サブリナ

  • 早川書房
3.50
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本棚登録 : 424
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098832

感想・レビュー・書評

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  • 以前から気になっていたがテレビ番組「王様のブランチ」で村田沙耶香さんが絶賛しているのを見て購入。現代ネット社会の問題点を炙り出したグラフィックノベル(漫画と小説が融合したような構成)。一人の女性が失踪した後で、女性の衝撃映像を映したテープが新聞社に送られてくる、その後映像はネットに流れ、失踪女性の関係者の間で噂・憶測・陰謀論が交錯する。ネット社会の闇(掲示板・メールのメッセージ)がリアルに表現されていて、読んでいくうちにゾクゾクしてくる。登場人物が無表情なのもよりリアル感を増長してよい。

  • グラフィックノベルとして初めてブッカー賞にノミネートされた作品。
     この見た目からは全く想像つかない後味で読み終えてブルっとした。表紙に描かれたサブリナが何者かに殺されてしまったことで起こる周囲の変化を描いたミステリーサスペンス。事件の謎解きはほとんどないのでミステリー要素は限りなく少ない。むしろ事件後に待っている地獄、ある種の人災にフォーカスしているので心が結構エグられる。噂で人が疲弊していくのを描く場合、今の時代なら当然ネット(とくにSNS)による悪影響を描くと思うけど、ラジオ/TVを筆頭にそれだけに限らない。つまりツールに限らず人間には他人に対して暴力性を発揮する習性があるのだと言わんばかりだった。被害者の人権をガンガンに踏みにじっていくのは万国共通なんだなと思った。あとはトランプ以降によく言われるようになったpost-truthが克明に刻まれている。客観的事実よりも主観的事実を優先してしまい、それを一人でやっていればまだいいんだけど伝播していくのがタチ悪い。誰かの主観的事実で気持ちよくなっているときに地獄のような辛い気持ちになっていることに気をつけたい。
     ルックの観点で言えば海外の漫画なので左綴じ左開きで日本のように抑揚のあるコマ割りではなく大小あれど正方形のコマが淡々と続いていく。顔の表情もほとんどないので人物含めて風景が展開する中でメインは会話劇で物語が作られていて、ときたまメールとかネットの文言がこまにそのままドンと載っていたり、暗闇では吹き出しまで暗くなったり。従来の漫画を超えるギミックが用意されていてオモシロい。この漫画が独特なのはセリフのないコマに尽きると思う。部屋にいるときの孤独感であったり、登場人物それぞれの不穏さが滲み出ている。とくに僕が怖かったのはコナー。すべてが繋がっていることを予感させる終盤の振る舞いがもう…しかもそれについて明確なオチを用意していないのだから余計に読み終わったあと考えてしまう。ところでサブリナは今どこにいる?

  • 小説風の漫画。コマ割りが日本の漫画と違うので、慣れないうちは読みにくい。また、キャラの書き分けができていないというのか、わざとそうしているのか、表情に乏しく、日本の漫画のように、画を見ればわかるという感じではない。
    ストーリーも、サブリナが殺された謎が明らかになるというような話ではなく、世間の冷たさというか、ネットの怖さみたいな話で、読み終えた後も消化不良感が残る。
    絶賛するメディアもあるが、そうかなぁというのが、正直な感じ。

  • 映画を見終わった時のような感想。思い詰めて、どこか別のチャンネルに接続しまうような危うさ。

  • マンガ、ではなくグラフィックノベルというらしい。確かに「小説をマンガ化」だったら、小説を読むよりわかりやすくなるのが普通だが、これは、そういうマンガ的なわかりやすさを徹底的に拒否している。
    まずキャラクターの描き分けも積極的にはしないし(だから慣れるまでは描かれているのがが誰だか分からない。特にカルヴィンが勤める空軍基地のメンバーを見分けるのに苦労する)、表情というマンガでは極めて大事なところも省略。顔立ちは皆同じ。ラジオの放送内容やメールの文章などが延々と文字だけ続くコマもあるし、努力しないと読めないマンガというのはめずらしい。これは、小説で書いた方が余程わかりやすかったのではないかと思われる。
    しかし、というかだからこそこういう風に描いたのだろうと思う。
    サブリナという若い女性が失踪する。恋人のテディは生きる気力をなくし、見かねた友人のカルヴィンは、自宅の空いている子ども部屋に彼を住まわせ、世話をする。カルヴィンは妻子と離れて暮らしているが、仕事を辞めて妻子とまた一緒に暮らしたいと思っている。
    しばらくするとサブリナが惨殺されたシーンを撮影した映像があちこちに届く。犯人はヤンシーという男で、殺したあと自殺している。
    サブリナの家族、テディ、カルヴィンはソーシャルメディアの格好の餌食となり、私生活を侵されていく。
    刺激的な展開にもかかわらず、殺されるシーンが描かれたりはしない。恐ろしいのは殺されることだけでばなく、メディアに晒されることで、家族や精神、仕事といった、普通の生活を送るために必要なものが、徐々に崩壊していくこと。
    サブリナ殺しに関することが連日検索ワードのトップに来る。カルヴィンに執拗なメールが届く。陰謀説、ヤラセ、様々な憶測が事実のように書かれてネットを賑わす。
    匿名の誰かのちょっとした気晴らしの噂話が、ネットに上がった途端、邪悪な力を持って個人に襲い掛かる。
    これをリアルな表情のある絵で描いたら、却って怖くなかっただろう。表情の乏しい陰影のない絵柄だからこそ、ひたひたとうすら寒い恐ろしさが湧いてくる。ネットでデマをまことしやかに語る者も、それによって追い詰められる者も、人間としては変わらない。
    テディが陰謀論を語るラジオ番組を延々と聴いていることでも、それは明らかだ。
    ろくでもない野生動物は街中にいる、と言っていたサブリナの妹が、姉と行くはずだった自転車旅行に一人で行くラストシーンは、それでも、ほんの少しだけ救いが感じられる。

  • 絵やコマが読みとれず、けっきょく人のレビューを見てそういうことか、と納得した感じ。情けなや。キャラが非常に見分けにくいのはわざとなのかな。たぶんそうなんだろうな。
    不穏な空気や閉塞感はたしかに伝わってきたけど。

  • 衝撃の傑作、とのことで読んでみたけど、さっぱり分からなかった!(T . T)

  • 淡々とした描写

    それが怖い

  • グラフィックノベルとしては初めてブッカー賞にノミネートされたという話題の本。
    平凡な暮らしを送っていた女性 サブリナ が突然行方不明になる。
    彼女の恋人テディはそれがきっかけで引きこもりのような鬱状態になり、幼なじみのカルヴィンの家に身を寄せる。
    やがて、サブリナが殺されるところが撮影されたビデオテープが複数のメディア等に送られて失踪事件は急転直下誘拐殺人事件となり、犯人はサブリナの家の近くに住む面識もない青年で、彼も自殺して発見される。
    ビデオテープはネットに流出してしまい、それをみて根も葉もない解釈、荒唐無稽な陰謀説を唱える者まで現れはじめる。


    恋人の死に直面し、それを受け止めきれないテディはその陰謀説を唱えるラジオ放送に没頭する。
    テディの面倒を見ていたカルヴィンは軍に勤め、妻子とは別居中。ネットの陰謀論者は彼のところにまで事件の真相を語るように迫るメールが連日山の様に送られてきて、心の均衡を乱され始める。
    サブリナの妹のサンドラは被害者の親族という立場で受けた周りからの攻撃に疲れ、セラピーを受け始める。





    少し読み方を間違えてしまったのは、その事件の真相が明かされるストーリーだと誤解してしまったこと。これはそういう物語ではない。
    むしろ、淡々と過ぎていく時間の中で、事実は変わらない。
    サブリナは偶然近くに住んでいた異常者によって殺されたのであり、それ以上でも、以下でもない。
    これはそれをネタにして自らの妄想を飾ろうとする、そして次の事件が起きれば、サブリナのことも、その遺族のことも忘れてしまう無責任なネットのフェイクニュースや陰謀論者、そしてそれを無意識に支えている一般人(カルヴィンはそうなりかけて自己嫌悪する)を淡々と描く。
    そこに急展開も、「隠れた真相」もない。あるがままが真相なのだ、という話だ。
    それ故に、一応の収束(テディは職を見つけ、カルヴィンは妻子と別れて軍の仕事を続けることを決め、サンドラは姉と約束していた旅行に出かける)を迎えたところにも大きな起伏はなく、物語は終わる。いや、そういう日常が続くのだとして、話は断ち切られる。
    その起伏のなさというリアルが、読み終えた読者に響くのだろう。少なくとも、閉じたページの中で、まだキャラクターたちが、亡くしたサンドラへの思いを抱えながら、昨日と同じ1日を迎えているに違いないと思わせてくれる。

  • ずっと気になってて、思いきって図書館で借りてみた。
    コミックなんだけど、次に何が起こるのだろうとドキドキしながら読んだ。
    心理的にくるかも。誰も信じられなくなるかも。
    今の時代を表してるのかな。
    コミックだけど深く難しい内容でした。

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