マルガリータ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163295107

作品紹介・あらすじ

戦国末、ローマに派遣された天正遣欧少年使節。八年後に帰国した彼らを待っていたのは「禁教」だった。四人の内、ある者は道半ばで倒れ、国外に追放され、拷問の中で殉教する。だが、千々石ミゲルだけは信仰を捨てた。切支丹の憎悪を一身に受けながら、彼は何のために生きようとしたのか?ミゲルの苦悩の生涯を、妻「珠」の目から描く傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 戦国時代にキリシタン大名がローマに送った少年使節の日本に戻ってからの、時代に翻弄される姿を描いてある。
    四人のうちただ一人、棄教した、ミゲルの一生を、主人公、珠の視点から描いてある。

    戦国から徳川の世になるまで、キリスト教がどのように権力者に捉えられたかにより、翻弄されるキリシタンたち。
    政治的な思惑。純粋な信仰心。

    愛する人を一生おいかける珠のけなげさがもの悲しい。

    少年使節だけでなく、マリナ伊奈姫について初めて知った。戦国時代、武家の女性の地位は意外と高く政治的な力を持っていたとは知っていたけが・・・・。戦国時代のキリシタンの女性といえば、細川ガラシャが有名だけれど、たくましく強く生きた、こうした女性もいたのだということに考えさせられた。

    有名な浅井三姉妹なども好きだけれど、マリナ伊奈姫のことももっと知りたいと思った。

    この本を読んでよかった。

  • この話がどこまで事実なのかは分かりませんが、この時代、日本でもこのようなことがあったのかと知ることが出来ました。前半はひたすら史実を追うので読むのは大変かもしれませんが、歴史の勉強をするよりも、この一冊を読めば分かることが沢山あると思います。後半からの展開がよかった。珠とじゅりあんのやり取りのあとの、結もよかったです。今の時代は珠のような人が多く、皆それぞれに、尊いですね。

  • 途中飽きる。最後まで読めば、まあまあ。

  • 千々石ミゲル清左衛門の話。
    ミゲル、マルチノ、マンショ、ジュリアンは南蛮を学ぶために少年の身でありながらローマへとむかった。帰ってきた4人にはそれぞれ使命というものが待ち構えていたが、一番苦しかったのが、このミゲルであろう。
    4人とも、南蛮人がのぞむ殉教などこの国のものには1人も出させぬという誓いを立て、それぞれの使命を全うする。

  • 天正遣欧少年使節団の4人のうち、唯一、信仰を捨てた千々石ミゲルの生涯の苦悩を妻・珠の視線から描いたもの。

  • ”キリスト教は殉教するもの”、と信じていた。ローマ帝国の迫害や江戸初期の禁教令。
    ある意味、殉教に対峙するキリスト教徒の強靭さ・信仰心に驚愕していた気がする。(クオ・ワディス!ではないけど)しかし、…。

    天正遣欧少年使節の千々石ミゲルたちの帰国後の禁教令下の殉教とミゲルの妻・珠の物語。

    キリスト教の迫害に関しては、その危険に身を晒し続けていた伝道士たちは自分たちが殉教することになることを知っていと、という。その状況に、普通の教徒を巻き添えにしたという。それは、キリスト教の布教として、正しい道だったのでしょうか? はじめて疑問を持ってしまった。

    一方、珠の方は、「ミゲルが愛したのは、伊奈姫?それとも、珠?」と悩む。
    順番を付けるわけではないし、比べられるものでもないけど、天主様、使節団の3人、伊那姫そして、珠。最後までミゲルの本心に近づけなかったと感じる珠の、一途な思い・絶望感に涙が止まらない。

    「マルタとマリア」の話が出てきますが、聖書では、マルタは窘められてはいないハズ。マルタもマリアも、各自が必要なことをして、イエス様にすべてを受け入れていただいた、という話。だから、珠もすべてを受け入れられていたはずだと、思えてしかたがない。

  • 2019/08/29
    宗教って、神様ってそんなに絶対のものなのか?
    そんなに対立するものなのか。
    実際、イスラムとユダヤの対立は未だにある。
    歴史の勉強で知識はあるけど、珠やミゲルの個人を知ると、閉塞感にやりきれなくなる。
    四人の決心、結束が心を打つ。
    四人の作戦も、幕府の作戦も思いもよらないものだった。
    宗教の自由がありがたいと、思う

  • 天正遣欧少年使節の中で唯一棄教した千々石ミゲルの話。

    ちょうど、映画『沈黙』を見た直後だったので、とて興味深く手に取った次第。

    個人的には最後の最後まで秘密が明かされないので、ずーっとイライラしながら読んだが、これが真実であって欲しいと願う。

  • 天正遣欧少年使節の一員として13歳の時にローマへと渡り、修道士となった千々石みげる。
    天主を信じながらも故あって棄教し、切支丹弾圧の嵐が吹き荒れる日本で壮絶な人生を送った男の姿を、みげると、みげるを見守り続けた珠のふたりの視点で描いた一冊だ。
    最近、切支丹弾圧やこの時代について描かれた小説をいくつか読んでいることもあってか強く気持ちが引き込まれ、みげるの生き様、それを理解できないままに彼の傍に居続けた珠の気持ちを思うと涙が出た。
    同じ著者の「遠い勝鬨」、遠藤周作の「沈黙」など、この時代の布教、弾圧についてはさまざまな視点があり、考え方があるのだと思う。
    南蛮人が邪であることも聖人であることもどちらも真実だったのだろうし、殉教についてだって怯え逃げ回り他者を裏切る者もいれば陶酔して身を投じた者もいたのかもしれない。日本の殉教が西洋の信心のためにあるという考え方も頷かされるし、けれどそれだけでは命を賭してこの時代に日本にやってきた宣教師たちの行動は説明できない。
    どれが正解かはわからないし、当時を生きていた人たちもわからなかったのだろうなと思う。
    この物語自体、多分にフィクションであるし、実際の歴史はどうであったかもわからないけれど、「殉教させないための信仰」というものは胸をうつ。

  • 村木嵐さんの歴史小説『マルガリータ』を読了。豊臣の時代から江戸時代にかけて基督教が禁教された時期の直前にスペンにまで学びに行った日本人4名。宣教師になり、日本人初の司祭を目指し切磋琢磨をしてついに帰国。だが待っていたのは想像以上に過酷な禁教の世での宣教師としての生活だった。その四人のなかで、ただ一人遺教したと言われミゲルという名を捨て清左衛門として行きながらも、心の中の主を信じつつ、仲間の3人を支え続けたと言われている主人公の半生を描いた素晴らしい小説だ。ここまで人の犠牲になって生きる事の出来た人は数少ないだろう。殉教を説いた外国人宣教師、殉教に疑問を持った日本人宣教師。同じ宗教に帰依しても大きく違う教えが存在しうる。宗教って不思議すぎる。

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著者プロフィール

一九六七年京都市生まれ。会社勤務等を経て、司馬遼太郎氏の夫人である福田みどり氏の個人秘書を十九年間務める。二〇一〇年『マルガリータ』で第十七回松本清張賞を受賞し、作家デビュー。

「2022年 『せきれいの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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