意味がなければスイングはない

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163676005

感想・レビュー・書評

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  • ゼルキンとルビンシュタインの話が魅力的。二人の音楽性の違いがエピソードをまじえて書かれている。私はどちらかというとゼルキン派。ルビンシュタインの天才性を表す武勇伝な面白いが。
    したがって今日のBGMはブラームスのピアノ協奏曲第2番
    それにしても村上春樹さんは音楽を文章に表すという難しい作業を独特の比喩を用いて巧みに行っている。彼もまた天才である。

  • 村上春樹さんの音楽評論。ジャズ、クラシックからロック、Jポップまで幅広い。直接的に音楽について批評するというよりも、アーティストの人生や社会背景との村上さんの私的な関わりを中心に描かれています。指揮者の小澤さんとの対談集でもそうでしたが、村上さんの音楽に対する知識は半端ではないし、何よりも音楽に向き合う姿勢が真剣そのもので、本職のアーティストも顔負けなのではないかと。
    音楽がBGM化して久しいけれど、かつて自宅のステレオのスピーカーの前で音楽に正面から向き合った経験のある我々の世代(40代以上?)には、特に響くエッセイだと思います。

  • 村上春樹は、何でも知ってるすごいダンカイのおじさんだ、とは、常々思っておりましたが、音楽に対する知識は半端じゃない!!

    国分寺で若い頃からジャズ喫茶をしていた彼が、ジャズに関して造詣が深いのはうなずけるのですが、クラシックから、ロック、フォーク、スガシカオに至るまで!!
    YouTubeが必須の一冊です。

    「日曜日の朝のフランシスプーランク」
    当然、私はyouTubeで「プーランク」と検索し、再生いたしました。
    日曜日の朝がこれまたぴったり。そうして、同性愛者だというプーランク。同性愛者を肯定したくなるすばらしい作品を作っています。
    このように、出てくるアーティストがどうしても好きになってしまう(マルサリスを除く)、音楽入門書としては最良の一冊です。

  • ・15歳からアルコール中毒、17歳からヘロイン中毒のスタン・ゲッツ。素面で過ごした日々はほとんどなし。ウディ・ハーマン楽団はバンドメンバーの半数がヘロイン中毒。ヘロインによる演奏中の眠気を抑えるためにも薬を服用と、めちゃくちゃである。薬物中毒のミュージシャンの闇の部分も生々しく伝わってきた。

  • 幅広いジャンルの曲を村上氏独自の文体で紹介してくれている
    どれも聴きたい気分にさせてくれる好著です

  • この本でなんといっても重要なことはスガシカオ。スガシカオと村上春樹がつながっている。(この本以前から知ってはいたけど。)
    それとウィントンマーサリスの項も興味深い。ある意味かなり厳しく書いてある。

  • スガシカオのことが書いてある、と知って読んでみた。
    読めばファンならニコニコ(*^^*)
    あの村上春樹が、どのようにスガシカオが良いのかを解説している。
    村上春樹によってスガシカオのファンである自分の感性が「保証」されたかのように錯覚する気持ち良さ!

    ウディ・ガスリーの人生についての記述もあり。
    私が初めてウディ・ガスリーの名前を知ったのは、専門学校の遺伝学の授業だった。ハンチントン舞踏病(現在はハンチントン病、と呼ぶ。)という、不随意運動、人格変化、認知障害などの症状を起こす遺伝性の神経変性疾患の患者であったと。
    ハンチントン舞踏病というなんだか禍々しい病名とともに記憶に残った。
    講師の先生は「僕らの世代にとっては有名なミュージシャンなんだけど・・・」と、もっと話を続けたそうだったけど、生徒たちの反応が薄いので、あまり詳しい話はしなかった。
    それきりウディ・ガスリーを聞いてみることもせずそのままになっていたけど、このエッセイをきっかけにYoutubeで探してみた。
    見つけてはみたものの、英語の歌詞がわからないし、残念だけど、今の私にとっては新しい世界が開くような出会いにはならなかった。
    講師の先生や、同時代の人が聞いたウディー・ガスリーはどんなふうに輝いていたんだろう。知りたくてわからないのがもどかしい。

    シューベルトやブルース・スプリングスティーンやビーチボーイズのことも書いてある。
    スタン・ゲッツも初めて知った。早速聞いてみよう。

  • シューベルトの「ピアノ・ソナタ」から、ジャズの巨星スタン・ゲッツの「闇の二年間」、ブルース・スプリングスティーン、Jポップのスガシカオまで、すべての音楽シーンから選りすぐった十一人の名曲がじっくりと、磨き抜かれた達意の文章で、しかもあふれるばかりの愛情をもって語り尽くされる。
    待望の村上春樹、本格的音楽エッセイ集!

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00028422

  • 音楽評論とエッセイの間くらいの作品だった。
    語られる対象になっている音楽を知らなくても文章として楽しむことができた。その事に驚いた。

    <blockquote>(前略)音楽として純粋に優れていればあとのことはどうでもよろしい、という人もいるかもしれないし、それはもちろん正論なのだが、僕にはーー小説家だからということもあるかもしれないけれどーー音楽を媒介にして、その周縁にある人々の生き方や感情をより密接に知りたいという思いがあるし、こういう本を読んで音楽を聴くと、何かひとつ得をしたような愉しい気持ちになれるのだ。そんな音楽の聴き方があってもいいだろう。<-blockquote>これはあるピアニストの伝記についての作者の言葉である。
    音楽を文章にする事に抵抗を感じていたという筆者がこの本を書くきっかけになった出来事の一つなのではないだろうか。

    書くのは大変だったろうと思う。
    そして読むのも大変だった。途中何度も寝てしまった。
    音楽を聴き込んでまた読もう。

  • 一人の人間がこれだけ多種多様な音楽に同じように造詣深く愛情を持って語れるのか?という疑問を持ちつつ読むうち、やはり章によって強弱があることを確認。ジャズが苦手なので春樹様が想いを熱く語ったそれらの章は残念ながら上の空で読み、恒常的に愛聴しているわけではなさそうなスプリングスティーン・ガスリー・ウィルソンについての章は逆に感動を覚えてしまった。それは多分資料を基に村上フィルターを通したいわゆるノンフィクション・ノベルのような仕上がりになっていたからじゃないかと思う。そしてやはり村上春樹の対象への距離のとり方はとても興味深い。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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