面白くもあり。放漫な男の人生が痛々しくもあり。
    オチにつながるキャラクタが登場した瞬間にネタバレしちゃうのが惜しいな。

  • ペッテルの溢れる才能と人を惹きつける力、隙のない経営力そして影のある存在感がたまらなく読んでいて楽しかったです。これを読んでから売れてる作家さん達ってペッテルからネタ買ったのかな~なんて想像してしまいます。読み進めてページが減って行くのが惜しいと感じる一冊でした。

  • 作品の内容を読み進むと、
    どれだけ崇高な作品が全体的に仕上がるのかと
    期待させるものがあるのだけれど、
    残念ながらそこまでではなくという展開にちょっと
    ガッカリですがストーリー展開と登場人物の
    心の崩壊が気になって読み進んでしまいました・・。

  • 物語を創造する力が強ければ強い程、創造物と現実との区別がつかなくなる感覚とは言わないまでも、偽りの自分という考えが理解できれば感じるものは多いと思いました。

    物語のオチは読み進めていけば察しがつくとは思いますが、物語のエンターテイメント性とかではなく、漂う雰囲気がとても好きでした。

  • 記憶に残る本の一冊になると思う。

    キーワードは「三歳」。

    何となく、最後は娘と再会するんだろうな、この女性が娘なんだろうな、とは思っていたけれど、娘は幸せな人生を送るものかなと思っていた。

    一番最後のペッテルの昔の記憶はありきたりながらもゆるやかに胸が締め付けられた。
    それまでの彼の人生を読んできたからかと思う。
    三歳の時迷子になったペッテル少年は、どこに辿り着くのか。元の場所に戻れるのか。最早もう遅いのか。

  •  子供の頃、風邪で学校を休んで横になっていた昼下がり。
     退屈ではあるが、何かをするわけにもいかず、ただただ天井を見つめていた。
     天井板のふしの模様が何かの生き物に見えてくる。動き出す。

     子供の頃はいろんなものが違って見えていた。
     様々な形に意味があるように見えたり、小さな虫の動きがクローズアップで見えたり。
     
     あの草陰の向こう。あの暗い穴の中。
     使われていない倉庫。資材置き場。
     大人になってしまうと、見過ごしてしまうあれこれが、意味や世界を持っていた。

     主人公が持っている稀有な才能がつむぎだす人生。
     そこに、主人公が物語が絡み合い、いっそう奇妙な雰囲気を出している。

     でもなあ、才能や設定と言う点では面白いが、その結末は飲み下すに苦い。

     「ソフィーの世界」「オレンジガール」と私の中では、かなりの期待の作家であるだけに、点数は低くならざるを得ない。

  • ソフィーの世界の作家の作品。 残念ながら本作品はそのSNOBなキャラクターと物言いにウンザリしながら読み続けた。サーカス団長の娘のエピソードが繰り返し出てきて最後に重要な役目をする訳だが、そもそもあのキャラならあそこまで動揺するか? チェスの例えもタイルの目も、出会いの振り返りの説明も、何もかもが頭でっかちで、ウザイ。力量のある作家なのは判るが、その筆力をひけらかす様な書きぶりが、主人公のキャラとダブって、楽しめなかった。そもそもソフィーの世界も、蒙昧な下々に哲学を啓蒙してやろうという意図の本で、この作家の読み手を見下した姿勢が見えてきて嫌味だ。

  • 途中までは、この三倍くらい緻密で組み立ても凝ってれば最高だな、と好ましく思っていた。オチが見えた瞬間に醒める。
    嫌いではないが、惜しい。
    散漫だと思う。そんなに判りやすくしてくれなくても大丈夫なのに。

  • ゴルデルさんはものすごく頭がいいと思う

  • 題と表紙が気になる。

  • 様々な物語やアイデアが次々と溢れてくる稀有の才能を持った主人公の物語。
    ゴルデル作の中では、普通、な印象。

  • 臆すること無く幾重の物語を紡ぎ、終いにそれに絡め捕られていく主人公。才能を少しだけ分けて欲しい、作家志望には堪らないお話。(笑)
    表紙絵も魅力的でお気に入りの本です。

  • なんか 難しい話だった(σ´∀`)σYo!!

  • 06/02/22/Wed 岡●書店にて。

  • 購入済、未読。

  • ヨースタイン・ゴルデルはまた、面白いことを考えついたなと思わせるのがこの小説だと思う。

    主人公は、ペッテルという人物だが、彼はストーリーが次から次へと浮かんできて困るという奇癖(天才?)があって、それらを書きとめ、ネタの枯渇した作家たちに売る商売をしていた。

    まさに、
    アレクサンドル・デュマと反対の状態。
    デュマは持ち込まれたネタをデュママジックですばらしい作品に仕上げていったが、
    ヨースタイン・ゴルデルは、ネタはあるのになぜか作家にならない主人公に、
    本のなかで、そのネタを喋らせ、それは多ジャンルの一端の短編小説の様相をみせる。

    主人公の人生に彼の描くネタが見えない蜘蛛の糸のようにやんわりと纏いつき、やがて結末でヨースタイン・ゴルデルの用意周到な罠に気づかされる。

    『ソフィーの世界』とはまた異質のファンタジー性要素はありつつも、計算しつくされたプロットと稀代のストーリー・テーラーの作者を堪能できる作品となっている。

  • なんか 難しい話だった(σ´∀`)σYo!!

  • とても奇妙な小説です。
    極上のエンターテイメント!

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