全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908441

作品紹介・あらすじ

◎なぜ日本テレビは勝ち続けるのか?◎「1994年‐2003年、2011年‐2017年、視聴率トップ。すべてはフジテレビを逆転した94年に始まった。」1994年、日本テレビがフジテレビを逆転した――。フジはそれまで12年間に渡り、年間視聴率三冠王者に君臨し続けてきた絶対王者だ。対する日本テレビは1980年代に入り、在京キー局の中で三位が定位置になり、ひどい時は最下位がすぐ背中に迫ることも。テレビ草創期に黄金時代を築いた日テレは苦汁をなめ続けていた。そんななか、30代を中心とした新世代の作り手たちが原動力となり「逆襲」が始まる。〝失敗〟を重ねてきたテレビ屋たちは、いかにして絶対王者を破ったのか。『投稿!特ホウ王国』『電波少年』『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』『THE夜もヒッパレ』『マジカル頭脳パワー!』『恋のから騒ぎ』など伝説的なバラエティ番組はいかに作り上げられたのか。当時のクリエイターたちの証言からその奮闘の軌跡を追い、今やテレビ界を支える日本テレビ「最強バラエティのDNA」に迫る。【目次】序章 日本テレビのいちばん長い日――『24時間テレビ』◎第1部今では信じ難いが80年代の日テレは長い低迷期に苦んでいた。視聴率争いは3位が定位置。12年間にわたり三冠王に輝くフジの背中は遥かに遠かった。だがついに反撃の狼煙が上がる。原動力は日テレの良い時代を知らない新しい世代。6年ぶりの新卒組や中途採用第一号がクイズ番組で次々と実験的な試みを始める。第1章 〝落ちこぼれ.たち――五味一男と「クイズプロジェクト」第2章 覚醒――『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』『マジカル頭脳パワー!!』第3章 緑色の血液――吉川圭三と『世界まる見え!テレビ特捜部』◎第2部新世代が築いた知的エンタメ路線。だが正攻法だけでは絶対王者フジには届かない。ミュージシャンの夢を諦めたテレビ屋と失格の烙印を押された落第ディレクター。はみ出し者たちが日テレに勢いをもたらす。無名だったダウンタウンの長尺漫才番組、そして「アポなし突撃」という伝説的企画が生まれるまで。第4章 異端の二人――土屋敏男と菅賢治第5章 無謀なミッション――『進め!電波少年』『ガキの使いやあらへんで!』◎第3部「お前らがやりたいこと明日から全部やれ」。30代のつくり手の背中を強く押したのは氏家齊一郎だ。読売新聞から来た社長の即断即決の姿勢なしに日テレの改革は有り得なかった。「何が何でも視聴率でトップをとれ」という氏家のもと、50代の黄金世代も発奮。テレビビジネスの常識を覆す編成が誕生する。第6章 黄金世代―― 佐藤孝吉と『追跡』第7章 敗者復活戦――氏家齊一郎と萩原敏雄◎第4部猛追を受けたフジテレビもむろん黙っていない。異例のごぼう抜き人事を敢行。若き編成トップのもと、「月9」ドラマ枠をつくり、90年代を代表するトレンディ路線を確立。また「日本の朝はこれでいいのか」と掲げ、絶対的な朝の番組『ズームイン!!朝!』に切り込んだ。宿敵から見た躍進する日テレの姿とは。第8章 フジテレビの危機――「月9」と『めざましテレビ』◎第5部若き世代、異端児、そして即断即決のリーダー。日テレ逆襲の準備は整った。50%の大改編が奏功し、年始からフジを追い立て年間王者は射程圏内。しかし10月、一気に形勢逆転を許す。それは皮肉にも日テレ「最大の武器」によるものだった――。『イッテQ!』『行列』など今につながる日テレのDNAに迫る。第9章 神がかった改編――『特ホウ王国』『恋のから騒ぎ』『夜もヒッパレ』『家なき子』第10章 0・01%の決戦

感想・レビュー・書評

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  • ここに書かれている時代を同じ業界で過ごしていたからということもあるが、読み物としてとても面白かった。自分は土屋さんサイドでこの同時代の日テレを体験してるので、その周辺の話を特に懐かしく思い出しながら面白く読んだ。土屋さんは会議前に番組の企画や構成の話とは別に、その週にあった色んなことを話してくれてたので、当時、上司から「刑務所の塀の上を歩いていいけど、向こう側には落ちるなと言われた」とか「数字獲ってるけど、問題を起こすお前を日向では抱いてやれない、って言われたよ」など自嘲気味に笑い話にしてたことを思い出した(思えば、今の演出家は会議前に番組とは直接関係のない話をするタイプは少なくなった。演出家が今どんな気持ちでいるかとかどんな映画や本を面白いと思ったのか、社会や人のことをどんな風に捉えているのか、などがその雑談から判って、実は大事な時間だと思ってたりもするが、ま、それが今の時代といえばそれも理解できるから、そうあるべきだとわざわざ言わないけど)。この本であらためて当時の裏話を知るとあの頃の日テレの環境って上層部の志の高さの賜物だったんだなぁ、とあらためて思う。エピローグに日テレを牽引した人たちの視聴率に対する考えがまとめられていて、いまの視聴率に100%置き換えられないと思いつつも共感する意見ばかり。今も思いはこうありたいが、「視聴率」が「視聴者がどれだけ番組に興味を惹かれテレビを観たかという結果」には変わりないものの、今の時代、視聴者の実態が大きく変わっている。昔は視聴者といえばイコール老若男女問わず国民のことだったが、今や視聴者といえばテレビを観るような人のタイプのことだ。その時代にあって数字を獲るってもう一段、難しさの階層が深くなってるから大変だけど、ま、がんばろう、自分なりに。

  • 日テレ快進撃の裏側を描いた本。今のテレビ業界にはない勢いが詰まっている。
    時代の違いを感じながらも、自分が本の登場人物のように情熱を持って仕事できてるか考え、恥ずかしくなった。
    時代を言い訳にしたくないと思う。

    以下、気になった部分の備忘録。

    ・日本テレビのディレクターは代々仲がいい。24時間テレビであつまり、作り方の共有と差別化ができる。

    ・細野邦彦いわく「ハイブローなことよりも人間誰しも関心があるローブローのことを、そのままストレートにみせるのではなく、綺麗にパッケージすることが大事」

    ・五味一男はクイズ番組を立ち上げるため、クイズの出題傾向や司会者、回答者、セットや番組構成、画面の写真を撮り視聴率と照らし合わせ、それらを書き込んだ7冊のノートを作った。→考える気が起こる、誤答が膨らむ、聞いた後になるほどと納得する、という三原則にいきつく。

    ・自分の好きなことなんてどーでもいい。大勢の人が興味をもつものにいかに焦点をあてるかが大事。個性的なものより誰にでも好かれるものを作る方が難しい。

    ・ありそうでなかったものを徹底的に考える。ありそう=人間の本能に根ざしたニーズがある、なかった=市場の隙間をついている

    ・視聴率を参考にするのはもちろん、1200人がどういう風に見てるかっていう映像を1200パターン頭でイメージしてプロファイリングする。

    ・飽きさせない、わかりやすさ、を徹底的に追求。
    マジカルバナナでは分かりにくい単語が出たらストップ。テロップには必ずイラストを添える。視聴率が下がれば躊躇せずそのクイズをやめて、新しいクイズに。100種類以上考えた。

    ・最近よく見るワイプは1番いい場面でいれているけど、あれは間違い。邪魔にならない、ダレてくるところで入れる。

    ・土屋敏男は、制作部にいくため、企画書を1年間で50本作った。それを3年続け、ようやく声がかかった。

    ・伊藤輝夫(テリー伊藤)にでてくる企画案を面白いか面白くないか瞬時に判断していた。
    「作家なんて会議前に1時間考える程度。俺は毎日8時間考えてる。すると作家が出してくる企画は自分が一度考えたことがあるもの。」

    ・土屋敏男は佐藤孝吉の試写の時には必ず駆けつけた。試写が開かれる情報をどこからか聞きつけていた。

    ・佐藤孝吉いわく、「なんかがある」の「なんか」は、日本の事だった。大家族もの、行列の出来る店、取材拒否の店など情報番組の定番となるヒット企画を次々と生み出した。

    ・日本テレビとフジテレビ両局、48時間分を見て、方眼用紙に一分ごとに何が放送され何を感じたか、どんなテロップが出ていたか、番組PRの方法などあらゆることを書かせた。

    ・自分達の番組枠内で自分達の番組をPRするのを辞めた。→ターゲットが散らばる。

    ・はじめてのおつかいは、1000本とって6本が採用になる。

    ・国民生活基礎調査で歯を磨く、トイレに行くなど3分ごとに行われてることが分かった。→ズームインは1つの項目を3分毎に作ろうと考えた。7時からの30分は学生、その後の30分はサラリーマン、その後は母親をターゲットにした。

    ・萩原敏雄は「刑務所の塀の上を歩くような番組を作れ」と言っていた。法に触れてはいけないが、塀の外の安住した日常のような番組ではだめ。

    ・五味一男いわく「僕の先生はサイレントマジョリティである視聴者。声をあげない視聴者は厳しい。見ないという判断をする。視聴者はなにも声をかけてくれないし、見ないで終わり」

  • 勝つためのビジネス戦略のレビューでもあり、青春小説のようでもあり、昭和平成文化史でもある。力作。

  • 奇しくも「平成」が終わる。まさに平成のテレビ史と言える本だ。
    確かに日テレは今も強い。
    視聴率三冠王以外にも、デジタル方面への攻めも他局と比較して積極的。
    とにかく新しい事象に対して飛びつくのが早く、迷いがない。
    そんな企業文化はいかにして生まれたのか?
    日テレにとって、1980年代は負けの時代だった。
    それを逆転させたのが1990年代。
    まさに時代は平成。
    「勝ちグセ」がついたと言えるだろうが、「えげつない勝ち方」をしてからの日テレは確かに強いのだ。
    ただこの本を読めば読むほど、「特別なことをやった」という事実がないことが分かる。
    当たり前のことを、当たり前に速やかに実行しただけ。
    現場で思っている「正しい」事を、上が認めてやらせただけなのだ。
    ただし「中途半端」でなく「徹底的に」やらせたのがポイントだ。
    「徹底的にやる」これは絶対にトップの覚悟がないと実現しない。
    今では普通になったが「またぎ編成」だって、当時前例がない事をやることは相当な抵抗があったハズだった。
    説得&調整する先は多岐に渡り、その中のどこか一箇所でもNGが出れば実現不可。
    そんな状況の中で「視聴率で勝ちたいのだ」「今のままでは負けなのだ」という強力な「現場の気持ち。トップの気持ち」が、すべてを打開して突き進んでいく。
    結局は、社員含めて現場スタッフも関係者全員の気持ちが「日テレを視聴率で勝たせたい」ということで一丸になれたことが勝利の要因。
    当たり前に聞こえるが、これがなかなかできないのだ。
    どこかで「自分の利益」とか「自部署の利益」とか「スポンサーの利益」とか「タレントの利益」とかを優先させたら達成は出来なかった。
    「視聴率を上げるのだ。そのためには、前例にない事も、覚悟を持ってやるのだ」
    全員が一つの目標に向かって徹底的に行動することは本当に難しい。
    しかしその先にしか勝利が無いとしたら?
    言い訳はいくらでも出来る。
    でもあえて言うとしたら「敗者に言う資格はない」なのだ。
    我々は本気で勝とうとしているのか?
    勝利へのこだわりを持つことの重要性を、今更ながらに説いている秀逸本だった。

  • 知らなかった

  • 冒頭の「苦手」が秀逸。
    「嫌い」や「ダサい」とかだと角が立つけど、「苦手」なら、まだ知らない部分にきちんと向き合うことで克服できそう、前向きだ。そういうシーンがあったら「苦手」って言おう。
    でも、やっぱり嘘はつけないようで、そこはかとなく違和感を匂わす書きっぷりも感じられましたよ。(実際どうかはわかりませんが)
    しかし、現在のテレビが凋落した原因は日テレが天下を取ったからなんじゃないかと思い始める。フジは軽佻浮薄ではあったものの、深奥には知性と教養があった、ような。日テレはマスな人間の欲望を最大公約数で叶えてくれるので、ある層の視聴者にとってはテレビは単なる娯楽に落ちぶれてしまった。だから、もっと単純に刺激的な娯楽に移行しちゃうんじゃないだろうか。

  • 面白かったのだけど、話があっち行ったりこっち行ったりしていた感が否めない。人物、出来事、番組、どれ的にも。週刊誌の連載ものを本にしているからこその宿命とは言え、せっかく本にするんだから、もう少し整理できなかったのかなと。ちょっと残念でした。

  • 1994年当時絶対王者と言われたフジテレビを視聴率で逆転した日本テレビの関係者の奮闘と番組づくりの裏側を書いた一冊。

    マジカル頭脳パワーやクイズ世界はSHOWbyショーバイなど人気番組を輩出し、テレビ業界でトップに立つことになる日本テレビの氏家社長以下プロデューサー陣の番組作りにかける情熱を感じることができました。
    今のテレビに普及しているワイプやアポなし、ひな壇などの原型ができたり、24時間テレビのマラソンなどもこの時期にできており、テレビ界を大きな変革をたくさん起こしてきていることも感じました。
    日曜7時の枠の改革や巨人戦に頼らない番組作りなど次々とそれまで常識とされてきたことを壊した施策とそれを決断したリーダー、期待に応えた製作陣の連携が生み出した結果だと感じました。

    テレビという大衆を代表するメディアにここまでの命を懸けた想いで番組が制作されていることと局同士の熾烈な争いが繰り広げられていることを知り、テレビに対する想いが変わる一冊でした。

  • 歴史、人、サラリーマン。

  • テレビが、最も輝いていた時代の息詰まる舞台裏。
    ワイプや雛壇など、今のテレビの「常識」が、ひょんなことから
    生まれてきたエピソードも興味深い。

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