星月夜

著者 :
  • 文藝春秋
3.21
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本棚登録 : 273
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163810300

感想・レビュー・書評

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  • 読後感が良かった。
    読みやすく、ストーリーや登場人物のイメージもすんなり頭に入ってきた。
    また、登場人物が、どこでどのように繋がっていくのかわからず、ワクワクしながら読むことができた。
    先の震災の被災者を思わせる老人が登場するが、伊集院さんだから書けたのだと思う。

  • 二つの事件がいつ絡んでくるのか。と。気になってあっと言う間に読み終えてしまいました。人を探しに田舎から東京に出てくる人って実際多いんでしょうね・・・ というのを考えると切なくなってしまいます。

  • ≪ストーリー≫

    東京湾で2つの遺体がロープで繋がれた状態で発見された。
    一人目の被害者は、出雲に住む佐田木泰治という80歳過ぎの老人。
    二人目は岩手から上京していた佐藤可菜子という少女だった。
    警察も動き出したが、一向に2人の共通点が分からない。
    そんな時、可菜子がミッチーという名で働いていた風俗店の常連で鈴木淳一という男が、
    佐田木に会いに出雲まで行っていたことが判明する。
    鈴木をホシとして捜査を始めるが鈴木には揺るぎないアリバイがあった。
    鈴木は鍛冶職人だった佐田木に、銅鐸を作ってくれるように頼んだだけだと言った。
    佐田木の孫娘・由紀子曰く、長らく使っていなかった鍛冶小屋に使われている形跡があると言う。
    佐田木は銅鐸を作ったはずだ。ではそれは、どこに行ったのか。
    厳重警戒中の鈴木の元に、石丸という元刑事が現れる。
    石丸は過去に起こったある事件のホシに、この事件が関係があると言った。
    それは今から45年前――
    山口県にある高等専門学校に通う、男が2人と女が1人いた。
    男は乾康次郎と宗建侑、女は美智子と言った。ある夏、九州に上陸した台風の影響で土砂崩れが起こり、康次郎の肉親が死んだ。
    そのことで康次郎は親戚の西峰隆三という男に引き取られ、建侑と美智子と離れ離れになった。
    康次郎は美智子を愛していた。美智子もそれに応えていた。
    必ずまた迎えに来ると美智子に言い、康次郎は2人と別れた。
    西峰はひどい男で、康次郎や他の里子に手を出した。
    康次郎はある夜、火事が起きたのに乗じて、西峰を殺し金を奪って家を逃げ出した。
    康次郎が山口に戻ると、建侑と美智子が結婚していた。
    康次郎は建侑も同じように殺し、美智子と一緒になろうとした。
    それを知った美智子は、崖から身を投げ自殺を図った。
    康次郎は美智子が死んだものと思っていたが、実は美智子は生きていた。
    美智子は父親である佐田木泰治に引き取られ、建侑との子・由紀子を生んで自殺した。
    佐田木も刑事・石丸も、康次郎がこの2件のホシであることに気づきその行方を追っていた。
    康次郎は名前を筒見真也と変え、筒見商会という名で財を気づいていた。
    考古学の雑誌に載った筒見を見て、佐田木が気づいた。この男が乾康次郎だと。
    佐田木は筒見宛てに、「乾康次郎様」と書いて銅鐸を送り、連絡をよこした筒見に会いに行った。
    真実を知るためだった。
    筒見の別荘で話している時、どこからか「助けて!」という悲鳴が聞こえた。
    悲鳴の主は、佐藤可菜子だった。
    可菜子と風俗店で知り合った筒見は、美智子に少し似たところがある可菜子を別荘に監禁していたのだ。
    筒見は、悲鳴に気づいた佐田木と可菜子を殺してボートから海に投げ捨てた。
    筒見が主催する考古学賞を今年受賞したのが、江梨子という女性。由紀子の親友だった。
    江梨子に見せられた写真で、美智子に瓜二つの由紀子を見つけた筒見は、今度は美智子を自分の物にしようと企てた。
    しかし警察は、その前に銅鐸の行方と、可菜子が彼氏と取った写真から筒見にたどり着いたのだった。

    ≪感想≫

    警察が主体の本格的な推理小説かと思わせて、実はそうなってない。
    途中に時折挟まる、”乾康次郎の回想”(最初は何のことか分からない)がないとストーリーの全容が分からないし、警察内も特に主役となり得る人がいない。(鑑識や刑事など)

  • 初の伊集院静さん。

    登場人物たちに魅力を感じる事が出来ず、
    ただただ先を知りたくて頑張って読み進めた。

    でも静かな情熱を感じた。
    他の本も読んでみたい。

  • いわゆる社会派ミステリ、かな。意外な犯人とか驚愕のトリックとかいうものはいっさいありませんが。捜査する刑事たちや被害者の遺族などの物語はかなり読ませられます。
    特に被害者遺族の物語は痛切。事件の手がかりとなった被害者の言動も悲しくって。ラストは印象的でした。

  • なぎさホテルに続いて読んでみました。伊集院氏は海がすきなんですね。これから少し氏の小説を読もうかと思います。

  •  浅草境内の派出所に音信不通となっている孫娘のことで岩手から相談に訪れた老人。
    応対に当たる警視庁鑑識課・葛西、皆川。
     一方、島根県出雲市に住む滝坂由紀子の祖父・佐田木泰治が謎の失踪をする。
     出雲署の刑事と共に鍛冶職人だった祖父の仕事場を見てみると、
    何かを作った形跡があった。
     そうした最中、東京湾沿いの江東区若洲のゴルフコースでプレーしていた
    ゴルファーが波打ち際に浮かんでいた黒いビニール袋に包まれた若い女性の遺体を発見。
    続いて、高齢の男性の遺体も引き上げらる、それぞれ足首にロープが縛りつけられていた。
     所轄の東京湾岸署に特別捜査本部が設けられた。警視庁から畑江主任たちの
    班が出向く。地を這うような調べをする草刈、立石らの刑事。
     新宿歌舞伎町の風俗店、ゲームクリエイターの男、被害者の
    身体に付着していたコークス、黄金色にかがやく銅鐸など事件解決への
    糸口となる情報が徐々にあぶりだされる
     これと交錯するかのように、懲戒免職となった悪評高い元刑事・石丸が、
    過去に起こったある事件に拘り続け、一人の男を執拗に追っていく・・・。
    というミステリーもの。

     被害者の金髪の若い女性と老人との関係?怨恨なのか?一体犯人は誰なのか?
    最後まで予測不能だ。ど派手なトリックとかはないが、それぞれの
    キャラが人間くさい、重厚であり読み応え十分。ラスト、やるせなさに涙が、、、

  • 伊集院静が初めて推理小説を書いたということで話題になっている。やはり文章力、構成力はすごい。数々の登場人物の背景を語り、いろいろな場所でいろいろな人物が行動をし、「いったいどのようにこの話は展開していくのだろう」とぐいぐい引き込まれ、先を読みたくなる。モザイクのような話の数々が最後に一つのなって終焉に向かって進んでいく。とても面白い構成だ。多数の登場人物の背景、キャラクターにも気を配り、ストーリー自体にも重みがある。「推理」小説として読むと、犯人は途中からだいたい察しがつくが、謎解きに重きを置く小説ではなく、犯行を犯さざるをえなかった人間の性を描きたかったのであろう。久しぶりに面白い「推理小説」に出会えた。

  • 結構好きな作家の初ミステリ。

    鉈で枝葉を大胆に切り落としたような印象。プロット重視ということなんでしょう。

    ただミステリファンはその枝葉に面白さを見出すと思うのですが。

    ラストの余韻はいい。

  • おもしろかったよ
    ミステリーと思って読むとちょっと物足りないかも。
    でも、二人のおじいちゃんがすごくよくて
    孫を思う気持ちの優しさと寂しさが伝わったよ

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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