どちらでもいい

制作 : Agota Kristof  堀 茂樹 
  • 早川書房
3.29
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本棚登録 : 164
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152087331

作品紹介・あらすじ

夫が死に至るまでの、信じられないような顛末を語る妻の姿が滑稽な「斧」。廃駅にて、もはや来ることのない列車を待ち続ける老人の物語「北部行きの列車」。まだ見ぬ家族から、初めて手紙をもらった孤児の落胆を描く「郵便受け」。見知らぬ女と会う約束をした男が待ち合わせ場所で経験する悲劇「間違い電話」。さらには、まるで著者自身の無関心を表わすかのような表題作「どちらでもいい」など、アゴタ・クリストフが長年にわたって書きためた全25篇を収録。祖国を離れ、"敵語"で物語を紡ぐ著者の喪失と絶望が色濃く刻まれた異色の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • <老いて失われるものたち>

     アゴタ・クリストフのノートやメモから、習作を選びまとめた拾遺集がたまたま目に入ってきて、読まずにはいられなかった。

     これ読む直前まで、『夢・アフォリズム・詩』という、カフカの日記やノート等から、これはという言葉を選び出してまとめた拾遺集を読んでいたのだ……。縁というのは幸運とも受け取れるが、間が良いのか悪いのかと、何となく中途半端でヘンな顔をして笑ってしまうような、奇妙な現象でもある。

     作者としては、磨きぬいた刃物の言葉のみを人目にさらしたいのが本音ではなかろうか……。でも、素人から見ると、発表する気もなく書かれていた作家のノートというのが、滅法面白いのだ。
    『どちらでもいい』も未整理くさい匂いがする。めくる時にばつの悪さが漂いつつも、A・クリストフに関心のある人だと、やっぱり興味持っちゃうと思います。

     ハイレベルな短編から本当に書きつけ的な断片まで、色々入り混じったこのショートショート集では、作者が長らく長編小説を発表していない理由が、液状になって溶け出したのち、乾いてきている。人物の多くは生に疲れ、著者自身が感じているであろう、寄る年波を語る。
     職を失う、夫を失う、正気を失う、思い描いていた未来を、加齢によりさまざまなものを。失うということは、若い時分には焦りや恐れを生じさせる大事件だが、長く喪失し続けた者が陥るのは不感症のようだ。

     駅で待っているが列車が来ても来なくてもどちらでもいいし、そこにいる老人が生きていても違っていても、どちらでもいい? 引きずられるような重さを感じる。が、明るい性格の人が読めば、そこから軽妙さやユーモアを読み取るのだろう。軽くても重くても、どちらでもいいのだが。
     老いにむりに望みを持とうとしない人たちの疲れ方を描き切ったクリストフは、感性するどいかたで、気力さえ枯れなければ……。ただこのままでは、書くことに不可欠なはずの、その気力が保つのかという不安も感じる。

  • これでアゴタクリストフの小説は制覇。
    これ以上ないのかと思うと少し寂しい。

    あとがきにあるように、前作と重複する作品もチラホラ。
    箇所によっては全く同じなところもあったので
    構想中のもだったりしたのかな。

    喪失感虚無感は内容もそうだけど
    徹底された無駄のない文体からもにじみ出てくる感じ。

    その中の「先生方」がお気に入り。

    普段あまりしないけど
    この作家の作品はいずれ全部再読すると思う。

  • ぼーっと散歩するのが好きな人は 好きそう
    ぼーっと本を読むと 「えっ それがどうしたの? 何か起こった?」ってなるヴァージニアウルフよりはわかりやすい本。 ムムムどう言うこと?ええッとーって考えながら躓きながら前のページに戻りながら繰り返し読まないとなって本でした。
    [街路]に共感できた。

  • ゆめみたい

  • ごく短い散文のような短編集。
    どの短編の文体にしろ、シンプルで無機質、
    しかしその狭間には不穏な気まずさが感じられる。

  • アゴタ・クリストフさんの25篇の短編集です。
    短編とはいえ、1つ1つはとても短くシンプルで、ショートショートや詩のような雰囲気でした。
    その1つ1つから、著者が抱える闇の深さが感じられました。

  • 短編集。さらっと読めるが、後に何か暗いものが残る。

  • 読んでから10年以上経っても鮮烈な印象の残る「悪童日記」作者の短編集ということで、ざっくり斬りつけられる覚悟で読んだのだけど、かすり傷も負わなかった…。
    もちろん、衝撃だけが小説の力ではないけれど、読んで数日でほとんどの内容を思い出せなくなってしまったのは悲しい。
    タイトルがタイトルなので、そういう風でもいいのかも知れないけど。
    一編、「街路」は健気かつ少し不気味で、美しい短編映画を見たような充足感があった。好み。

  • アゴタクリストフの短編集。

    創作メモのような作品もある。

    アゴタクリストフは 心の中の思いと現実との齟齬にとても興味ある。
    そして普通の人が思う幸福とも無縁でありたいと
    いう態度が見え隠れする。

    幸福とは 決してステレオタイプのものではない
    と繰り返し 自分に言い聞かせ 挙げ句の果てに
    幸福など追究すらしていないという態度で何がわるいと
    言ってみせる。

    そういうことなのだろうか。 この作品集。

  • うろの中を覗き込むようなショートショート。
    斧の話がバランス的に一番読みやすかった。
    何も知らずに読み始めて、
    アイデアの書き付けみたいなテンポに首をひねって、
    編集者が習作の類を集めたものと聞いて腑に落ちた。
    そういうのはその人のファンになったら
    掘り出してでも読むのがいいかなーと思う。
    カバーのスケッチブックの形は習作集の感じを出してるのかな

    ところで本の話をしたこともない知人が
    この本をくれた意味がすごく分からない。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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