- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200021
作品紹介・あらすじ
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理-非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
感想・レビュー・書評
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傑作で有名なのに、よく知らずに読み始めた
インパクトがある作品
衝撃のラストシーン、疑問を残したまま終わる
ちょっと鳥肌もの。。。(;ω;)
連続もののTVがいいところで終わり、「続きは来週ー、また観てねーっ」って言われているのと同じ感覚(昭和か?笑)
この作品は三部作の第一弾で、話は第二弾『ふたりの証拠』に続くらしい
第二次世界大戦中に、ハンガリーの田舎町のおばあちゃんの家に疎開して来た双子の兄弟の話
生き抜く為に双子は毎日色々な『練習』をする
来る日も来る日も遊ばない、働く、『練習』をする
双子が客観的事実だけを日記に淡々と書いているのがこの『悪童日記』
戦争中の話だから、とても暗いし残酷
でもその日記が読みやすくて、感情や情景がしっかりと伝わってくる
面白いことにこの作品は誰の名前も出てこない
双子は『ぼくら』、おばあちゃんは『おばあちゃん』、従姉妹は『従姉妹』という様に名前が出てこなかった
だから名前を覚えなくてよかった
さあ、第二弾の『ふたりの証拠』も読まないと!
続きがどうしても気になる、そんな作品
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アゴタ・クリストフの傑作。
『悪童日記』三部作の1巻を読了した。
まさに傑作の名にふさわしい内容だった。
「傑作」であるということは聞いていたのだが、実はあまり内容はよく知らなかった。
はっきり言ってハードである。
一言で言うならば
ハンガリー版『R18指定・火垂るの墓』
といえばイメージがしやすいだろか。
時代は第二次世界大戦中から大戦後にかけて。
場所は特定はされていないが、ハンガリーの片田舎の町が舞台である。
そこに無理やり疎開させられた十代の男の子の双子が主人公だ。
当時のハンガリーはナチスドイツの同盟国であったが、本書の内容を読むと同盟国というよりもほぼ属国という感じである。
彼ら体験するのは、あまりに過酷な日常だ。
人が簡単に死んでいく。
生きるためは、ありとあらゆることをしなければならない汚いことでも、酷いことであってもだ。
まさに戦争の暗部をこれでもかと見せつけられる。
見たくないものであっても。
最初にR18と書いたが、これこそが彼ら少年少女が実際に体験したことなのだ。
それをよくよく理解し、この本を体験しなければならないだろう。
多くの人に読んでもらいたい作品である。 -
戦時下で、おばあちゃんのもとに預けられた双子の「ぼくら」が、日々の事実だけを書き記した日記。純粋な子どもたちが、過酷な現実を生き延びるため、日々、勉強に勤しみ、肉体や精神の訓練も行う。淡々と語られる生々しく陰惨な表現と相まって、感情のないAIロボットのように変化していく双子の姿が恐ろしく感じる。また、地名や人名などの固有名詞はいっさいなく、童話のような世界観を帯びた不思議な物語である。ラストは、「えっ、どういうこと?」とつい声が出てしまった。三部作ということなので、続編もぜひ読んでみたい。
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戦時の重い話だが、淡々と書かれているので悲壮感が漂っていない。
双子のぼくたちに圧倒的魅力を感じるのは、生命力に満ちているからか。題に、悪童とあるが悪童とは思わなかった。人のせいに、周りのせいにしない、恐れず、賢く、逞しい。とにかく双子がかっこよく憧れた。
最後の双子の選択にはどんな想いがあるのか知りたい。三部作とのこと。続きを読もう。 -
とにかく内容が過激で衝撃的。けれど読み進めてしまう。第二次世界大戦時、双子の少年達が疎遠だった祖母の田舎に疎開し様々な困難と非情な出来事に出会う。子供とは思えない発想と強さで乗り越えながら生きていく様がすごい。続編があるらしいので読んでみたい。映画化もされているとのこと。観る機会があればこちらもぜひ観てみたい。
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初めて読む作家。
アゴタ・クリストフは1935年生まれ、2011年没のハンガリー出身の女性作家。1956年のハンガリー動乱の際にオーストリアに脱出し、スイスに定住、フランス語で著作を執筆している。
本書「悪童日記」は、1986年に刊行された彼女のデビュー作であり、フランス語で書かれたものである。この後に書かれる「ふたりの証拠」「第三の嘘」と共に、三部作を形成している。
この小説の中には、人名や国名や地名などの固有名詞がいっさい使われていないが、第二次大戦末期から終戦直後にかけてのハンガリーの、オーストリア国境にほど近い田舎町が舞台。主人公は、ここに疎開させられ、祖母に預けられた、双子の男の子。年齢は物語中に記載はないが、推定すれば10歳前後ではないかと思う。物語は、この双子の目を通して、双子が書く日記のように綴られる。
ハンガリーは、第二次大戦はほとんどドイツの属国として枢軸国側についている。戦争末期から終戦後は、ソ連軍の姿も物語に登場する。舞台になっているハンガリーの国境の田舎町に住んでいる地元の人たちは、基本的に非常に悲惨な暮らしを強いられている。ユダヤ人の話など、さらに悲惨な話も登場する。
そのような中、主人公の双子の男の子は、自ら定めた価値観やモラルに従い、周囲と一線を画しながら生き続ける。一般的な意味での正義感を持ち合わせている訳ではない彼らの行動は時にショッキングであるが、なぜか、それはこのような状況下では自然なことのように思える。
さて、物語は、おそらく「傑作」と呼んでも良いくらいのものだと思う。私も一気読みした。しかし、何が面白いのか、何が傑作なのかを説明するのは、難しい、というか、私の実力では無理だと思うので、それは最初から諦める。
とにかく、他に読んだことのないテイストを持つ小説である。 -
戦争の激化で疎開した双子の少年が、独特の生きる術によって生きぬいていく。感情が一切描かれず他者からの過酷な仕打ちも、気遣いも淡々と処理されていく。双子が不気味で、読んでいて楽しくないのに引き込まれてしまう。
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海外文学はあまり読まないのだが、お勧めされたので読んだ。まず第一に読みやすい。理由は主人公の双子による口語体で
また、少年の日記をそのまま読んでいるような、素直な文章だった。ただ一つ言えることは主人公の双子達に全く共感できないが突き放してみると非常に痛快な感覚を覚える。戦争、差別、貧困、暴力、死、これでもか、これでもかとヘイトの嵐。ただ現実をモチーフにされているのは明らかで過酷な日々に没入してしまう。黒手塚と言われる手塚治虫の闇の深い作品で免疫はある方だが、それでもエグい。言いようもない気持ち悪さと不気味さがそこにある。 -
まず邦題が完璧。
いかなる国にも、文化にも、因習にも決して迎合しない彼らだけの揺るぎない倫理‥‥。自分の哲学観を見直すきっかけになった1冊。