世界収集家

  • 早川書房
3.63
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本棚登録 : 144
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (696ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095794

作品紹介・あらすじ

インド、アラビア、東アフリカ……大英帝国の作家・冒険家リチャード・バートンの旅路は続く。重層的な語りから生まれる、めくるめく世界の姿。ブルガリア系ドイツ人作家による越境文学の傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 第15回アワヒニビブリオバトル「コレクション」で発表された本です。
    2016.07.05

  • 世界収集家 イリヤ・トロヤノフ著 物語に他者のまなざし織り込む|NIKKEI STYLE
    https://style.nikkei.com/article/DGXKZO95350150Z11C15A2MY6001/

    冒険者を駆り立てた欲求不満と好奇心 「世界収集家」著者 イリヤ・トロヤノフさん - SankeiBiz(サンケイビズ)2015/12/20
    https://www.sankeibiz.jp/smp/express/news/151220/exg1512201330002-s1.htm

    世界収集家 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000013056

  • ふむ

  • 読書っていうのは旅なんだよな。作家の力量でポイと未知の真っ白空間に放られ、読む側は、ここはどういう所で、どういう人達が生活していて、何が起こっているんですか?と探索してゆく。単純なことのように思えて力量がないために、やたら説明ばかりの小説もあるけど、久々に「シンプルでいて、とりとめのない異物」を手に取ることができ、歓びを感じる。この作家も民族的な抑圧であちこちせざるをえなかったみたいですが、そういう人は浮遊する足場のなさの恐怖、風が吹いてもけしてとばされまいという信念、そういった心理が表れていて惹かれる。

  • 文学

  •  作者がバートンの旅をなぞって得た諸々を「語り」というフィクションで私達の前に差し出す。
     彼の名前は「アラビアン・ナイト」の翻訳者というのが大方の人のイメージであろうが、この本の中には「アラビアン・ナイト」に直接関係することは殆ど出てこない。個人的には彼が「アラビアン・ナイト」を翻訳するに至った理由が書かれていて欲しかったので残念。
     

  • リチャード・フランシス・バートンを題材にした物語。バートンには
    肩書がとても多く(イギリスの探検家、人類学者、作家、言語学者、
    翻訳家、軍人、外交官)それだけでもエネルギッシュな人物だと推測できるが
    この本を読むと本当に常人の理解を超えるパワーを持ったバートンに圧倒された。

    物語自体は三部構成、インド・アラビア・東アフリカからなり第一部のインドが
    およそ半分を占める。長いけどインド部分が一番読み進めやすい。読みづらかったのは
    アラビア。イスラムに対する知識がないので十分には理解できず。アラビアは冒険譚色が強かった。

    映画にできれば面白そうですがスケールが大きすぎて今の映画業界では無理でしょうか…。

  • リチャード・バートンは以前から気になっていた.千夜一夜物語やカーマ・スートラを翻訳し,ナイル川の源流を求めて探検し,アラブ人に化けてメッカに巡礼したという,何だか分からないがすごい人物である.
    そのバートンを主人公にして,一応史実は踏まえて書かれたフィクション,といったところか.とはいえ,バートンの視点から書かれた旅行記ではなく,また,スリリングな体験を追った冒険ものでも無い.従者,現地のカリフたち,探検のガイドといった第三者の口から語られるパートが大部分で,色々な視点から明かりをあてて,間接的にその姿を浮かび上がらせる,ところがバートンが上記のように一筋縄ではいかない複雑で捕らえどころのない人物であるために,なかなか不思議な味わいだ.好き嫌いは分かれると思う.

  • 5/3 読了。
    英国領インド、アラビア、東アフリカを旅した十九世紀のイギリスの探検家リチャード・F・バートン。浅黒く欧米人離れした容姿と優れた言語センスを駆使して旅先の人びとのなかに溶け込み、土地の文化や宗教を尊重するため上層部に反抗しながら、結果として帝国主義的な思考から抜け出せなかった、まさに十九世紀という時代の矛盾そのものであるようなバートンという複雑かつ魅力的な人物の姿を、重層的な語りによって浮かび上がらせる。

    浅学のため、バートンのことは「千夜一夜物語」の英訳者のひとりとしてしか認識していなかったので、こんなにもアグレッシブな旅行家だったことを知っただけでもびっくり。インドでヒンドゥーとイスラムの文化を吸収したのちスパイ活動に励み、アラビアではインド人に仮装しイスラム教徒以外に閉ざされていたメッカに潜入、東アフリカではナイルの水源を探して道なき砂漠の旅に出るバートンの強靭な精神力には、読んでいて圧倒されるものがある。しかし、本書はいわゆる歴史小説然とした情報からなる小説ではない。むしろ全編通して正確な年代表記がされた箇所はほとんどなく、クロノロジカルで教科書的な歴史からは程遠い。三人称で書かれたバートン視点のパートは、ハードボイルド小説のような乾いた文体とぼやきからなり、大人物らしい数々の「偉業」は、現地の人びとの「語り」によって相対化されていく。
    そう、これが本書の特徴的な語り口なのだが、西洋の小説然とした文体で書かれたバートンのパートと、現地の人びとが後からバートンとその旅を「語る」パートが交互に配置されているのだ。そして、あくまでバートンの内情吐露という一視点しか持たない前者に比べ、語る人に合いの手や疑問を挟む人、物語を先へ促したと思いきや前に話を蒸し返したりする後者の「語り」の豊かさが強調されている。非クロノロジカルで脱線しがちだが、語られた言葉がその場で即座に相対化されていく「語り」の場の呼吸。これはそのまま近代ヨーロッパの個人主義とインド=アラビア=アフリカの集団意識の対比にもなっているだけでなく、本書では全く触れられないバートンの「偉業」のうち最も有名なものである「千夜一夜物語」がどのように成立し、エキゾチックなものとして西洋人に受容されたかの説明にもなっているのだ。
    帝国主義、植民主義、オリエンタリズム、人種差別、宗教問題、奴隷制度といった西と東、北と南に跨る問題だけでなく、同民族間の性差別にまでも目を配らせながら、この上なくワクワクする楽しい冒険小説としてちゃんと成立しているのが何より素晴らしい。また、教科書のような歴史主義的視座でただひとつの「正解」としてのバートン像を作り上げるのではなく、矛盾の多いバートンという人物の矛盾ごとそのまま、重層的な構成を駆使して描いているのが本書の特色であろう。バートンは決して竹を割ったような気持ちの良い人物ではないが、本書を通して彼の長い冒険の旅に三度付き合い、「我々は探し続けるだろう、もちろん、だが決して見つけることはない」という言葉に辿り着くとき、胸がすっとすくような爽やかさが訪れる。

  • 旅行に持っていきたい本。

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