- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150306137
感想・レビュー・書評
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悲しい物語。全体に悲壮感が漂いながらも、そこには美しさがある。一途な恋に胸が痛んだ。
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大久保勝也
どんな男
ベンさんと重なる
そんな誠実な男ではなさそうだ
これは恋なのか
恋とは別次元の、別世界の、
話。 -
再読です。
著者が配偶者を亡くし、それを綴ったエッセイが話題になっていたころから著者のことがなんとなく心配で、でも、そんな辛いエッセイを読む気にはなれず、本棚に合った直木賞作品を再読することで折り合いをつけました。意味ないけどね。
著者のことを初めて知ったのはまさにこの小説で、当時はかなりインパクトがありました。
その後も著者の本は何冊か読みましたが、本書を超えるものはありません。
再読でも、軽井沢の風景描写が美しければ美しいほど不穏な気持ちに拍車がかかってゆくという読者の誘導は絶妙だと感じたし、70年代の学生闘争の象徴である浅間山荘事件の終結が奇しくも主人公の官能的な世界の終焉と同時にやってくるというウマさにも唸りました。
そしてなにより、思春期の少女のような主人公の無垢な心が、退廃的な夫婦に惹かれ囚われていく様は圧巻です。
だからこそこの崩壊の結末も哀しくはあるけれど納得感もありました。
そんな中、マルメロの樹が最後に残してくれたメッセージには胸が熱くなりました。
余韻が残る作品。
藤田宜永さん、ご冥福をお祈りいたします。 -
一言で言うならは、すさまじい本です。
これほど力のある作品と出会えることは、一生のうちにそうたくさんはないだろうと思うほどです。
作品に描かれることになるテーマもさることながら、最初から最後まで、ことごとく予想を裏切る展開が続き、特に後半は息をするのを忘れそうになります。
情景・心理描写の生々しさも、自分がその世界に飲み込まれたような感覚になります。
最初にどんな事件であったか、表面的な事実は語られている、いわゆる「サスペンス」でありながら、これほど最後の最後まで真相が分からず先へ進まずにいられない作品には出会ったことがありません。
直木賞受賞という事実が霞んで見えるほどのとてつもない傑作です。 -
設定が古めなので想像しにくいのが難点。
憧れの夫婦に自分も関わりを持っていたい、そう思うこともありそう。だが、関わりの程度というものがあるんじゃないか。他人との距離のとりかたは難しいやね。 -
直木賞受賞作。
連合赤軍が浅間山荘事件を起こした1972年、大学生の布美子は、助教授の信太郎と妻の雛子との優雅で奔放な魅力に心を奪われていた。
軽井沢を舞台に繰り広げられる愛憎劇。
なるほど、これが「恋」であり、タイトルの表すものなのかと、唸らされた。 -
直木賞だけあって文章力はあってそれなりに面白い。けど、どうしても退廃的な世界観、とってつけたようなノンフィクション作家への告白とラストの片瀬夫妻のシーンは共感できなかった。
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私はもう片瀬夫妻に憧れたりはしないけど、ふうちゃんが夫妻を自己同一化してしまう気持ちはわかるなあ‥。
それが破滅を迎えるとしたら、やはり誰かを殺さなくてはならず、殺すとしたら大久保なのだろう。
最後の「支えてくれた」「思い出を山のようにくれた」(だっけ?)という一文に、うるっとくる。
山田詠美が大久保を「いい!」と言ってたけど、私は無理だなあ‥。
とまれ、京極夏彦の言う母系集団であれば、異母きょうだいはきょうだいには非ず、さればこんな悲劇は起こらなかったのであーる。 -
内容
連合赤軍が浅間山荘事件を起こし、日本国中を震撼させた1972年冬。当時学生だった矢野布美子は、大学助教授の片瀬信太郎と妻の雛子の優雅で奔放な魅力に心奪われ、彼ら二人との倒錯した恋にのめりこんでいた。だが幸福な三角関係も崩壊する時が訪れ、嫉妬と激情の果てに恐るべき事件が!?香りたつ官能、美しき異端、乾いた虚無感。比類なき美と官能に彩られた小池文学の最高峰!ジャンルを越えて絶賛された直木賞受賞作。 -
自分に合うかと思ったが、面白いと思う。